動画じゃない執筆の為のYouTube

星咲 紗和(ほしざき さわ)

本編

私にとって、YouTubeはただの動画共有サイトというよりも、静かな実験の場になっています。多くのクリエイターが視覚や音を駆使して表現する中で、私はあえて「文字だけで伝える」ことを選びました。その形は音もなく、編集も極力排した、シンプルなもの。和歌を通して、自分の気持ちや日常の小さな感情を伝えています。それが、私にとっての「執筆のためのYouTube」の意味なのです。


YouTubeを通じて私が目指しているのは、華やかな表現や目立つことではありません。むしろ、誰にも気づかれなくても良いくらいの静かな発信です。執筆を主軸とする私の活動の延長線上に、この小さな発信の場があるだけです。YouTubeというプラットフォームを使うことで、世の中の多くの情報に流されるのではなく、自分の感情を淡々と和歌に込めて発信する。その発信が誰かの目に留まるかどうかは、あまり気にしていません。最も大切なのは、私自身がその行為を楽しんでいることです。


動画に音も編集もいらない理由


私が動画に音を付けない理由はシンプルです。音に敏感で、日常生活でも騒がしい環境が苦手だからです。世の中には、音や視覚の刺激に疲れを感じる人も少なくありません。そのため、YouTubeにおいても、自分が心地よい形を選ぶことにしました。視覚的な情報も最低限に抑え、ただ文字だけが浮かび上がるようにしています。編集を施して派手な演出を加えることもしていません。和歌を読むだけ、文字が静かに表示されるだけのシンプルな動画。それで十分です。


また、編集作業の複雑さも私には合いません。私は、簡潔で明快な表現や作業を好むタイプで、煩雑なプロセスや多くのステップを経ると、どうしても疲れを感じてしまいます。そういった理由からも、私にとっては動画編集は向いていないと判断しました。その結果、音も編集も省き、ただ和歌を伝えるだけの形式に落ち着いたのです。複雑さを排除し、シンプルで心地よい発信スタイルを実現できたことに満足しています。


「届かなくても良い」という価値


一般的なYouTubeの利用者や動画クリエイターは、視聴者に届くことや多くの人に観てもらうことを目指しているかもしれません。しかし、私の「動画じゃない執筆のためのYouTube」は、そうした大衆へのアプローチとは異なります。むしろ、誰にも届かなくても良いという気持ちで取り組んでいます。視聴者数やいいねの数に左右されるのではなく、自分が楽しんで和歌を書き、静かに発信すること。それ自体が価値ある行為だと考えています。


誰かに評価されることや認知されることを目的にしないことで、自分らしい表現ができる自由さを感じます。また、その自由さが執筆活動にも良い影響を与えています。誰かに見られるために書くのではなく、純粋に自分の思いを和歌に込めて発信する。このようなスタンスは、執筆の楽しさや表現の喜びを改めて感じさせてくれるのです。


和歌に託す静かな発信の意味


和歌は、短い文字数で深い感情を表現できる日本独自の詩の形式です。私が和歌を選んだのも、まさにそのコンパクトさと深さに魅力を感じたからです。長い文章で説明しなくても、わずか数行の和歌の中に、日常の小さな気づきや感情、そして時には人生の一瞬のひらめきを込めることができる。和歌のシンプルさは、私のYouTubeでの静かな発信スタイルにも合っています。


また、和歌は視覚的にも美しい表現です。漢字やひらがな、そして余白の使い方まで、ひとつひとつに工夫を凝らし、見る人の心に響くようにしています。音や動画編集に頼らなくても、和歌の持つ静かな力で、視覚だけで感情を伝えることができるのです。静かに流れる文字の中に、私の思いや気持ちが込められている。それを受け取ってくれる人がいれば、それも素敵なことですが、仮に誰にも届かなくても構わないのです。


小さな実験場としてのYouTube


私はYouTubeを、ひとつの実験場と捉えています。和歌を通して、私の感じたことや思いを静かに発信し続けることで、自分自身も新たな発見をしています。普段の執筆活動とは異なる視点から、自分の表現を見つめ直すことができ、そこからインスピレーションを得ることもあります。


YouTubeというプラットフォームは、もちろん動画コンテンツが主流であり、私のようなシンプルな文字だけの発信は少数派かもしれません。しかし、だからこそこの場で和歌を使った静かな発信を続けることに意味があると感じています。音や映像の派手な演出がなくても、自分の中にある小さな声を和歌で表現し、それを実験的に発信する。この試みが、今後の執筆にも新しい視点や深みをもたらしてくれることを期待しています。


楽しみが増えるということ


最終的に、この活動は私自身の楽しみの一環です。執筆活動がメインである以上、YouTubeの発信がメインになることはありませんし、そのつもりもありません。しかし、静かに楽しみながら自分の気持ちを和歌に託し、発信できる場があるということ。それだけで、新しい楽しみが増えたと感じています。


誰にも届かなくても良い、小さな発信の場。和歌を通じて自分と向き合い、言葉に表せなかった思いを形にすることで、自分にとっての心の豊かさが増しているのです。YouTubeはあくまで「動画じゃない執筆のための場所」として、私の創作の一部に位置付けられています。それもまた、発信のひとつの形だと思うのです。

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動画じゃない執筆の為のYouTube 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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