立場を追われた魔将の、人間臭い迷いと道筋
- ★★★ Excellent!!!
主人公のマナイアレストは、魔族社会では侮られやすい小さな角を持ちながら、その能力の高さで「魔将」に抜擢された。
それをよく思わない同僚からの冷遇、周りとの距離感。
主人公マナイアレストは淡々と職務をこなすが、いまいち職場に馴染めないでいた。
魔族社会でありながらも、これ以上ないほど人間臭い世界。
この物語は、主人公マナイアレストの「魔族から見た世界」を克明に描写しつつも、中間管理職のマナイアレストの悲哀が感じられる、唯一無二の読み味になっている。
マナイアレストは、取り立ててくれた魔王アルヴァルルに感謝を示しながらも、敵である勇者ラーヤーと共に行動しなければならない現状を憂う。
ラーヤーはラーヤーで掴みどころがなく、何を考えているのかわからない。
もうどうにでもなれという、半ば投げやりな気持ちになりつつ、最善を尽くそうとする。
状況は最悪で、頼れる仲間もおらず、ぼやきつつも、魔王の真意を探るために進んでいく。
マナイアレストは、強い情熱があるわけでもない、いまいち人望がない、なにがなんでもという根性も感じられない、特別チートな能力があるわけでもない、ただの「ちょっと有能な管理職」。
この物語は、その彼の魅力が存分に発揮されている。
彼のどこが好きか、一言では言い表せない。その複雑に折り重なった魅力が、彼の魅力であり、存在感だと思う。
読めばきっと好きになる。
ぜひ読んでください。