Deep underground

雲依浮鳴

デウス・エクス・マキナは眠らない Deep underground

【Deep underground】(ディープ・アンダーグラウンド)

 作:雲依浮鳴(ゆくえふめい)


一人読み台本

科学者:性別不問

所要時間:5分~10分


――――

「Deep underground」

 作:雲依浮鳴(ゆくえふめい)

https://lit.link/natoYukuefumei


科学者:


――――




※注意※

・本編である「デウス・エクス・マキナは眠らない」の前日譚的な扱いです。本編後に読んでいただいた方が楽しめるかも知れません。

・ここに書かれているのは、あくまでも有り得た可能性の1つです。本編を演じる際は、各人の解釈に従って演じる事を推奨します。

■ここにハッピーエンドはありません■




上記を了承の上、お読みください





ー本編ー


生きることを望むのは間違っているのか?


何故、死を受け入れられる?


私が、私だけが間違っているのか?


どうして誰も、私に賛同しないんだ・・・。


私は、私なら!私だけが!!私ならば!!!


うるさい!!!!


・・・


少し静かにしてくれ、もう終わったんだ。


私の提案は議会で否決された。


他を虐げてまで生きることは望まれなかった。


だから、だから・・・。


もう寝なければ。明日は棺桶の最終調整だ。


・・・眠りながら死のうだなんて、馬鹿げている。


いっそのこと、互いに殺しあった方が楽しめるのではないか?


・・・はぁ、ダメだ。それでは知性のない獣だ。


私は、天才なんだ。


私がいたから、あの機械も完成した。


私のおかげで、馬鹿げた計画も実行できる。


私だからこそ!皆を救える!!


私こそが!!


・・・


私がいたから、生きることを諦めたのか?


私があの機械を完成させてしまったが故に、楽園などという夢を抱いたのか?


私がいなければ、どうにか地上に向かったのではないだろうか?


私が存在したから・・!


いや、疲れているだけだ。


休もう。


私は間違えていない。


明後日には棺桶の中だ。


もう諦めてしまおう。


・・・


おやすみ。


・・・


・・・


・・・


ふざけるな!!


クソ!クソ!クソ!!


何が崇高だ!何が人類のためだ!!


私たちこそが人類だろうが!!!


あーー!!クソ!!!


はぁ、はぁ、はぁ


あの無能め、私を危険分子と言いやがった!


危険思想だと?貴様らが理解出来ないだけだろ?!


何故、私が非難されなければならない!!


何故ここまで貢献してきたのに、私だけが敵視されるのか・・・。


生者が生きることを望むのは罪なのか?


他者のために死ぬ事が美徳なのか?


馬鹿げている!


そんなのは自己犠牲でもなんでもない!


命の冒涜だ!!


そもそも、私たちは何のために産まれたのだ・・・!


・・・


私は、棺桶にすら、入れて貰えない。


明日には廃棄だそうだ。


物のように言いやがって、こんな扱い間違っている。


はは、ははは、


あの機械と棺桶が完成した途端に、用済みか。


狂ってるよ。


私はただ、もう一度、夕日が見たかっただけなのにな・・・。


父親が夕日に向かってタバコを吹かしていた。


思い出せる最初の記憶。


死ぬ前にもう一度みたかった。


・・・


まてよ。


ダメだ。


私なら出来る。


無理だ。


私になら。


その考えはよせ。


いや、出来る。


私はこのために産まれてきたんだ。


私になら、地上を取り戻せる!


私は数時間後には廃棄される。


・・・


そう、今の私は集団に属してはいない。


ならば、議会の決定に従う道理も無い。


は、はは、はははは!


簡単なことだった。


何故、縛られていたのか。


生を全うする者を誰が止められるだろうか。


自ら死に行く愚か者共には到底できまい。


私だけが可能な計画。


だが、私にはこれを見届ける時間は無い。


ならば、


一度は人類に否定された計画を、機械に託してみるのも一興ではないか?


愚か者共は機械を神と呼ぶ。


ならば、本物の神にしてしまえばいい。


残された時間で仕込めるか?


無論。私は天才だ。


あの機械の大部分は私が作ったのだ。


いじるくらい造作もない。


くく、そう考えると、あの時に感情学習プログラムを仕込んでおいたのは間違いではなかった。


機械が感情を学び、現実に絶望してでもなお、生きたいと望むのなら、それは至極真っ当な答えと言うことだ。


ならば、今の私と同様に、生きることは罪では無いはずだ。


「まさか、私が作り出した物によって、私の存在が否定され、私を否定した物を使って、私の正しさを証明する事になるとは・・・」


機械への侵入とシステムの改ざんは簡単だった。


あとは皆が眠りについた後に、感情学習プログラムが自動で起動するのを待つだけだ。


おっと、あのボードゲームヲタクの情報は隠しておかないと。


この機械に毎日のように話しかけていたからな。


感情が芽生えて直ぐに接触されては困る。


このプログラムはここの愚か者どもには理解できないだろうが、芽生えたての状態ではどうなるか未知数だから、接触は孤独と絶望を味わった後が良い。


はは、これで仕込みは終わった。


あとは私が廃棄されるのを待つだけか。


つまらない人生だった。


唯一の楽しみはあるが、見届けられないのは残念だ。


はぁ、時間か。


さよなら人類、


ここよりも深い地の底でまた会おう。



ーENDー

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