リナとのお散歩
アルノが一度だけリナと視線を交わし、短く頷いたあと、レンに向かって言った。
「では、私はここで離れる。リナの指示に従うように」
アルノが去り、重たいドアが音もなく閉じられると、部屋にはレンとリナだけが残った。彼女の柔らかな微笑みと鮮やかな緑色の瞳が、レンの緊張を静かに解きほぐしていくようだった。
「リナ、君は…この星のこと、いろいろ知ってるんだよね?」
リナはにこりと微笑み、楽しそうにレンを見つめた。
「もちろんです。私の役目は、あなたにこの星の文化やルールを教えることですから、気になることがあれば遠慮なく聞いてくださいね」
レンが安心した様子で頷くと、リナはさらに提案した。
「せっかくですから、フィオレの教育施設を少し案内しましょうか?ここには地球にはない学習システムがたくさんあるんですよ」
「教育施設?フィオレの学びってどんなものか興味あるな」
レンが即答すると、リナは楽しげに微笑んでレンを廊下へ促した。建物は地球の建造物とは異なる曲線で構成されていて、どこか柔らかさを感じさせるデザインだった。廊下の壁には淡い虹色の光が波のように揺れており、レンはその独特な美しさに見とれながら進んだ。
「この光のシステムも、フィオレ特有の技術なんです。人々の集中力やリラックス度合いをサポートする効果があるんですよ」
「光で集中力が変わるのか…地球じゃ考えられないよな」
リナは頷き、廊下の奥にある広い部屋を指差した。
「ここが教育施設の一部です。ここでは主に歴史や科学、そして技術について学ぶんですよ」
二人が中に入ると、部屋には立体的な映像が浮かび上がり、フィオレの景色や装置が次々に映し出されていた。特に目を引いたのは、宙に浮かぶ球体が何層にも分かれて回転しているもので、見たことのない構造にレンは思わず見入ってしまった。
「これは…なんだ?」
リナは少し誇らしげに説明を始めた。
「これは『ジオスフィア』と呼ばれる、フィオレの地理と歴史を示す装置です。内部には何千年にもわたる記録が収められていて、フィオレの星全体の環境や文化の変遷を学べるんです」
「何千年も…!そんな記録が今でも残ってるなんてすごいな」
「フィオレでは、過去を学び続けることで、未来をよりよくするという考え方が根付いているんです。ですから、記録を保存する技術も発達しているんですよ」
リナが装置に指をかざすと、ジオスフィアが一部開き、内部に微細な光の粒子が広がった。それはまるでフィオレの歴史そのものが語りかけてくるようで、レンは心を奪われた。
「それにしても、地球でこんな装置を見たことがないよ…フィオレの学びって、すごく独特なんだな」
リナは微笑みながら頷いた。
「フィオレでは、個人の興味や才能に合わせた学習が推奨されているんです。こちらでは、生徒が自由に学べるように、学習内容が自分で選べるシステムになっています」
「自分で選べる…地球の学校とはずいぶん違うんだな」
「ええ。個々が興味を持てるものを突き詰めて学ぶことで、全体の知識や技術が豊かになると信じられています」
リナの言葉に、レンは地球での教育との違いを改めて感じ、フィオレの考え方の奥深さに驚かされていた。
二人は次に、実験室のような別の部屋に案内された。リナが手をかざすとドアが開き、レンはその中にあるさまざまな機械や装置に目を奪われた。機器はすべてフィオレ独特の光沢を持っており、滑らかな曲線が多用されていた。
「ここでは技術や科学に関する実験や研究が行われています。もし興味があれば、あなたもこの星の技術を体験することができますよ」
「本当に?フィオレの技術を学べるなんて…信じられないな!」
レンの目が輝いたのを見て、リナは少し楽しげに続けた。
「ただし、参加できるのは監視のもとでとなりますが…フィオレの一員として生活する上で、技術の基礎を知ってもらうのは重要ですからね」
レンは驚きつつも嬉しさが込み上げてくるのを感じた。この星で、異星の技術や科学を学ぶことができるというのは、地球では経験できない機会だ。
「俺も少しずつ、フィオレの一員になれた気がするよ」
リナは嬉しそうに微笑み、レンに向かって頷いた。
「それなら良かったです。あなたがここで過ごす時間を有意義にしてほしいから、私も全力でサポートしますね」
二人はしばらく学習施設を巡り、フィオレでの教育や研究について語り合った。未知の星での生活に少しずつ馴染み始めたレンは、リナの言葉に背中を押されながら、新しい知識と出会いに胸を膨らませていた。
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地球から異星へ招かれた少年、星々をつなぐ架け橋となる arina @arina-t
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