かつて犯罪に巻き込まれた愚弟と共に、子供達を「加害者にしない」術を考える

求刑って何年くらいなの？

　自分のお家に中学生くらいから上の年齢のお子さんが居たら、聞いてみて欲しいことがある。

「強盗に入って、家の人を包丁で脅して、お金を一万円奪って逃げて捕まった。

　刑務所にはどのくらい入ると思う？」

　答・　5年～20年以下(強盗罪)

(これは相手に傷を負わせていない場合だ)

「強盗に入って、家の人を素手で殴って怪我をさせて、お金を一万円奪って逃げて捕まった。

　刑務所にはどのくらい入ると思う？」

　答・　無期懲役、または6年～20年以下(強盗致傷罪)

「強盗に入って、家の人を殴って、お金を一万円奪って逃げたけど捕まった。家の人は打ち所が悪くて死んでしまった。

　刑務所にはどのくらい入ると思う？」

　答・　死刑、または無期懲役(強盗致死罪)

　さてさて。

　いかがですか。長いと思われましたでしょうか、それとも生ぬるいと思われましたでしょうか。

　実際の所、場合によっては少年法の絡みで少し軽くなったり、あまり無いとは思うが無罪になったり(本当に無さそう……)、裁判結果は事案によりまちまちになるかと思う。

　ざっくり言うと、

「強盗に入って人に危害を加えたら、無期懲役になる可能性がある。死者が出れば死刑になる可能性もある」

と思っていただければ良いのかなと思う。

　例え有期刑で済んでも、10代20代から最長で20年刑務所に入るとなると、出所してからの生活が困難になるのは目に見えている。何より、人生の中でも重要な期間を刑務所の中で失うリスクは計り知れない。最も、それだけ人を傷つけたのだから、そうして償う他無い。

　どんな事件でも死刑になる目安は「二人以上の殺害」とされているから、強盗致死の場合、多くのケースは求刑は無期懲役になるんじゃないだろうか。

(繰り返すが、私は法律に明るい人間では無い。解釈が違う所や、補足が必要な所があればコメント欄で教えていただきたい)

　強盗に入ったものの「自分は怖くて見ていただけ」、となる場合もある。

「強盗には入っていないけど、強盗したお金を運ぶのに関わった」という人も居るだろう。

「指示役のバイトとして、テレグラムやシグナルでメッセージを送っただけ」そういう人も居る。

　この場合も、ケースバイケースではあるものの、基本的には「実行犯」と同じ罪として見なされる。「共謀共同正犯」というものなのだが、説明すると長くなるので、詳しくは後々。

「Xからホワイトバイトに応募して、指示役とやり取りし、公園のトイレにあった袋をコインロッカーに入れた。

　刑務所にはどのくらい入ると思う？」

　答・　事案によるが、死刑、または無期懲役になる場合もある。

　先日、首都圏広域強盗事件で夫婦が逮捕された事案があった。

　夫は別事件の特殊詐欺の受け子。

　三十代の妻の方は強盗事件絡みだが、強盗には直接参加せず、「ある地点からある地点までお金を運ぶ」という役割だった。逮捕後に弁護士から「求刑は死刑か無期懲役」と言われて愕然としたそう。

　実際に、捜査や裁判で「強盗を共謀していた」と認められるかは分からないが、今後の動向を追っていこうと思っている。

　私はこの夫婦を哀れとは思わないし、踏みとどまれずに「加害者」になったならば、後はしかるべく裁かれて、償い切れぬ罪を生涯償うしかないと思う。

　しかしながら、この夫婦には幼い子供がおり、その子を思うとやはり痛ましい。

　無期懲役、昔は十数年で仮釈放されたらしいのだが、今はもっと厳しくなっている。

　無期懲役の受刑者が仮釈放されるまでの平均在所期間は、36年強。

　これは「仮釈放された」受刑者の平均年数なので、36年で仮釈放されるという訳では無い。大半はそもそも仮釈放されない。

　30年を経過したあたりで、長年模範囚であれば仮釈放の審理が行わる場合があるが、認められる割合は約4分の1。そして一度落ちると次に申請できるのは10年後。

　何せ凶悪犯罪者だ。再犯を防ぐ為にも、迂闊に表には出せないという事だ。

　申請一回で通るケースはほぼ無いと聞く。

　2022年の統計では、無期懲役の受刑者数1,688人に対して仮釈放の審理が行われたのは38件、認められたのは6人。

　凶悪犯罪者が6人も仮釈放されたのか、と思われるかも知れないが、多くは年老いて、仮釈放の後、直ぐに亡くなる事も少なくない。

　むしろ、無期懲役囚の多くは獄死とも聞く。

　また、無期懲役は文字通り「無期」であり、「仮」釈放だ。

　生活には多くの制限がかかっており、些細な事で再度収監される事もある。

　そうなると、もう一生塀の中だ。

　日本における無期懲役は、ほぼ終身刑と同意だ。

　僅か数万円のバイト代の為に、迂闊に美味い話に飛びつき、間接的にでも人を傷つけ、生涯塀の中で服役する。

　そんな事の無いように、是非お子さんと話をしてみて欲しい。