情報過多なのに情報弱者になってしまう子供達

 新聞、テレビ、ラジオ。


 皆さん利用されているだろうか。私は正直全く利用していない。あんまり良くない。本当はどれかでも利用しないといけないなとは思っている。


 昨年からちょっと精神のバランスを崩した関係で、テレビを殆ど見なくなった。見ても歌番組くらいだ。Xも殆ど見なくなった。

 そうすると、当たり前だが時事ニュースに疎くなってくる。


 幸いというかなんというか、YouTubeのニュースチャンネルは割と好きで視聴しているが、それでも「自分が見たい情報」しか観ていないなと感じる。

 関連性の高い動画が次々表示されるので、必然、他の自分にとってどうでもいい情報はあまり表示されないのだ。


 さて。

 年代問わずかも知れないが、今の時代暇さえあれば四六時中スマホを触っているという人も多いだろう。私もそうだ。そうすると、ぼーっとする暇もないくらい沢山の情報が頭に流れ込む。


 なのに、闇バイトで起訴された人は割とこんな感じの事を言う「こんな事になると思わなかった」「安全なバイトだと思って個人情報を渡した」「テレグラム(又はシグナル)をインストールしろって言われて」

 絶対に「この仕事は怪しい」と思う瞬間はあったはずなのに、何故かそのまま流されている。ちょっと調べれば「闇バイト直ぐに通報しろ警察が保護してくれる」くらい出てきそうなものだ。

 実際、「闇バイトに応募したかも、個人情報を渡した」と言って保護されている人はかなり居るらしい。自ら調べるなり、周囲に相談するなりして、加害者になる前に踏みとどまった人だ。


 しかし、流されるまま闇バイトに参加して、加害者になってから慌てる人も居る。

「何で私が死刑か無期懲役なんですか!?」


 情報過多の世の中で、情報弱者になる子供達。

別の項目でも言ったが、二十代まではあえて「子供」と呼んでいる。

「若者」にしても良いのだが、「大人が手を差し伸べるべき年齢だ」と強調するために敢えてそうしている。


 利用者も多そうな所で、YouTubeの話をしよう。(申し訳ないが、私はTikTokについては観たことが無いので分からないのだ……)


 10代〜20代の子供達はどんな動画を視聴するか。

 まあその人の好みだと思うが、時事ニュースに関心が無ければ、その人のYouTubeに時事ニュースは殆ど表示されない。

 YouTubeはユーザーの閲覧履歴に対して、関連性の高い動画を優先的に表示する為だ。


 ゲーム実況が好きな人は、YouTubeを開いて直ぐにゲーム実況を見る事が出来る。音楽が好きならずっと聴いていられる。スポーツが好きならスポーツ観戦をしたり、過去の試合や選手の情報も観れる。アダルト系はだいぶ粛正されたものの、可愛い女のコも沢山見れる。

 好きなYouTuberさんやVTuberさんが居る人も多いだろう。


 それら自体は全く悪いものじゃない。

 殆どの人は他人に迷惑をかけず、寛ぎながら楽しく豊かな時間を過ごしている筈だ。


 とにかく、YouTubeは情報の深堀に特化しているコンテンツだ。

 そして、広く浅い情報は自ら選ばない限り入って来ない。


 日常生活を平穏に過ごしている人なら殆ど問題無いのだが、中にはそうでは無い人も居る。


 そう、

「闇バイト絶対応募しないで! 良いことは何も無いし使い捨てにされるだけですよ! 日本の警察は優秀です! 必ず逮捕されますよ!」

と新聞やニュース番組、警察、時事ニュース系のYouTubeチャンネルが繰り返し必死に呼びかけても、自分の観たいもを観ている人には、その情報はびっくりするくらい届かないのだ。


 自分で調べない限り、YouTubeは手触りの良い情報を流し続ける。例えば可愛い女のコばっかり見ていると、昨今の事件の注意喚起は流れて来ない。


 そして、YouTubeはものすごく残念なポイントがある。


 広告の品質が悪いのだ。審査がザルと専らの噂である。


 もちろんちゃんとした企業も広告動画を出しているし、ごく普通の広告もある。

(一流企業でも安いAI音声の広告出してると途端に詐欺広告っぽく見えるのは何故だろう……いや、今は関係無い)


 お金に困った人が、YouTubeで「借金返済」「リボ払い」「稼げる仕事」「返済できない」そんなワードを入れると、途端に広告が残念な感じになる。


『○○カード! 審査無しで誰でも使えるクレジットカードです!』(無闇にカード作らせて借金増やす系)

『誰でも月○○万稼げる副業をご存知ですか?』(情報教材詐欺系)

『国が認めた借金をチャラにする方法!』(何で普通に自己破産って言わないの? 系)

『〇ビット! お申し込みの際には審査があります』(無人契約機の街金系、今の時代スマホで借りれたりするのか……)


 金策に困っている人に、とにかく借金と自己破産を勧めてくるのである。

 どうしょうもない。ちなみにギャンブルで作った借金は自己破産しにくいらしい。もちろんその人の状況や弁護士さんの腕にも寄るのだろうが、基本的には債務整理を勧められる筈だ。

 まあ……変な広告を流している弁護事務所ではなく、まずは法テラスに相談に行ってみるとかなら良いんじゃないかなと思う。


 愚弟はかつてパチンカスでけっこうな借金を作ったのだが、その時は弁護士さんにお願いして「債務整理」を行っている。これ以上利息を付けないようにしてもらい、返済期間も調整してもらって、コツコツと返済していく形だ。


 もちろん借金なんてものは作らないのが一番良いわけだが、借金を借金で返すのは本当に悪手だ。泥沼にハマってしまう。


 広告に惑わされず、お金の管理やリボ払いの体験談など、その人の問題を解決出来る糸口に辿り着けば良いのだが、中には「厳しい現実から敢えて目を逸らしてしまう」人も居るだろう。

 そういう人は現実を突き付ける情報を調。逃避してしまうのだ。


 そして、安易に一発逆転を狙ってしまう人も居る。

 YouTubeやGoogle検索で情報を探そうともせず、もっと言えば情報を得てなんとか生活の足場を固めようなどと思う事もなく、安易に「直ぐに大金を稼げる美味い話」に飛びついてしまう人が存在する。

 私の愚弟もそうだった。


「高時給即日現金払い! 安心安全ノーリスクハイリターンの簡単なお仕事です!」


 こんなん誰も引っかからんだろ。どう見ても怪しい。

 しかし引っかかった愚弟は言う。


「俺はとにかく毎日『金が無い』ってばっかり考えてて、頭がお金の事でいっぱいで、いつも焦ってて、そんでめちゃくちゃ情弱だった。言い訳だけど、『そういうのが怪しい』って情報も入ってこなかった。その時は調べようとも思わなかった」


 こいつヤバいだろ。と、姉も思う。

 しかし、闇バイトに応募してしまう人はこういうタイプの人が多いんじゃないだろうか。


 ギャンブルにハマり、勝ったり負けたりしているうちに、或いは生活に困窮して、お金の事しか考えられなくなる。

 借金が借金を呼ぶ。

 自分の生活スタイルの中で、「本当に必要な情報」を得られない。

 焦燥感に苛まれ、積み上がる請求書の手触りに怯え、そして誰にも相談できない。焦燥感と恐怖が脳を支配する。

 そうすると判断力が鈍り、目先の「美味い話」に飛びついてしまう。


 結果、安心安全なバイトに行ったら、見ず知らずの人の人生を奪う事となり、想像もしなかった重い求刑を言い渡される。


 情報が必要な人に適切に届けば、「加害者」を減らす事が出来る。加害者が減れば「被害者」を減らす事ができる。


 情報弱者。差別用語では無い。

 何の落ち度も無い人への被害を食い止める為にも、情報が届かない人へ情報を届ける事が急がれている。

 

 彼等が加害者になる前に手が届けば、罪を犯さずに済む。


 もしも貴方にお子さんが居たり、会話が出来る若者が居れば、こういうお話を少しでもしてあげて欲しい。お話した相手は全く闇バイトなんて縁がなくても、お友達に話してくれるかも知れない。お友達は何かに困っている人かも知れない。


「闇バイトなんかしても大して稼げない上に絶対捕まるぞ、人生棒に振るぞ、誘われたら直ぐ交番に駆け込むか警察に電話しろ」


 とりあえずこれだけでも良い。

 社会全体で知識を共有すること。

 それが集団免疫の様に被害を未然に防ぐのでは無いかと思い、恥を承知で、こんな文書を書かせていただいている。


 次回は、もうちょっと踏み込んで、首都圏連続強盗事件に関わった人の求刑についてお話してみよう。

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