子供でも気軽に借金ができてしまう現在

「後払い」という借金。


 ちょっと前まで、高校生でもこの「後払い」を保護者の同意無しで使えるアプリやサービスが沢山あった。

 最近企業が一気に規制をかけて、殆どのサービスが「後払いの使用は18歳から(高校生不可)」という風に変わった。


 言わずもがな、「高校生の後払い」が社会問題になったからだ。

 親御さんが悲鳴を上げたケースも沢山あったみたいだ。規制されて何より。


 しかしキャリアスマホの決済サービスなんかを使えば、未だに実質後払いみたいな事は出来てしまう。インターネットでの買い物やゲームへの課金をした際、携帯電話の使用料と一緒に支払えるサービスだ。

 限度額は会社によって異なるが、10代でも数万円は使えたりする。

 後は支払いをコンビニ払いにするとか。商品と一緒に支払い用紙が送られてくるやつだ。

 手元に現金が無くても商品が手に入る。

 場合によっては支払いに困る場合もあるだろう。

 

 高校を無事卒業したとして、審査はあるが、18才以上はクレジットカードを作れる。


 じゃあ、高校卒業したての18才って大人だろうか。

 私は子供だと思う。

 私は18才の時専門学校生で、ライブのチケットが取れたのに、支払うお金が無くて親に電話で泣きついた事がある。ちなみに一人暮らしをしていた。

(クレジットカードはなんとなく怖くて、作っていなかった。まだ現金決済が主流の時代だったのだ)

「お母さん、今月お金無くて~」

「お母さんも今月お金無くて~」

 そしてあっさり電話を切られた。

 ちなみに何とか食いつないでライブには行った。マイ・ケミカル・ロマンスが出演したサマソニだった。エモい。もう二十年も前の話だ。

 mixiとか使ってたなあ……Twitterはまだ無かった。

 当時は私も幼かったのだ。


 今時の子供達は、PayPay等の決済サービスの普及もあり、現金をあまり使わない。

 無論、手元の現金をチャージして使う分には、特に問題無いと思う。ポイントが溜まる分お得なのだ。会計も早いし、友達との割り勘も容易にできる。賢い選択だと思う。

 問題は、、何らかの後払いサービスを利用してしまう人。

 キャリア決済、クレジットカード、バンドルカードなどのカードアプリ、ペイディ等の分割払いサービス、コンビニ払い、何でもいい。

 兎に角、今の時代は支払いの選択肢が多様化している。


 カードを使うにしても、例えば現金が手元にあり、インターネットで買い物をしたら支払い用に取り分け、きちんと払える様にしておければ何も問題は無い。

 現金として手元に置かず、口座から直に引き落とすにしても、収入の中できちんと予算組してあれば問題は無い。


 しかし、それが出来ないで支払いが滞る子供達が居る。

(大人も結構居るが、今回は「子供」というテーマなので言及はしない)


 まあでも、若年層の後払いのトラブル自体は何十年も昔からあったのだ。しかし、昔は無かったものがある。

 X、Instagram、TikTok、YouTube等。そう、SNSだ。


 遥か昔からあるmixiや各種ブログ、Facebookはちょっと毛色が違う。スピード感とでも言おうか。

 とにかくリアルタイムな、現代のSNS。


 さてさて。

 今の子供達はスマートフォン・ネイティブ(と勝手に呼ぶ)であり、同年代友達の近況や、プライベートな写真や動画を常に見ている。それも物凄いスピード感で。


 切り抜かれた一瞬の輝き。


 それはスマホゲームのガチャで出たレアリティの高いキャラクターかもしれないし、可愛らしいお店のオシャレな食事や、バイト代を貯めて買った素敵な服かもしれない。推しのライブ会場のフォトスポットで撮ったキラキラした楽しげな写真かも知れない。そりゃもう色々だろう。

 リールで流れてくる写真の中には「インフルエンサー」と呼ばれる人々も居り、オシャレで可愛くかっこいい毎日を演出している。

 YouTubeでは、素敵な人が新作コスメやハイブランドのアイテムを開封している。

 

「皆がしてる」が「私もしたい」になる。

「皆持ってる」が「私も欲しい」になる。


 例えば、毎年今の時期くらいから、デパコスのクリスマスコフレの予約が始まる。

 なんのこっちゃと言うと、百貨店に入っているようなブランド物の化粧品店が、クリスマス限定の福袋みたいなやつを出すのだ。昔はお店に並んだりしたものだが、今は大体の所がインターネットで予約、購入できる。

 お店に行かなくてもいい。百貨店が近隣に無くても買えてしまう。


 お化粧品のセットっていくらくらいのイメージだろうか。


 私が買おうか悩んでいるクリスマスコフレを見てみよう。メーカーは内緒だが、よく百貨店に入っている。

 ○ マスカラ1本

 ○ ちっちゃいアイシャドウ3つ

 ○ 口紅1本

 ○ ちっちゃいハンドクリーム


 以上。男性だとこれ全部でいくらくらいに感じるのだろうか……ちなみに単品で買うより割安感がある。色は限定カラーで可愛い。パッケージも最高に可愛い。


 お値段7150円だ。


 購入ページには、ご丁寧に、「ペイディなら月々¥1,191」と付け加えてある。


 7150円ならまあ18才でも一括で買おうかなとなるかも知れない。

 なんと! もっと豪華な30000円強の最強に可愛いセットもあるのだ!  ドーン! ちなみに割安ではある。メーカーは善意で作っている。しかし可愛すぎる。そしてインスタで映えすぎる。


 18才! 30000円! 高い! でも分割なら買えるかなあ……


 分割ならまだいい。

 18才でも作れる様な審査の甘いカードだと、とんでもない罠があったりする。


 


 ヒュッ……(息を飲む音)


 限度額までお買い物をしても月々一定額のお支払いで済む魔法のカード!

 尚手数料(と言う名のほぼ金利)は街金とあんまり変わらないくらい。くっそ高い。とんでもない。

 うっかり使い過ぎると、毎月の支払いがほぼ手数料で消えて元本は増え続けるという恐ろしい状態になる。

 しかも使えば使う程、カードのショッピング枠が勝手に増えるトラップ付きで、「毎月ちゃんと払っているのに、気がついたら借金が数十万円になっていた」なんて話もよく見かける。


 高校の家庭科の先生が言っていた。

「授業の内容は忘れても良いから、『リボ払い使うな』だけは覚えておいてください」

 なんて良い先生だ。


 良く言うのが、「リボで100万使うと金利いくらくらい付くの?」「100万」である。そのくらい「手数料」と銘打っている金利が高い。


「ポイントつくから賢く使えばお得!」と言う人も居そうだが、カード持ち始めたばっかりの子供がそんなに賢い訳が無い。

 あと本当に得してるのは一括で払って金利付けずに粛々とポイント貯めてる勢だ。

 リボ払い勢が払った高い手数料は、一括勢のポイントに還元されている。世知辛い。


 ちなみにクレジットカードを作ろうとすると「リボ払いがオススメです」

 と言われ、リボ払いのメリットを親切丁寧に説明される事がある。そうなったら、カウンターで優しく説明してくれるお姉さんに聞いてみて欲しい。

「そんなに勧めるなら、お姉さんもリボ払い使ってるんですよね?」

 スンッ……ってなる筈だ。リボ払いダメ絶対。 


 リボ払いという名前が悪名高過ぎて、流石に使う人が少なくなっているのか、最近はパッと見リボ払いに見えない名前になっていたりもする。巧妙だ。


 アホほど種類があるので少しだけ書いてみる。

 カードを作れるような年齢的のお子さん居る方は、どんなカード使っていて、支払い方法をどうしているか聞いてみると良いと思う。

「分からない」という子も居ると思う。かなり危ない。


 ☆三井住友カード「マイ・ペイすリボ」

 買い物のときに1回払いを指定すると自動的に支払い方法がリボ払いになるクレジットカード

(これを見た時「人の心とか無いんか?」と思った)


 ☆JCBカード「支払い名人」

 ☆au PAYカード「楽Pay」

 一見何か良くわかんないシリーズである。こういうのがいっぱいある。兎に角支払い方法を良く確認してほしい。


 ☆メルペイ「定額払い」

 メルカリ! ……メルカリよお前もか!!

 メルカリでちょっと何か買って支払い忘れてたら、残債がとんでもない金額になってた、みたいな話をXで見かけた気がする。


 まだまだいっぱいある。本当にいっぱいあるのだ。


 しかも、今日日紙の明細が送られてくるカード会社ってどのくらいあるんだろう……私のはインターネット明細しかない。自主的に調べるしかないのだ。


 さてさて。愚弟の話も少し。


 当時、愚弟はクレジットカードの明細なんぞ見ても居なかった。

 しかもメンズの脱毛サロンでさらりと「支払いリボ払いにしときますね」と言われ、よく分からないけど「はい」と答える愚弟っぷり。


 愚弟の目の前で私が計算して見せたら「金利(名目としては手数料)こんなに高いの!?」と目を見開いていた。ぐ、愚弟だなあ……

 分割払いとさして変わらない物だと思っていたらしい。


 まあでも、愚弟だけでは無いだろう。

 ものを知らぬ子供達が、「月々5000円で何でも買える!」とか有難がってとんでもない借金をこさえた挙句首が回らなくなったりするのである。


 ちなみに、「今の若い子はSHEINとかtemuとか、海外資本のアプリで安い服とかコスメとかを買っているから、そんなにお金使わないんじゃない?」

 と言う人も居るかもしれない。

 あの手のアプリで一番怖いのは「クレジットカードの情報を抜き取り、不正利用される事」だ。

 品質が粗悪なものも多いがそれは値段の分仕方ない。安物買いの銭失いで済めばいいが、「その手のサービスで買い物をした後に、カードが不正利用されていて、慌ててカード会社に連絡した」という話は後を立たない。

 どうしてもSHEINで買いたいなら止めはしないが、クレジットの情報を渡さぬ様にコンビニ払いを利用するとか、対策は必要だ。

「不正利用に気が付かず、何ヶ月も少額抜かれていた」なんて話もある。

 毎月の明細を見ていない人は、今すぐご確認を。

 

 さてさてさて。

 カードを持ったばかりで使い方を誤り、支払いが滞ったとする。

 日々届く督促。カラフルな封筒に親が気づけば良いのだが、18才となると進学や就職のために一人暮らししている子も多いだろう。

 実家の親に迷惑を掛けたくない。

 それで、誰にも相談出来ぬまま、Xで検索するのだ。

「高収入 即日 バイト」


 現代のマネーリテラシーは「無駄使いしちゃダメよ」なんて可愛い言葉ではとても足りない。


「今支払えない買い物は身の丈に合わないものであること」

「借金の種類と利息の違い」

「各社のリボルビング払いと手数料の高さ」

「安易に企業にクレジットカード情報を渡す事の危険さ」

「不正利用をされた時何処に連絡したら良いか」

「何の資格も要らない即日高収入のバイトが、まともな仕事である訳が無いと言う事」


 他にも沢山ありそうだ。

 親御さん、こういうお話お子さんとできていますか?

 中学生くらいになったら、こういうマネーリテラシーの話を日々少しづつでもした方が良いと思う。


 何でか。X(旧Twitter)が使える様になるからだ。Xは13歳以上が使えるサービスで、闇バイトの大半はXで募集されている。

(他のSNSや求人サイトで募集している場合もある)


 Xが悪いのでは無いが、玉石混合の情報が飛び交う、エキサイティングで、時に恐ろしい世界。

 飛び込む前に、家族でこういう事を話し合う機会があると良いんじゃないかな? と思う。

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かつて犯罪に巻き込まれた愚弟と共に、子供達を「加害者にしない」術を考える 縦縞ヨリ @sayoritatejima

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