神様
「どうして…ここに」
顔を曇らす。
「トウ久しいな」
上を見上げ俺を見る彼女は当時のままだった。
「なんでここに来たんだ。もう、こないって言ったじゃないか。」
「それは…」
もじもじしながらなにかいいたげそうな表情をする。でもいっこうに言葉を出してこない。
全くどういうことだ。
「用があるから来たんだろ。」
「うん」
大人っぽさはどこに行ったことやらやっぱり子供だ。
「助けて」
「え」
「助けて、助けてください。」
腿の服を握りながら下を向きそう言った。
目から雫をこぼしながら。
「神様」
「お願いします。お願いします。」
精一杯、誠意を込めた言葉に他ならない。
だが
「無理だよ。」
僕は一蹴した。理由も聞かずにただ一言で
「どうして、いや聞くまでもないけれど、昔はやってくれだじゃないか期待したっていいじゃない」
「神様、あれから50年も経ちました。僕は役に立ちませんよ。」
平然と事実を口にする。
「戯け、そんなことないじゃろ。」
「いえいえ、見てください。この皮だけの顔を。見てください。足を。歩くのもままならないですよ。」
「嘘をつけ」
「本当です。ほら、この通り白髪です。」
「そんなわけない!妹ちゃんがああなってから君は自分の異能を使わなくなった。使ったら戻るぅ。」
「その異能が全てを狂わせたってんだよ。」
「すまん。いや、ごめんなさい。」
「いや、こちらこそすいません。」
「いや、私のせいというのに変わりはないじゃろ。あの日、君と出会った日。私は君に託したのが」
「で、どうしたんですか。」
「聞いてくれるのか」
「仕方ないでしょ。あなたのことだ引いてはくれないでしょうし。別に神様のせいではありませんし。」
「それが、私と契約を結んだ子達の行方が分からのぅなってしまって。」
「神様と縁を切りたくなってしまったんじゃ。」
「うぅ…」
子供の様に泣き出しそうな神様。
「いや、違うかも。」
「酷い!私だって傷つくもん。」
「すいません。」
「で、心当たりは」
「ないこともないが、恐らくハリアル帝国が動き出したとの噂がある。」
「ハリアル帝国ですか。」
「知ってるの。」
「いえ、あそこはまだ、住めるんです。しばし、人の姿をみてないもので」
「うん。こことは違ってね。とうは異様なんだぞ。こんな酸素のない場所に住めるなんて。食事もとってないんだろう。」
「 お互い様です。」
「それもそうじゃな」
「で、どこなんですか。そこは。ここから南に100キロ程先の場所。」
「僕やっぱりやめます。」
「やめるなー」
僕は少し睨んだ。
「やめないでください。お願いします。」
目線を外しながら人差し指どうしをツンツンして頼んできた。
「分かりました。じゃあ、硫化印を使ってください。」
「もってないぞ」
「もってないということはないでしょう。ほら、めくってください。」
「うわぁー。やめろぅー」
袖を捲ろうとすると恥ずかしそうに拒絶した。そんな神様を見るのは久しぶりだ。
だけど、もってないということは。
「神様、契約を結んでいるんですよね。結んでいるのだとしたら僕みたいにほら」
「恥ずかしくないのか。」
僕は上半身を脱ぎ、血管の様に巡る赤く光る印を見せた。
神様は少し眩しそうな素振りを見せた。
「全く恥ずかしくありません。全然。」
「そうか。変わって内容で何よりだ。だが、しまっておれ」
シュワクチャ、ブヨブヨのお腹がよっぽどいたいけだったのだろうか。少し引いている。
「でも、そうなると。飛んでいけませんよ。僕がそんなに歩いたら死んでしまいますよ。」
「だから、能力を…」
「いや、すまん。無理にとは言わない。でも、少しずつ」
「使ったとて、そこに行けるような代物じゃないことは知ってるでしょう。」
「ほら、若返ることはできよう。」
「歩いていくんですか。」
「そうじゃ、歩いていく。」
「僕の知り合いがいたりしませんか。その中に。」
「どうじゃったかの。居たような気もするし、いなかったような。」
「 あ、アブリュー」
神様と僕は打ち合わせをしたように声を一つに名を言った。
「じゃあ、行きましょうか。」
「うむ。だけど、その姿でいくのか。」
「アブリューもおじさんでしょう。」
「そうだけど、敵地かもしれない。」
「分かりました。仕方ありねぇ」
手を顔に当て、反るようにして白髪頭をかきあげると黒髪に皺のない青年が姿を現した。
「おお、とう。久しぶり。」
もしもゼロからやり直せたとしたら 秋風のシャア @akikazenosyah
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