第2話 痴話喧嘩

「はー疲れた」


今日は誰んとこ泊まろうかな

この前のビールがけした彼女の家にずっと棲みついてたが、浮気がバレちゃ仕方がない

カネがないわけじゃないけど、泊めてくれる人が沢山いるのにわざわざ家を買う必要がないというか


「…ふざけるんじゃねーぞ」

「…あんただって!」


何だよ、うるせーな

こんな人通りの多いとこで痴話喧嘩するなっての

しかも意外と女の人きれいだし


「おまえ調子乗ってんじゃねーの?」


そう言って男の人が腕を振りかざした

その時なぜだか体が動いてしまった


「事情があるとは言え、女の子を殴ろうとするのはどーなの?」


女の人の前に立ち、男の腕を掴んだ


「部外者が勝手に入ってくんなよ」

「別にさ、俺はお前らがどうなろうといいの。でも一応言っとくと、周り見てみ?沢山の人があんたら撮影してるよ。おまけにここの近くに警察署あるし。大事になる前に立ち去ったらどう?」


男はチッと舌打ちし、バツが悪そうに駆け抜けてった


「おねーさん、大丈夫そう?」


後ろにいる女の人の顔を覗き込む


「やっぱきれーな顔してんな」

「は?」


女の人が怪訝そうに俺を凝視した

やば、声に出てた


「ごめん、ナンパとかじゃなくて、本当に思ったから」


そう言った直後、急に女の人がふらふらと倒れた


「え?本当に大丈夫?おねーさん?聞こえるー?」


ガチでやばいやつじゃん

こういうときどうすんだっけ


「救急車呼ばなきゃ」


スマホを取り出そうとすると、手を掴まれた


「…呼ばなくて良い」


一言言い残し、彼女は完全に力尽きた


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