クズがクズを愛しちゃだめですか?

@sentence_toyou

第1話 クズ

バシャッ

周りの悲鳴とともに上からぬるいビールが垂れてくる

グラスが割るような勢いで机に叩き落とされた


「あんった最っ低ー」


捨て台詞とともにその子は去っていった

眼の前には怯えた表情の女の子がもう一人

これで何度目だろう

前回は豪快にビンタをされて、その前はコーヒーを顔面からぶちまけられたんだっけ

周りの視線が痛くなり、さっさと店を出た

おもむろにスマホをポケットから取り出し、電話をかける


「あ、もしもしー?あのさ、今日泊めてくんない?手出さないから!ね?」


世間一般から見ればクズかもしれないが、これはいろんな女の子を一気に楽しむための手段なのであって、別に悪いことをしているつもりではない

一応一人ひとり大事にしているつもりだし

今日は寝床が決まったことだし、安心して寝れそうだ


「おはようございますー!」


翌日、普通に会社に出勤する

で、いつものように女子に囲まれる


「柊<しゅう>先輩!一緒にランチ行きませんか?」

「これ!朝早く柊くんのためにお弁当作ったんです!」

「今日一緒に帰りましょうよ!私早上がりなんで!」


誰も自分中心に発言してくる

そもそも知らないやつのお弁当なんていらないし、一緒にランチなんてもっと面倒くさい

まだ顔が可愛かったら良いものの、この会社の女子の顔面偏差値は半分以下と言っても過言ではないだろう

それでも笑顔で


「ありがとう!でも僕、今日は他の人ともう約束しちゃったんだ!また今度ね!絶対忘れず誘ってよね」


と相手を傷つけないように交わす

もちろん次誘われたとしても絶対行く気などないのだが

この会社で築いてきた可愛い王子様ポジを揺るがすわけにはいかない


「佐野柊さん、ちょっといいかしら」


後ろを見ると部長秘書の神崎さんが立っていた

すると周りを取り囲んでいた女子たちがなにかひそひそ話しながら散っていった

俺は神崎さんについていった

物置のような部屋に入り立ち止まった


「神崎さんどうしたんですか?」

「他の人居ないんだからその呼び方やめて」

「香菜?なんかあったの?」

彼女の腰に手を回し、グッと顔を近づける

「なんかっていうか…他の子と距離近くない?」

「んー香菜さんの嫉妬してる顔が可愛いからつい」


はー面倒くさい

30代でそれはきついわー

俺と付き合ってるからっていい女になったような気になって

ただのババアが

もうそろそろ飽きてきたし別れようかな


「もー柊くん!ずるいよー」

「香菜さん、仕事に戻んないと変な目で見られるよ」


そう促し、香菜さんを追い出す

世の中の女性はこうもイケメンが好きなのか

これだから女性は信じられないし、一途になる気もない


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