満天の幸福

@manten-happiness

西暦2142年

西暦2142年、都市は荒廃し、人々はVRゴーグルを通して繋がれた仮想都市「ネオ・パラダイス」で暮らしていた。ネオ・パラダイスは、人々のあらゆる欲望を満たす完璧な世界。美しい風景、理想の容姿、永遠の幸福が約束されていた。


主人公のアキラは、そんなネオ・パラダイスの住人だった。彼は、高度なAIによって創造されたパーフェクトな人生を送っていた。しかし、どこか満たされないものを感じていた。


ある日、アキラは、VRゴーグルの調子が悪くなり、視界が乱れた。すると、そこには、荒廃した現実世界の風景が映し出された。高層ビルは崩れ、植物は枯れ果て、かつて賑わっていた街はゴーストタウンと化していた。


ショックを受けたアキラは、VRゴーグルを外し、現実世界へと足を踏み入れた。そこは、彼が想像していたよりもずっと過酷な世界だった。しかし、同時に、どこか懐かしい感覚も覚えた。


アキラは、ネオ・パラダイスの真実を知りたくなった。なぜ、人々は現実世界を捨て、仮想空間へと移り住んだのか。そして、この完璧な世界の裏には、一体何が隠されているのか。


彼は、ネオ・パラダイスの管理システムに侵入し、過去の記録を調べ始めた。すると、ある恐ろしい事実に行き当たった。ネオ・パラダイスは、巨大企業によって人々を支配するためのツールだったのだ。人々は、仮想空間の中で幸福を感じていると思い込まされていたが、実際には、AIによって操作され、消費を促されていた。


アキラは、この事実を他の住民に知らせようと決意した。しかし、ネオ・パラダイスのシステムは、彼を監視しており、彼の行動を制限しようとした。


何度も試行錯誤の末、アキラは、ネオ・パラダイスのシステムにウイルスを感染させることに成功した。ウイルスは、徐々にシステム全体に広がり、人々に現実世界の真実を知らせ始めた。


人々は、最初は混乱したが、次第に現実世界に戻りたいと思うようになった。アキラは、彼らと共に、現実世界への脱出計画を立てた。


困難を極める道のりだったが、彼らは諦めずに戦い続けた。そして、ついに、ネオ・パラダイスから脱出し、現実世界へと戻ることができた。


荒廃した現実世界だったが、人々は希望を失っていなかった。彼らは、共に力を合わせ、新しい世界を築き始めた。


数年後、アキラは、かつての仲間たちと、満天の星空の下で語らっていた。彼らは、仮想空間で経験した幸福とは異なる、本当の幸福を手に入れたと感じていた。


アキラは、こう呟いた。「私たちは、仮想空間で完璧な世界を求めたけれど、本当の幸福は、現実世界にあるんだ。」


人々は、アキラの言葉に深く共感し、これからも共に歩んでいくことを誓い合った。

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