第27話 ショータイム
その次の週も水泳があった。
今回は、ゆかがちゃんとした水着を着て授業を受けていたので、教師は何だか安心している。仮にも人の子、良心の欠片があるのだろう。
一方で——
「なーんだ、つまんないの」
「あまり派手にやりすぎるとダメだからね」
佳乃と歌乃がつまらなさそうに嘆いていた。
確かに、俺もつまらないと思っているけれども、今回はそうすることが出来ない。
授業が終わり、皆が更衣室で着替えを済ませている際の事だった。
「~~ったくまだかよ」
「あいつおせーよな、なにしてんの?」
俺が蓮を経由してクラス全員をこの場に集めたというのに、このグダグダ感。
蓮と圭が愚痴りあう事で各々の鬱憤を晴らし、場を収めている。
まぁ、時間的に急がずとも特に問題はない。
水泳は4限。授業後の着替えの時間と、昼食の時間を加えれば、これからやるレクリエーションの遂行時間としては十分な時間である。
「だりーからもう行こうぜ」
「久々になんか提案するから、面白い事やってくれると思ったんだけどね」
ガチャリ。
彼らが男子たちを外に引き連れようとした時だった。
「悪いな待たせて」
皆がこちらに視線を集める。
やや険悪な雰囲気が漂ってきていた。
「おい、いつまで待たせ……ん?」
文句を言おうとした蓮が俺の横に気付く。
そこには、〝水着姿の篠崎ゆか〟が立っているのだから。
「ぐっ、ぎゃはは!? なにオメーのカノジョ連れてきてんだよ!!」
一同は目を見張る。
そりゃそうだろう、以前の複数個所が破けた水着を着せているのだから。
「この場の男たちに慈善事業でもしようと思って」
ゴクリ。
誰かが生唾を飲んだのだろう。微々たる緊張感を感じ取った。
仮にも蓮も男。これを聞けば『怒り』の二文字も『興奮』に変わるだろう。
そして、俺は高らかに叫んだ。
「まずはチップ五百円だ、こいつの身体触ってもいいぞ」
「「っ⁉」」
一同が目を見張る。
そして、ゆかの後ろ姿、紐で腕を縛り付け彼女が抵抗できない様を見せつけた。
「……意味は、分かるよな?」
「おいおい……冗談じゃないよな……?」
「いや、あいつの眼マジだぞ……」
「女の身体に、触ってもいいだと?」
ここにいる全ては健全な男子高校生。
不健全極まりない行為に憧れ、妄想に耽らない者は誰一人いない。
娯楽の少ないこの田舎ではそういった事が重宝されてしまう。
「ね、ねぇ……あきらくん……これ、なに……?」
ゆかが、鼻息を荒くする一面の男子たちの光景に怯え始めている。
そりゃそうだろう、何の説明も無しにこんな格好で来させたのだから。
もちろん、無理とは言わせない。
「青木くん、持ってきたよな? 君からやりなよ」
「えっ」
「コイツの事可愛いと思うだろ、早く触れって」
「あ、あっ……」
グイッと手首を掴み、そのまま豊かな膨らみにフィットさせた。
「ひゃあっ……!」
とても良い声で鳴いてくれた。
その声に臆したのだろう、青木はすぐさま手を引っ込めた。
「それだけでいいのか? もっと触っていけよ」
「え……それはマズイんじゃ……」
「はぁ、しょうもな……五百円よこしな」
興覚めした俺は、青木から五百円を奪い取る。
時間が惜しいので次を呼んだ。
「じゃあ蓮、お前なら出来るだろ、グワーっと掴んじゃって良いから」
「ったくしゃーねえなぁ……ほらよぉっ!」
「ま、待って……きゃあああっ⁉」
蓮は俺にお金を支払うなり、両手で一気に身体をまさぐった。
期待通りの潔さは、他の者たちの勢いに火を点けた。
「うーん、声を何とかしないとな……俺のタオル使っておくか」
「え……あきらくん、なにす……んっ、んんんん——っ!」
これから何人もの男たちの相手をして貰わないといけないので、タオルで猿轡をしてもらった。もちろん無許可だが、コイツには何しても大丈夫だ。
「他の奴も、お金払ったらすぐにしろ。それと時間が惜しいから、一人5~10秒な」
「んっ、あんっ……んんんんっ——っ!」
企画の粗を探してはその場で対応し、流れるように人を回していった。
主催者側の視線で見ると、自分の言う通りに人や物事が進み、気分が良い。
まるで、人を支配しているような気持ちだ。
どれもこれも、皆が欲求に忠実であってくれるおかげである。
だが、俺の中には一抹の不安が拭いきれないものもあった。
「一周終わったか、じゃあタオル取るからな」
「むぐっ……ぷは、はぁ、はぁっ……」
苦しかったのだろうか、恥ずかしかったのだろうか。
男子の群れから目を逸らし、顔を真っ赤にして必死に肩で息をしている。
そんな表情一つでさえも、彼らの要求を満たしているみたいだ。
「なんか得した気分になったな! お前ら、女の裸を初めて触った気分はどうよ?」
蓮が各々に問いかけるも皆、表立って感想を述べようとはしない。
ただ、圭だけは例外で、参加せずにずっと後ろで眺めていた。
「じゃあ、僕たち教室に帰るね……」
一部の生徒がそう言って、更衣室を出ようとする。
何を言っている、これで満足したのか?
次にするのはもっとすごいことだぞ。
「帰りたいヤツは帰ってもいい、金を払いたくないヤツは帰ってもいい。次に見せてやるのはこうだ!」
そう言うと同時に、ゆかの口元に右手の指を突っ込み、左手は乳房を鷲掴みにした。
「ん、んひゃ……んんっ、ふぅ……っ!」
上手く息が出来ない上に、快感が襲っているのだろう。
仮にも女とはいえ人間だ。必ず弱い部分というものは存在する。
それを探るように、俺は位置をズラしては確かめる。
「あふ、あんっ……あひら……くん……っ」
帰ろうとしていた者たちは足を止め、奇怪な見せ物を見てくれる。
そいつらにサービスをするように、口から手を放して胸に攻める個所を切り替える。
「あっ、は、恥ずかし……やめ、やめて……っ」
ぴり……ぴりっ……。
一瞬、頭に静電気のようなモノが走った。
いつも迷惑なやつだ。こんなことで止めるわけにはいかない。
「我慢するなよ、お前の恥ずかしい姿を見て貰わなくちゃいけないんだから」
「やっ……やだ……見ないで、見な……んっ……」
俺が乙女のシンボルばかりを触ってやると、ふと桜色の声を漏らした。
あまり女の身体をまさぐる経験はないが、ここが彼女の快楽の種なのだろう。
では、ここからが本題になってくる。
「どうしたんだ、早く続きやれよー」
うるさいな……と、頭痛もあってかイライラしてくる。
俺は手を止めて、震えの止まらぬゆかを支えこう告げた。
「次は合計、一万五千円だ。一人千円払えばイケる額だが……圭が参加しないみたいだから、誰かが余分に払ってくれないとな」
わざとらしく、圭に聞こえるように文句を垂れる。
「ごめんねー俺っちは女の裸なんて見慣れてるからさ~」
「めんどくせえ、誰か払えよな。俺はちゃんと払うからな」
蓮がそう言って、我先にと払いに来た。
そして、他の者たちも釣られるようにお金を支払うのだが——
「後千円足りない、誰が出すんだ?」
たかだか千円如きでケチな奴らだ。
皆が他人に押し付ける空気になっていたので、俺は名指しした。
「——青木くん、ダメかな」
「え」
皆が彼の方へと視線を向け始める中、俺は続ける。
「払えないかな、皆の為だと思ってさ」
彼に目を付けたのは、一番後ろめたさを感じている奴だったからだ。
ゆかに対して罪悪感を持つものの、一番葛藤している——その迷いを吹っ切れさせてやるために、俺は青木くんに声を掛けたのだ。
「そ、それは……」
「君には良くしてあげているだろう?」
そう善意を押し付けるも、なかなか折れようとしない。強情な奴め。
「ここで君が断ったら周りに迷惑がかかるんだ。次は君にはしないから、他の人の為だと思ってさ」
そう言うと、皆が青木くんに期待しだした。
こうなった以上、彼の正義は貫けなくなってしまう。
「わ……分かった……」
そう言うなり、彼は財布から千円を取り出し俺の目の前に置いた。
「いい子だ……うっ……」
ずき、ずき……。
未だに頭痛が走り、つい手を止めてしまいそうになる。
だが、やめるわけにはいかない。
「よーし、じゃあ続きをしようか——ほらっ!」
再度、俺はゆかの腰をゆっくりと下ろした。
そのまま、布から浮き出る淫靡な蕾を潰してやる。
「んっ、くっ……はぁっ、んぁっ……」
少し痛かっただろうか。
今度は趣向を変えて、俺は彼女の太腿を左右に開こうと試みた。
「や、やだ、あきらくん……そこは……っ」
「我慢しろ……皆見てるんだ」
恥じらいの湖を固く閉ざしている。
水着で大事な所は隠れているのに、どうして嫌がるのだろうか。
「ひっ、やぁっ……見ないで……」
どうしても抵抗してくるので、俺は両足を恥裂に差し込み、そのまま力の限りに開脚させた。
「「おおおぉぉぉぉ——っ!」」
嫌がる声とは比例して、高まる熱狂の渦。
もう待ちきれないとばかりに、皆が近くまで距離を詰めてくる。
その熱気に浮かされているのか、頭痛も収まってきて
「や……っ、は、恥ずかしい、よ……っ」
サービス精神とばかりに、俺はがっちりと彼女が股を閉じたり暴れないようにホールドしてやった。
「み、ないでっ……ぐすっ、う、うぅっ……」
耐えきれず、嗚咽を漏らししまうゆか。
当然、至極当然、愉快げな表情で、彼女の表情を眺める。
「はは……はははっ……」
ゆかが泣いているにも関わらず、俺は楽しんでいる。
楽しんでいる……ハズなのだが、どうしても心が苦しく感じていて
〜〜ビリビリッ。
『——いやっ、やめて——ッ』
「はっ……」
俺はゆかの抵抗する様子を見つめ、思わず胸の奥がざわめくのを感じた。
彼女の泣き顔に浮かぶ苦痛の色、その必死の抵抗に、ふと自分が何をしているのかが頭の中で鮮明に浮かび上がってきたのだ。
「……なんでこんなことをしてるんだ、俺は……」
俺の心に、抑えきれない後悔のような感情が込み上げてくる。
かすかに震える肩、涙をためてうつむく姿に、今まで感じていたはずの楽しさが一瞬にしてかき消されていく。
「や……だ、やめて……お願い……」
その一言が、まるで深い眠りから覚めるきっかけのように俺の心に響いた。
「……いや、やめるわけにはいかない」
そう思って仕上げの手を何とか繰り出すが
「……いや、出来ない……これ以上したら、俺は……」
思わず力を抜き、彼女から手を離すも既に遅かった。
「なななっ、何やっているんだ貴様らはああぁぁぁぁぁ——ッ!!」
——突如現れた間谷の侵入によって、男子一同は蜘蛛の子を散らすように飛び出ていく。そして、この水着ショーはお開きとなった。
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