第6話 言わなければならない事。

「稀一。」


「なぁに?深宙。」


「あの時は、ごめん。完全に俺の嫉妬だった。俺には稀一が必要だし、稀一がいたほうが100%幸せだ。」


「うん。良かった。」


「えっ。泣くなよ。おい俺が泣かせたみたいだろ。」


「だってぇ。だってやっぱり僕は恵まれていて、けれど必要無いんだとか。親にも産まなければ良かったと言われたし。」


「なんでそんなこと。」


「誰にも必要とされなかった。けど、稀一が必要としてくれた。と思ってた。」


「必要だよ。今も昔も。」


「僕は間違いなんだ。存在自体が。俺は男が好きなんだ。ゲイなんだ。恥なんだ。深宙が好きなんだ。でも封印しなきゃ。きっと迷惑だ。初めて会った時、こんなに可愛い男がいるのかと驚きだった。初恋だ。これ以上好きになれる人は居ない。深宙が幸せならそれで良い。そこに僕は居なくとも。」


「ちょっと待て。えっ。稀一はゲイで、俺が好きで?俺が可愛いって?」


「ゔん。」


「泣くなって、その顔でどうやって、会社戻るんだよ。」


「ゔん。」


「わかったよ。ありがとな。アセクシャルなんだよ、俺は。誰にも言った事無いけどな。」


「アセクシャル?」


「他者に対して性的欲求・恋愛感情を抱かないセクシュアリティ」


「えっ。」


「まぁ個性だ。性欲も恋愛感情もないという個性。だから稀一のことは好きにならない。というかなれない。」


「そっか。ありがとう。」


「えっ?何が?」


「正直に言ってくれて。マイノリティを言ってくれて。僕を振ってくれて。ありがとう。」


「どういたしまして?」


「好きで居てもいいですか?」


「いいけど報われることはないぞ?」


「良いよ。深宙の隣にいれればそれで。」


「それならいいけど。」


 会社に戻ったらそれは、それは騒がれた。バカ正直に稀一が言うもんだから。《深宙に振られました!》って。俺はものすごく怒られたよ。主に女性社員に。こんなに好条件のほうって置くのとか、もう散々。女性は条件でしか男性を見てないのか?やっぱり女性って怖い。

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