傾くは世界か、それとも……

シト

夢は傾き、現実は……

 俺は現実ってしょっちゅう傾いているような気がする。世界そのものが。

 夢みたいな感じで。


 だけど俺がいくら世界が傾いていると言っても、誰も俺の声に耳を傾けない。

 身体は傾いてるくせに。俺の声を無視するのだ。

 世界は傾いたまま、回っている。誰もその不自然な角度に気付かずに。

 俺なんか立っていられずにコケてしまうのに。


 俺の夢もまた、世界が傾いている。


 夢を見ると、世界そのものが傾いている。だから、コケる。すぐに眼前に地面が迫るのだ。

 そしてその瞬間、目が醒める。


 これの繰り返しだ。




 今日もそんな夢の世界に入った。


 俺は自転車を押している。

 学校から帰るためだ。自転車小屋から自転車を出し、校門までの道を歩いている。

 そんな瞬間だ。


 世界は傾いている。

 だから、自転車ごと俺は横に倒れた。

 横を制服姿の誰かが通り過ぎて行く。誰もコケる気配無い。しっかりとした足取りだ。だけども、その顔はどこか恐ろしく、苦しんでいるようにも見える。


 スローモーションの光景の中、俺はそんな姿を大量に見た。


 ガシャン、と大きな音と共に、身体に痛みが走るだろうと目を閉じる。半ば諦めもあるのだ。




 すると、次の瞬間にはベッドの上で身体が跳ね上がっている。痛みは無い。一安心とか思っていても、生々しい感覚が身体に残っている。

 


 そんな風に思っていると、身体がベッドから落ちそうになる。まるで夢の中のように、床が俺に近付くのだ。


 世界が傾いているのだ。


 ほら、俺は間違ってない。

 間違っているのは、お前らだ。

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傾くは世界か、それとも…… シト @shitowisdom310112

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