愛の籠った小説
秋名
告白
肌寒く息が白くなる頃
110番に電話が入った。
「事故ですか?事件ですか?」
「事故です」
中学生くらいの女の子が肝が据わったような声で述べた。
どんな人でも焦りや悲しみが見れ震える声が聞こえる。
その子は静かなどこか不気味な声だった。
「何があったのか内容を教えてください」
応答がない。
「大丈夫ですか?落ち着いて話してください」
少し間が空いて唾を飲む音がした。
「彼女を殺してしまいました。」
「えっ」
2024年12月14日午後6時10分
中学二年生 野崎 桜 を殺害した容疑にかかり同じく中学二年生 長谷川 三琴 が捕まった。
犯行は、包丁で腹部を刺すと言う大胆な犯行。
容疑と言ってもほぼ確定で犯人は長谷川三琴だと刑事は思っていた。
犯人は長谷川三琴、彼女しかいない。
警察は「長谷川三琴が電話をして自分が殺したとはっきり言った」と少し早口で話していたし彼女自身澄んだ目で肝が据わった不気味な声をしている。
彼女の親が言うには前まで明るく誰にでも話しかけて好かれる子と言う印象だったそうだ。
殺害された野崎桜も死ぬ前までに何も変わったことはなかった。
そうなると自殺ではない。
彼女が野崎桜を殺した。
これが1番納得いくしそれしか考えられない。
「こんにちは。長谷川三琴さん」
冷静な顔をした刑事の前にいるのはただ真っ直ぐ前を見て目が合わない少女。
黒髪ロングの制服姿が少し不気味な感じだ。
「はい。」
「では、さっそく取り調べを始めます」
彼女は14歳で罪を犯したら罰せられる年に二ヶ月前になった。
なんて運の悪いとか身勝手なことを思いながら顔に出さないように冷静を保つ。
「貴方は野崎桜さんを殺害しましたか?」
「わかりません」
「彼女とはどのような関係?」
「わかりません」
「では、話したことがある?」
「はい」
「彼女のことはどう思っていましたか?」
「わかりません」
淡々と話が続く長谷川三琴との会話の中に関係性が全く見えない。
刑事が「面倒だな」と訴えてるような顔と深いため息をつくと、ただ真っ直ぐ前を見ていた顔と目があってやっと単語以外を話し出した。
「私は、巻き込まれたんです。」
「巻き込まれた?」
「はい。」
その顔に涙も笑顔もない。
真剣な顔でもなんでもない。
「誰に?」
ただ真顔でこちらを見る。
何かに取り憑かれたような顔。
「彼女は、桜は呪われたんです。それに巻き込まれて事故に遭ってしまったんです。」
刑事から馬鹿にするような顔一ミリも感じられない。ペンとメモ帳を持ち静かに聞いた。
「何に呪われたんですか。」
肝が据わったような目と少し乾き切った顔はその時だけ突然変わり少し楽しそうに話しだした。
「小説です。」
愛の籠った小説 秋名 @akibayoru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。愛の籠った小説の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます