第15話 宝石の美しさを知る者。

「最近いつもそれ飲んでますよね」

暦の上では秋のはずだが、ジリジリと照りつける太陽の憎い九月下旬。

蒲田のファミリーレストランで私が傾けているグラスに、氷雨澤青は視線を送っていた。グラスなんて言えば聞こえはいいが、実際は百均で売ってそうなプラスチックのコップだ。落としても踏んでも壊れそうにない謎のタフネスさが売りのコップに、ジャスミン茶と炭酸水を入れている。禁酒して約四ヶ月、今のところ一番ハイボールに近いと思っている飲み物だ。

グラスを煽り、中身をほとんど飲み干してから、私は右の眉毛を引き上げた。

「気分が大事なんや、気分がな」

「そういうものですか」

不思議そうに私を見つめる青は、未だ飲み物を飲める体には戻っていない。昭和ロボット姿のままだ。

「そんでよ、青」

大人が五、六人座れそうな大きなテーブルに向かい合って座るロボットに、私は手のひらを差し出した。

「例のものはちゃんと持ってきたんやろな」

「はいもちろん」

青はU字の右手をドラム缶の左側に回し、かちゃっと音を立てて腹部を開いた。筒状の体内のほとんどは空洞なので最近は荷物入れとして使っている。

ロボットが自らの腹の中に手を入れている絵面はなかなかに衝撃的だが、慣れとは恐ろしいもので、私にとっても青にとっても、青の体内を荷物入れに使うことは日常と化している。

蛇腹の腕を器用に使い、腹の中から水色のノートと紫色のノート、それから桜色の筆箱を取り出してはテーブルに綺麗に並べて置いた。

「今日は好き嫌いノートの総決算ですからね」

ガラスの瞳の中に星型の光を浮かべ、青はU字の手のひらを合わせていた。

この四ヶ月、私と青はとにかくいろんな所に行った。

最初に行ったパチンコ店では入店を断られてしまったが、その経験を活かして、行く先々に氷雨澤財閥の一声を通してもらうようにした。財閥の鶴の一声効果は絶大で、昭和ロボ姿のままでも大体はどこでも人と同じ体験ができた。

パチンコ店に始まり、競馬場の後は遊園地や海山のレジャー施設、美術館に博物館、映画館では鳴宮麗子原作の虹の窓を観て二人泣いたりした。

温泉、野球観戦、バンジージャンプにスカイダイビング。思いつくところはどこでも行ったし、習い事にも挑戦した。

茶道や華道に剣道柔道、カポエラ、サンボも習ったし、料理教室や絵画教室にも行ってみた。陶芸教室に行った時は、手先が器用な青の作品と、不器用な私の作品が並んで焼き上げられ、ものすごく恥ずかしい思いをした。

 その時作った湯呑みは現在、氷雨澤邸の広い食堂に二つ並べて家宝のように飾られている。「湯呑みなんやから使ったほうがええ」という私に対して青は「記念だから飾っておきたい」と懇願してきた。陶芸教室の体験料金を出したのは青だったので仕方なく並べて飾ることを許したが、湯呑みというには個性的すぎる形の私の作品が、世界的に著名な陶芸家が作った陶器と並んで飾られていて、見るたびに居た堪れない気持ちになる。

私が「もうそろそろ使わん?」と提案するたびに、青は「ダメです」と言って笑う。そんな日々を繰り返した。

そうやってさまざまな経験をするたび、青には「好き嫌いノート」をつけてもらった。

様々なことに挑戦する日々の中で「楽しいな」「素敵だな」と思ったことは水色のノートに、逆に「悲しいな」「嫌だな」と思ったことは紫色のノートに、どんな細かなことでも記してもらった。今日はその総決算をしようと、私の家から一番近い蒲田のファミレスに呼び出したのだ。

編集者美空茜としては、漫画家先生である氷雨澤青にわざわざ出向いてもらうようなことはしないが、今の青は友達だ。友達なら相手の家で話をしたら、次は自分の家の近くに来てもらうのは普通のことだ。まぁ家に行ってる友達なら、同じように家にあげるのが道理のような気がするが、残念ながら私は人を迎え入れるスペースのある家に住んでいない。というわけでこのファミレスを使うのももう三度目になる。

昼ご飯時も終わった午後二時半、駅から少し離れていることもあって店内はがらんとした雰囲気だ。

「まず、どっちから行きましょうか」

右左にそれぞれノートを持った青は、私に向かって聞いてきた。

「それこそ、青の好きな方からに決まっとるやろ」

基本的に私は全ての決断を青に任せている。彼の中に一つでも多くの好き嫌いを作るためだ。

「じゃあ、好きノートから行きますね」

この四ヶ月の甲斐あってか、青は小さな決断ならすぐに下せるようになっていた。

水色のノートを開き、桜色のペンケースから取り出したパステルカラーのマーカーを握る。

「競馬場は思った以上に芝生が綺麗で、そこに映えるお馬さんの筋肉がすごくて圧倒されました」

今日は好き嫌いノートの総決算として、書き綴られた「楽しかったこと」「悲しかったこと」の中から、とくに心に強く残っている事柄にマーカーを引いてくれと頼んでいた。一ページにつき、引いていいマーカーのラインは三本までに決めて、自分の心にある「好きの中の好き」「嫌い中の嫌い」を見極めていくのが目的だ。

一本のラインを引いた青は、ノートに向かって笑っている。

「茜さんが「お尻の良い馬を選ぶんや」って言って、ずっとお尻お尻言ってたのが面白かったなぁ」

そんなに尻尻言ったっけかと思ったが、まぁ私がいいそうな言葉ではあるなと思う。

青はガラスの目を輝かせながら、U字の手を器用に使ってマーカーを引いていく。

三本のラインを引き終わりページを捲ると、次のページに記された記録を見て小さくカチャカチャと手を叩いた。なんだと思ってノートを覗いてみると、睢水亭に行った時の記録が並んでいた。

「茜さん行きつけのお店、すっごく小さくてびっくりしました」

「当たり前や、店がでかいと土地代高こうなるんやから、あんなバカみたいな値段で料理出せへんわ」

「初めて見る食べ物も多くて驚きました。茜さんが食べてたあのハムカツ、食べてみたかったなぁ」

狐色の衣の中にコピー用紙みたいな薄さのハムが入ったハムカツ。一皿九十九円税込は物価高の昨今ではありえない価格設定だと思うが、その価値があるかと問われれば少々疑問の残る品だ。

そんなハムカツを食べてみたいものリストに入れている青は、心底楽しそうにノートにマーカーを引いていく。

時折どの経験にマーカーを引くか迷いこそすれど、青は終始にこにことラインを引いていく。昭和ロボットにこんなことを思うのはおかしいかもしれないが、この四ヶ月で青はよく笑うようになったと思う。

笑うだけじゃなく、怒るようにもなった。

まぁ怒ると言っても可愛いもので、私が他の編集の仕事にヘルプで呼ばれ、二十四時間以上働いた後に青の元に行ったら、大五郎から青に連絡が入っていたようで、寝てないことと食べてないことを少々怒られたのち、氷雨澤邸の広すぎ食堂に連れていかれ、結婚式の披露宴でも食べたことがないような、名前もわからん高級そうな料理をたらふく食べさせられた。

そんなことを思い出していると、なんだか途端に眠気が襲ってきた。

ファミレス一番人気のドリアと二番人気パスタをたらふく食べたことによる血糖値の超上昇に加え、窓から差し込む午後の日差し。私に話しかけるような、ひとりごとのような声で笑いながらノートに線を引いていく銀色ロボット。穏やかで緩やかな時間。

あぁそういえば、この四ヶ月の中で「何にもしない日」も作ったっけ。

とにかくひたすら「何にもしない」に特化した日。氷雨澤邸の緑美しい庭にビーチサイドで使うような寝られる椅子を持ち込んで、ただひたすらぼーっとする。

ぼーっとするのに飽きたら二階から漫画を持ってきて読んで感想を話したりして、腹が減ったら出前を頼んで、ただただダラダラすることを目的とした日。

楽しい一日ではあったけど、私も青も次の日には「やっぱり何かしたいね」と言って笑ったっけ。

あの日吸い込んだ空気は、なんだかとても美味しかったことを覚えている。緑の中とはやはり空気が美味しいものなのだと思っていたが、今蒲田のファミレスで吸い込んでいる空気もあの日と同じように美味しいんだから不思議な話だ。

夢か現か、ぼんやりと青を眺めていると、何やらペンケースの中から新たにボールペンを取り出して、ノートにひたすら文字を書き始めた。

どのくらい眺めていたのか定かではないが、カチリというボールペンのノック音に私の思考は現へと引き戻された。

「見てください」

瞳にキラキラ星マークを繰り返し出しながら、青は私に向かって水色ノートを差し出した。残り少なくなったページに細やかで美しい字が並んでいる。私はノートを受け取って書かれた文字に目を走らせた。

『茜さんが遊園地のメリーゴーランドに「レースじゃねぇから盛り上がらへんな」って言ったことがとても面白かったです』

『バンジージャンプもスカイダイビングも楽しそうだった茜さんが、海で水着になるのを嫌がっていたのがとても可愛かったです』

『美人で完璧そうに見える茜さんに意外と沢山弱点があること。その一つ一つを知るたびに、僕の心は跳ねるように嬉しくなりました』

小学生の読書感想文のような拙い文章で綴られている「好きなこと」。その全てに私がいる。

『茜さんが幸せそうに笑ったのを見て、僕はとても幸せな気持ちになりました。だから僕は、茜さんをもっともっと幸せにしたいと思いました』

ペン習字の先生のような綺麗な字で書かれているこの文章は、これまで経験したことの中から抜粋された「好きなことの中の好きなこと」が書かれているだけ、頭ではちゃんとそう理解している。

だけどこれはあまりにも私のことばかり書きすぎじゃないだろうか。

炭水化物で上がった血糖値とは別に、足の裏から、お腹の奥から、指先が震えるような熱が上がって来るのを感じて、目の前の青を見た。

青は銀色の薄い瞼を緩めて笑っている。

ダメだ、わかってない。

好きなことを煮詰めたノートに私のことばかり書く。それはつまり氷雨澤青が一番好きなのは、他の何でもない「美空茜」だということ。

ただそれを平気で私に見せていることを考えるに、私への気持ちに気がついてはいないのだろう。

いや、待て、冷静になろう。この数ヶ月彼は私以外の人間とあまり関わってこなかったんだ。元々他人と関わることの少なかったこともある。

つまり青のこれは愛や恋だというものではなく、雛鳥の刷り込みみたいなものだ。私という親鳥の後について歩く雛鳥、それが氷雨澤青だ、うん。

これからは私以外の人にも深く関わらせて、社会性を身につけさせて、私以外の好きな人もどんどん増やしてやらなくてはな、うん。

「えっとな、青」

上擦った声に自分で驚きながら、私はノートを青に差し出した。『漫画描きあげて人間に戻ったら、私以外の人間とも積極的に関わっていこうな』そう言おうと思ったんだ。だけど何故か言葉にならなかった。

口をぱくぱくと動かしてはいたが、声が出てきていない。私の様子がおかしいと思ったのだろう、青は体を横に傾けている。

「えっと、な」

私自身どうしたのか、どうしていいのかわからなくて、手のひらをぶんぶんと振った。その運動エネルギーに声が導かれてくるのを期待したが、なんの言葉も出て来ず二の句が繋げない。このままでは変に思われてしまう、そう思った時私のスマートフォンが震えた。画面を見るとジュエル編集長岸辺大五郎からの着信だった。

「ちょっとごめんな」

手のひらで青に挨拶してから、私は電話に出た。

「もしもし茜?」

という大五郎の声に、なんだか少し嫌な予感がした。

「急な話で悪いんだけどねぇ」

明らかに悪いと思っていない声だ。面倒な話をふられることを一瞬で覚悟した。

「新年特大号に氷雨澤さんの作品を掲載することが決まったから、原稿宜しくね♡」

「はぁ!?」

覚悟していたにもかかわらずデカめの声が出てしまった。辺りを一旦見回してから、背を曲げるようにして電話に口を近づける。

「いったいなんでそんな話に」

もちろん大五郎との約束を忘れていたわけではない。「半年後本誌掲載できるような作品を描かせる」という条件のもとこれまで自由にさせてもらってきたことは重々承知している。だが「掲載が決まった」というのは寝耳に水だ。しかも新年特大号?締切まで全く日が無いじゃないか…

「それがねぇ、麗子先生からのご指名なのよ」

大五郎の嬉しさを隠そうとする喋り方に違和感を覚えた。だが今確認しなければならないのは話の内容のほうだ。

麗子先生…まず間違いなく鳴宮麗子のことだろうが、彼女から何かしらの指名を受けることに全くもって心当たりがない。

「五月にさ、麗子先生の原稿の仕上げを氷雨澤さんに頼んだじゃない?あの時先生からだいぶお褒めの言葉もらったでしょ」

お褒めの言葉…?AIが描いたんじゃないかという疑いの言葉だったと記憶しているが。とりあえず甘んじて話を聞いてみる。

「あの一件からね、麗子先生ったら口癖みたいに「私の原稿描いた子はいつデビューするのか」って仰っててねぇ、それでちょっとしたお願いをしたのよ」

そこまで話してから、大五郎は勿体ぶるように一呼吸置いた。その隙間に感じた嫌な予感は、現実となって私の耳に降り注ぐ。

「麗子先生が新作描いてくれたら、そこに合わせて氷雨澤さんの作品も載せますよって。新年特大号は麗子先生の新作が巻頭カラーよ♡」

その言葉に私は手のひらで額を抱えた。

―やられた。大五郎はハナからこれを狙っていたんだ。

青の実力を高く評価しているからか、それとも未だAIだと疑っているからかはわからないが、青の作品を読みたいと願う超大物漫画家。高齢であるが故に連載を持っていない彼女に新作を描かせるため、私たちはダシに使われたのだ。新人育成に半年という猶予を簡単にくれたのも、鳴宮麗子が新作を描いてくれるとなれば十分過ぎるほどお釣りが来るという計算あってのことだったのだ。

だがこれはチャンスでもある。

本来であれば持ち込み漫画を本誌に載せるには、会議に提出した上で他の競合作品に勝たなければならないのだが、幸か不幸か青の作品は本誌掲載が確約されたのだ。

「もうわかってると思うけど」

ふと真面目なトーンになった大五郎の声に耳を傾ける。

「漫画が掲載されるということは読者の目に触れるということ。そしてそれは、良くも悪くも評価を受けるということ」

彼の言いたいことはよくわかった。

「面白い作品を描く人間だと認識してもらえればよし、逆に「この漫画家の作品は読まなくてもいいか」と思われたら、次の作品はページをめくってすらもらえなくなる」

「そういうこと♡」

私の回答に満足したように、大五郎は「それじゃあ宜しくね」とだけ言って電話を切った。

深く息を吐き出していると、向かいに座っている青が私のグラスを掴んでいた。

「あの、とりあえず、ジャスミン茶の炭酸割りでいいですか?」

ため息をついているように見えたのだろう、ドリンクバーに向かおうとする青の腕を少々強引に掴んだ。

「掲載が決まった」

どんな風に伝えるか一瞬迷ったが、こればっかりは回りくどく言っても仕方ない。

掴まれた腕と私の顔を交互に見る青に向かって、もう一度ゆっくりと言葉を放つ。

「青の漫画の、本誌掲載が決まった」

薄い銀膜の瞼をぱちぱちと何度か動かした後、青は身をのけ反らせた。ドラム缶の体が椅子に当たり、ぐわんという大きな音を立てる。

「大丈夫や、落ち着け」

ガラスの目の中にぐるぐるという渦巻きを出している青に、私は強く声をかけた。

「漫画の掲載は新年特大号。原稿の締め切りは十一月末。まだ時間はある」

「十一月末…?全然時間ないですよぉっ」

ガラスの瞳は渦巻きと雫マークを繰り返している。まぁこれは青の言うことのほうが正しい。掲載経験の無い新人漫画家が、なんのアイディアもないところから二ヶ月ちょっとで本誌掲載に耐えうる面白い漫画を描いてこいと言われているのだ。無茶苦茶だ。

だがここで引くわけにいかない。本誌掲載、それも新年特大号という大舞台、表紙には「伝説の漫画家鳴宮麗子の完全新作」という大きな煽りがつけられるだろう。正月休み前に発行される本誌は、これまでジュエル本誌から離れていた読者の目にも多く止まる。そんな中、読み切り作品として青の作品が掲載されるのは、これ以上ないお膳立てと言って差し支えない。

「お前ならやれる」

蛇腹の腕をぐいっと引き、青の目を間近に見つめた。

「大丈夫や。私がついてる」

気弱で繊細だが時折大胆で、言われたことをとにかくやってみる素直さと真面目さを持つ、心の美しい人間、それが氷雨澤青だ。その美しい心を活かす作品さえ作ることができれば絶対にすごい漫画家になれると心の奥底から思っている。

そして、青の心が美しいと知るのは、心の壊れた私だ。

「お前は宝石なんや。自信持っていい」

私の言葉に、青は銀色の瞼をゆっくりと閉じて開く。


大五郎に言われていた通り、青は元々宝石だった。ただ「出来ないこと」ばかり見つめて俯いて自分の美しさも価値も知らずにいただけだ。

宝石はもともと宝石だから、自分が美しいものだと気づくことができない。

宝石が美しいことを知るのは、汚れたものを見続けて心が壊れてしまった人間だけ。

だから心の壊れた人間は、宝石にその美しさを説く。

君は美しい、その美しさで沢山の壊れた心を救うことができるのだ、と。


青は人の心を救うことができる出来る。何より私が保証する。


心の壊れた私はもう何度も青に救われてきた。一緒に漫画を描こうと言われたあの日から、ずっとずっと救われ続けてきた。

負け馬券を放り投げる私を、安い居酒屋でクダを巻く私を、他人を追い詰めて苦しめたことのある私を、青は穏やかに笑って認めてくれた。

楽しいね、面白いね、頑張ったんだね。

そう言って笑ってくれる青が、何度も何度も私の心を救ったんだ。

そうやって心を救われるたび、この人の隣にいるに相応しい人間になろう、この輝きを受け取るに相応しい人間になろうと思った。

そうしていつしか、私の心にもほんの少しは美しさがあると思えるようになっていったんだ。

美しいものを美しいと思える自分にも、ちゃんと価値はあるんだって。

美しいものを見て涙を流せる自分は、きっと大丈夫だって。

美しさに救われた心でまた明日も頑張ろうって、そう思えたんだ。


だから出来る。

宝石の心を持つ青と、心の壊れた私なら、読者の心を救える漫画を作れると、心からそう思っている。


「お前と私で作る漫画で、読者の心を救いに行こうや」

青の美しさを読者に届ける時がきた。

蒲田のファミリーレストランで、私はガラスの瞳を強く見つめていた。

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