「合体しちゃうの」 第3話

天津飯、焼飯、天津焼飯の奥深さを知った健一は、ふとした閃きで、自ら究極の天津焼飯を作り出す挑戦を決意する。頭の中には理想の味のイメージが浮かんでいる。だが、現実にその「合体料理」を作るのは容易ではない。健一はキッチンに立ち、何度も試行錯誤を重ねることにした。


まずは、焼飯をシンプルに、香ばしく炒める。具材は最小限に抑え、あくまでご飯の香りと味わいを引き立てることを重視する。次に、天津飯の命とも言えるふわふわの卵を別に準備。これが「天津」としての存在感を持たせるため、火加減を絶妙に調整し、ふんわりとした食感を作り出した。最後に甘酸っぱいあんをかけるが、ここでひと工夫を加えることにした。


「もし、あんの味にアクセントをつけたらどうだろう?」


健一は試しにあんにほんの少しの酢と香辛料を加え、味に深みを与えた。これにより、甘酸っぱさが際立ち、全体を一層引き締めることができた。そして、完成した「究極の天津焼飯」を前にして、健一は大きく深呼吸し、意を決して一口を口に運ぶ。


その瞬間、彼の口の中に一体感が広がる。香ばしい焼飯、ふわっとした卵、そして甘酸っぱいあんが見事に調和し、それぞれが個性を保ちながらも一つの味を作り上げていた。「これだ…!これこそが、天津飯と焼飯の究極の“合体”だ!」と、健一は心の中で歓喜した。


その後、友人たちを招いて、この「究極の天津焼飯」を試食してもらうことにした。友人たちも驚きの声を上げ、「これ、店で出しても大人気になるよ!」と絶賛する。自分が作り上げた料理がこんなに評価されるとは思ってもいなかった健一は、胸がいっぱいになった。


こうして、天津飯、焼飯、そして天津焼飯をめぐる健一の冒険はひとまず幕を閉じた。しかし、彼の中で新たな探究心が芽生え、今度は他の料理の「合体」を試みようと密かに計画を立て始めるのだった。


最後に健一は小さく笑いながらつぶやいた。「合体しちゃうの、って思った以上に奥が深いな…」。次なる料理の冒険が始まる予感を残し、物語は幕を閉じる。

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合体しちゃうの 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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