第5話 開業

 

 とりあえず、民間のアレード発熱患者を集めている機関に面接に行く事にした。ここは、前世の記憶の高野春子が勤めていた大学から近く、前の勤務先との中間くらいで、知り合いとも距離も近いからそこに決めたのだ。

 面接では意外にもその機関の創設者が、してくれた。前日に電話である程度の経歴を伝えていたからだった。


「履歴書にある、高野春子は私の教え子でした。そして、私の大学で教鞭をふるってくれた」


「失礼ですが、あなたは?」


「私は大学校長だった記憶を持っているんです。うちで雇うのは勿論構わないのですが、良かったら、新しい会社を開いてみてはいかかですか? 出資はしますよ」


 創設者の相沢さんの話では、退院後のカウンセラーが必要で、それを私に任せたいと言うものだった。この意見に私も思うところもあり二つ返事で了承した。その後、すぐにカウンセラーの各資格を取り、3週間後には、アレードの民間機関の一室を借り、カウンセリングを始めた。これがかなり評判になり、この機関に発熱した人が来る人数が増え、約半年後、その近くに、アレード専門【斉藤クリニック】を開業する事となった。オープンニングスタッフは、私と今は友達と付き合いのある、磯貝大樹、元婚約者。勤めていた会社は性格が変わってヤル気が無くなったのか破局後すぐに辞めて転々とバイトしていた。よくある話だ。それと、相沢さんからの紹介で、前田京子(20)、京ちゃんの三人でスタートである。京ちゃんはアレード済みで、前世はアリばかりだったとの事でよく働くと笑いながら勧められた。


 前職でもよく耳にしたアリだったかもと言う人は多数いた。

 魂の輪廻はどの生物からか? と言う研究はよくされていると聞くが、まだ解明はされていないらしい。私が聞いた最小の生物はアリであった。例えばミジンコの記憶があったと言う人には出会った事はない。

 地球に存在する生物の総数はアリが多いので頷ける。


 開業初日は、引き継ぎの患者さんのみだったが、今日以降の患者は前世が人間の記憶が無い人も来る。


「先生ー、新規の患者さんで、料理長でニワトリの記憶が邪魔してニワトリが捌けなく卵もムリになって困ってるらしいのですが、受けますか?」


「うん。わかったー、予約入れていいよー」

 

 今までに無かった、人間以外の記憶の相談もくるので、日々勉強である。


「先生ー、また新規で本人からじゃないんですけどどうしますかー?」


「電話予約? ネットじゃなくて? 今代わる。京ちゃんこっちお願い」



「すいません。お電話代わりました。院長の斉藤です。どういった相談でしょうか?」


 相談内容は、旦那がアレード発症後、全ての覇気が無くなり働かなくなったとの事で、前世に植物とかあるのか? とか、ナマケモノだったのか聞かれた。本当が通院出来るならと予約を受けた。

 前世に植物はおそらく専門家が研究中である。まだ解明はされていない。

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全世界で前世の記憶を取り戻す病気が発生してしまった @mumumumum

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