第11話 ハッピーエンド

 麻美さんと結婚した私は、若松での新しい暮らしのため、若松の波打町にアパートを借りた。

 私はそこから歩いて実家の写真館に通い、麻美さんは本町にある「若松商店連絡会」にバスで通うことになった。

 麻美さんは、若松の商店会の会計業務をすることになったのである。これは、古い町のつながりで得た仕事であった。

 

 若松の銀座商店街は、ほとんどの店のシャッターが下りた、シャッター街になっている。何とかこれを再び活気のある街にしたいと思っているのは、私達だけではなさそうだった。

 

 私と麻美さんが福岡市を離れる時には、みんなが麻美さんの祖父母の家に集まって送別会をしてくれた。

 

 焼きとり屋のおじさんは、「鳥皮のぐるぐる」と「豚バラのねぎま」と「砂ずり」をたくさん焼いて来てくれた。

 麻美さんのおじいちゃんは、「砂ずり」に舌鼓を打っていた。


 「福岡毎日日新聞」のデスクは、

「スクープ写真が撮れたら、真っ先にウチにデータを送ってくれ」

 と言ったが、私は、

「もう、そんな写真を撮ることはありません」

 と言った。

 

 親友の西田君は、奥さんや一歳になったばかりのお嬢ちゃんと一緒に来てくれた。 

 西田君の小さなお嬢ちゃんは、「イノシシ」の小さなぬいぐるみがえらくお気に入りで、片時もそれを離そうとしなかった。


 別れがたい人たちばかりだったが、若松は福岡市から電車でも車でも1時間もあれば行けるところなので、私と麻美さんは、

「また、お会いしましょう」

 と言って、その場を後にした。


 麻美さんは新しい命を宿したが、私たちの周りでは一年以上事故が起こっていないので、私の事故星はかなりはがれ落ちているようである。



  これはフィクションであり、実在する個人や団体とはいっさい関係ありません。

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事故星女(ハッピーエンド編) マッシー @masayasu-kawahara

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