腐臭

憑弥山イタク

腐臭

 何故だか、部屋が臭い。雨水を腐らせたような、酷い匂いである。

 それでも、私は構わない。

 彼はこの匂いを気にしないようだから、私も気にしない。


 何故だか、彼は寡黙だ。口を縫い合わせたかのように、私と口を聞いてくれない。

 それでも、私は構わない。

 彼は私の言葉を否定もしないから、私も彼を否定しない。


 何故だか、彼は動かない。まるで石膏像のように、1歩も動いてはくれない。

 それでも、私は構わない。

 彼はずっと私の傍に居てくれるから、私も家から外へ出ない。


 何故なら、彼は死んでいる。私の作った毒味の料理を満足気に平らげ、気付けば瞼を開いて死んでいた。

 死んでても、私は構わない。

 私の愛を、私の息を、1秒も無駄にせずに浴び続けてくれるのは、死体になった彼だけだから。

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腐臭 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama

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