第3話 お父さんも〝おんなじ〟
それから何カ月かたった ある夜の事です
かっちゃんはトイレに行きたくて目をさましました。トイレを済ませて戻ろうとすると、キッチンにあかりがついています。
そ~っとキッチンに近づいて中をのぞいてみると、お父さんが一人で椅子にすわって写真を見ています。
かっちゃんはお部屋にもどろうとしました。するとお父さんが振り返って
「かっちゃんかい?」といいました。ちょっと声がへんです。近づいてみるとお父さんは泣いていました。
「しんぱいしなくていいよ。お父さんはだいじょうぶだよ。こんやは写真を見ているうちに、おじいちゃんを思い出してしまって、ちょっとだけさみしくなっちゃったんだよ」
お父さんはかっちゃんにそう言って、おじいちゃんと同じようにかっちゃんをおひざに乗せてくれました。
かっちゃんはお父さんのひざの上で足をブラブラさせながら、両方の手のひらを出して、指だけきゅっとまげて、にゃんこの手をしてお父さんにいいました。
「お父さん、このつめはおじいちゃんなんだよ。ほら、おじいちゃんのつめでしょ。これ、お父さんも〝おんなじ〟だよ」
お父さんはかっちゃんのつめを見て
「ほんとうだ、おじいちゃんのつめだ」と言うと、自分の手を出してにゃんこの手をしてみました。そこには、おじいちゃんとかっちゃんと〝おんなじ〟ほそながいつめがならんでいました。
お父さんは大きなにゃんこの手でかっちゃんのにゃんこの手をつつんで、
「ほんとだ、ほんとだね」と言って、また泣いてます。
でも、かっちゃんにはお父さんのなみだがさっきとはちがうってわかってるから、もうしんぱいしません。
「そうだよね、おじいちゃん」ってそっと心の中で、大きなお父さんのつめとそこからちょこっと顔を出してるかっちゃんのつめにおはなししました。
すると、大きなおじいちゃんのにゃんこの手があらわれて、かっちゃんの手をにぎっているお父さんの手ごとぜ~んぶをすっぽりつつんでくれました。
おじいちゃんと〝おんなじ〟 真留女 @matome_05
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