万能犬みさき(Van- no-)の手紙
たかしくんMKⅡ
第1話
突然こんにちは、私みさき、元が大型犬で今は吸血鬼。おまえ何言ってんだ?って
思ったあなた、正常です。
犬の頃の意識って、殆どないんですね、犬ですから・・でもなんかぼーっとして、でもご主人様に甘えてて、でもご主人様死んじゃったのですね。何かいっぱい血を流して・・・その時あの血を何とかしてご主人を死なせたくないって思ったんですね。悲しかった。そしてしばらくして私も死んだみたいです。犬の寿命って短いですから。
で、現生、一応人間の形に生まれましたが、ぼんやりと犬の記憶有の、なんとなく吸血鬼・・・え、それって最悪役の妖パターンじゃないですか。でも噛みついたことないし、犬の時と同じ気持ちで何か人様のお役に立ちたいなってずっと思っていたんですけど、思ったようには中々ならないですね。
多分、時代的には昭和ってやつの終わり頃だったと思いますが、当時高校出て卒業したら看護師さんの手伝いになれるって言う制度?がありまして、私、準看護師さんになったんですよ。当時はナースさんとか呼ばれてましたっけ。そして、お医者の先生や先輩の正看護師さんの方たちと地方の小さな病院でお勤め。まぁ人の役に立つと、本性吸血鬼との兼ね合いで仕事が決まったって、良いのでしょうかねぇ。
前世のご主人様が亡くなった時の印象で、多分吸血鬼などという妖成分を持って現生に生まれ変わったのでしょうが、人に噛みついたことなんで一度もないですよ。と言うか初めてペロってしたのは実習で自分の手に注射の練習をしようとして、血管を刺してしまったときですかね。いやー。甘美・・これはイケナイやつだ!!って即封印しました。実はそれまでは自分が吸血鬼だっていう自覚は殆ど無かったんですがね。
そうこうして、何年か病院でお手伝いをしていると、ある日、救急で男の方が運ばれてきました。なんとなく前世のご主人様が亡くなった時のことが思い出されて緊張して、いろんな道具を載せたワゴンみたいなのを持って近くで待機してますと、こっちにぷぁーっと出血が飛んできて、腕に掛ったのを思わずペロってし・・あれ、味が少し違う。あ。あれって、えーっとそうだ、何とかマイナスとか言うやつでは!あ、先輩と先生が輸血の用意をしようとしてます!あ、違う!違う!それは同じ血液型だけどそれ入れちゃ患者さん悪くなってしまうよ!いきなり叫んで先生に飛びついたんですが、周りは何事かって私を止めようとしました。が、マイナス!!って叫んだのを聞いた別の先輩が先生に何か話掛けて、急いで何かの検査道具を持ってきました。言う所の一刻を争う場面みたいでしたが、すぐに別の輸血が用意され、しばらくして患者さんは良いほうに向かったみたいでした。これって人様の役に立てたのかなぁ。
でも、私の人生で本当に人様のお役に立てたっていうのはこれくらい、本当に普通に過ごして。でもなぜ今になってこんなことを書いているかというともう私歳ですから、ちなみに吸血鬼が不老不死なんて、自分には適用されなかったみたい。で、こんな夢物語?法螺話?が普通に文字になる、令和の時代だからですね。
ではさようなら。
みさきより。
万能犬みさき(Van- no-)の手紙 たかしくんMKⅡ @takashi_yoneda_28
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