第8話 ガイアの章:セキダイコ編
「ガイア、そっちに逃げたからよろしく!」
「はいよっ!」
ザクッ!
グギャーー!
ガイアの章:セキダイコ編
ナトリ:ギルド内
「ロキー!討伐完了してきたよー!」
「ん、ご苦労。報酬はそこに置いてある」
「はいっ、半分こ」
ルーナとパーティーを組んでいくつかの依頼を順調にこなしている。
(無謀な依頼には手を出していないってのもあるが)
街での評価もあがっているようでギルド内でも一目置かれるようになってきた。
依頼の報告を終えて宿に戻った。
「ねぇ、ガイア。あんたは将来なにになりたいの?」
「ん?楽して暮らしたい」
「あははっ、なにそれ」
「そういうルーナは将来なにになりたいんだ?」
「私は国一番の魔道師!」
「ルーナなら成れるかもな」
「えへへ、私天才ですから」
「そもそも、魔法って誰でも使えるものなのか?」
「んー、素質は必要だけど魔法の書を読んで契約を結んだりして・・・」
「あ、説明が大変そうだからそこまでで十分」
僕はずっとガイアさんとして生き続けるのか?
この先どうなるんだろう。
「なぁ、ルーナ。死者をよみがえらせる魔法ってあるのか?」
「急にどうしたの、誰か生き返らせたい人でも?」
「いや、魔法で毒を治したりできるから、そういう事もできるのかなぁと思っただけだ」
「うーん、もしかすると古代の書物に書いてるかもね。ただ、魂を呼び戻せたとしても、それを入れる身体がないとダメかもよ」
「そうか・・・」
僕の身体はどうなったのだろう。
ゴブリに殺されたあと、ゴブリになった時に身体は周りにはなかった。
ということは、メムロには戻れないという事なのか。
これ以上考えていても答えは出ない。
眠りにつくことにした。
翌朝:ギルド内
「ロキ、おっはよー!何か面白そうな依頼入った?」
険しい顔をしたロキがルーナの声に反応して手にしていた紙をカウンターの下へと隠した。
「おはよう、ルーナ。新しく入った依頼はそこに貼ってあるよ」
しかしルーナは依頼の貼ってある壁には目もくれずカウンターへ向った。
「今隠したのってどんな依頼?」
ルーナも気がついていたようだ。
「い、いや。なにもないが?」
珍しくロキが動揺している。
・・・
ルーナがジーッとロキを疑いの目で見つめる。
・・・
「はぁ、見せてやるがおまえにはまだ無理な依頼だ」
ロキが諦めた表情をしながら依頼の紙をカウンターに置いた。
すばやくルーナが取り上げて読んでいる。
「なーんだ、お宝回収の依頼じゃない。討伐の依頼なら大変だけど、お宝探しなら私達でも十分行けるじゃない」
「いや、ただのお宝回収ならおまえ達でも大丈夫だが、問題は場所だ」
「場所?洞窟とかじゃないの?」
「うむ。セキダイコだ。名前ぐらいは聞いたことはあるだろ」
「もっちろーん・・・知らない。ガイア知ってる?」
セキダイコ!?
本で読んだことがある。
「場所は知らないが噂だけなら。難攻不落とも称される砦でモンスターはもちろん、トラップも多くお宝回収どころか無事に生還するのも困難だとか」
「ガイアの方がよく知っているようだな。そういうことだ、おまえらにはまだ早い」
しかしルーナの目はキラキラしている。
「なんだか楽しそうな場所じゃない。私達ならできないことはないよ!」
「いや、ルーナ。ロキさんの言うとおりオレたちにはまだ早い」
ロキさんも頷いている。
今の実力では興味本位で行くような場所ではない。
「ちょーっとだけでも見に行くってのはダメ?」
ルーナが食い下がる。
「やめとけ、ルーナ」
僕は制止したが、こうなった時のルーナには無駄のようだ。
ロキさんもそれを理解している。
だから見せたくなかったのだろう。
「はぁ、仕方が無い。しかし深入りするなよ。危険と感じる前に必ず帰って来い。それが条件だ」
「もちろん!私もまだ死にたくないからね」
ロキさんがカウンターに地図を広げてくれた。
せ、世界はこんなに広かったのか。
端の方は描かれていなかったが、この大地の広さを改めて知った。
ロキさんは地図の一箇所を指でトントンと叩いた。
「ここがセキダイコの場所だ。道中は対したこと無いが・・・まぁ近づけば分かる。分からないまま入り口に近づけた時も引き返せ」
「なんの事かわからないけど、行けば分かるってことね」
確かにロキさんの言っている意味はわからなかった。
が、のちにその意味を知ることになる。
出発の準備を終えた僕達はセキダイコへ向った。
街から距離はあったが確かに道中に出てきたモンスターは対したことなかった。
「なーんだ、楽勝じゃない。ロキも大げさだねぇ」
ルーナは楽観的にそう話す。
前方になにやら遺跡のようなものが見え出した。
「あ、あれじゃない?」
ルーナも見つけたみたいで指をさしていた。
近づいて行くと景色が変わったわけではないが、急に空気が変わった気がした。
「ルーナ、何かおかしくないか?」
「ロキが言ってた行けば分かるってこういうことなのね」
木々が生い茂って影があるわけでも、陽が落ちたわけでもないが、空気がひんやりとしだした。
かといって、冷気が漂っているわけでもない。
確かに妙な場所だ。
「き、気合いれてきますか」
さすがのルーナも慎重になっているようだ。
遺跡の中に入ると広い部屋があった。
「見た感じ何もない広間って感じだね」
ルーナがそう言って部屋に一歩、二歩と踏み出した途端
バチッ!
ルーナの身体が後ろにはじけ飛んだ。
「ルーナ!大丈夫か!」
「ん、大丈夫。でもなんかビリッと来た」
どういう事だ?
見た感じ入り口の床と同じ普通の床に見える。
試しに足元にあった石をルーナが踏んだ床へ向って投げ込んでみた。
バチッ!
音と共に石が砕け散った。
「な、なにあれ?」
ルーナが驚いた顔をしている。
僕も同じような顔をしているだろう。
「目には見えないけど、何かのトラップが仕掛けられているってことだろう」
「ビリッと来たから電撃系のトラップっぽいね」
トラップの正体は分かったが、これだと先に進めない。
左側の床に向って石を投げてみる。
バチッ!
やはり石は砕け散った。
右側にも投げてみる。
・・・
なにも起こらない。
「と、とりあえず右側の床は大丈夫そう・・・かな?ガイア、踏んでみて」
「なんでオレが!」
「だって、ほら、もうビリッとくるのは嫌だから」
僕も嫌である。
しかし、ルーナは絶対に譲らないだろう。
恐る恐る右の床に足を伸ばしてみる。
ペタッ。
なにも起こらなかった。
「大丈夫?我慢してない?」
心配そうにルーナが聞いてくる。
「大丈夫だ。でもどうする、石を投げながら進むか?」
「うーん、確実だろうけどそれだと時間がかかり過ぎるわね」
さて、本当にどうしたものやら。
「うーん・・・」
ルーナはまだ考え込んでいるようだ。
「考えていても仕方が無い、とりあえず石を投げながら進んでみるか」
僕がそう提案してルーナと一緒に一歩ずつ進んでいった。
右へ、左へウロウロ。
前へ、後ろへウロウロ、ウロウロ。
「はー、やっと半分ぐらいまで来たわね」
ルーナがそういって真ん中の床に足を乗せた時。
カチッ!
何かのスイッチが入ったような音が聞こえると、
ブーゥン!
部屋の端の上部から何かが中央に向って迫ってくるのが見えた。
あれはペンデュラムか!
「危ない!ルーナ!」
そう言って、ルーナを突き飛ばした。
ザクッ!
「キャーッ!ガイアッ!」
ルーナの悲痛な叫び声と真っ青な顔が見えた。
ペンデュラムの鋭い刃が僕の身体を貫いた。
僕はここで死んでしまうようだ。
さすがに次の人生はもうない・・・か。
・・・
ペチペチッ。
何か頬を叩いている感覚を身体に感じる。
目をゆっくりと開けると空が見えた。
あ、あれ?
僕は今どういう状態なんだ?
『おい、ボウズ。そんなところで寝てると風邪引くぞ』
何か声が聞こえてくる。
声の方に顔を傾けるとゴブリの姿が見えた。
ゴブリッ!
慌てて起き上がり手に持っていた木刀をゴブリの方に向けた。
『ちょ、ちょっと待て待て、落ち着けよ。うちのボスから人間を守るように言われてるから手を出さないって・・・って言っても通じないか』
いや、このゴブリが何を言っているのかが分かる。
『通じるよ。守ってくれていたんだね。ありがとう』
僕はゴブリにお礼を言った。
『なんだ、通じるなら早く言えよ。って言葉がわかるなんて珍しい人間だなぁ』
『まぁいいか、陽が暮れる前に村に帰れよー』
そう言ってゴブリは去っていった。
一体どうなってるんだ?
続・メムロの章へつづく
世界の秩序は僕次第 虎鶫 @tsugumiosk
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