王女サマと従者ごっこ~風呂場で同級生の男の子に体を洗わせる~

楠本恵士

子供の頃の思い出の【ごっこ】

 午後三時ごろ山並みに日が沈む夕焼け空──清流のせせらぎが聞こえる温泉旅館の、部屋の窓辺に立った銀華は宿の近くを流れる清流を眺めながら言った。


「よくこんな、秘湯の宿泊予約ができたね」

「ネットで探していたら、改装工事中で格安料金だったんだ……宿泊客は奇跡的に銀華とオレの二人だけ」


 そう言って遊馬はバックの中から、入浴タオルを取り出した。

 銀華と遊馬は卒業旅行で、高校生が二人だけでも宿泊できる温泉旅館を探して、この宿に巡り合った。

「駅から送迎バスも出ているし、高校生の男女を泊めてくれる近場の宿なんて、なかなか無いから」

「だね……元々は鉱夫の相手をする娼婦宿だったんでしょう……おもむきある~ぅ」


 銀華と遊馬は、さっそく男女別々の温泉に入って、汗を流してさっぱりして部屋に戻った。

 浴衣姿で、部屋に戻ると食事には夕食が用意されていた。

「おいしそうな料理……鮎の塩焼きもある」

 隣の和室部屋を覗くと、布団が並べて敷かれていた。

 それを見て、少し顔を赤らめる銀華と遊馬。

「宿の人が気を利かせてくれたんだ……変な意味で」

「エッチなコトをする恋人同士だと思われたのかな?」


 苦笑する浴衣の銀華と遊馬。

 食事をしながら、遊馬が言った。

「この宿には、かけ流しの露天風呂があるんだって……混浴の洗い場もあるらしい」

「へぇ~珍しいね、混浴の露天風呂なんて」


 銀華が、少し頬を赤らめながら言った。

「そう言えば、子どもの頃……【王女サマと従者ごっこ】とか【王子と奴隷女ごっこ】とか、やって遊んだね……あの時のキーワード覚えている? その言葉を言ったら〝ごっこ〟スタートの」

「もう、王子と奴隷女ごっこの、キーワードなんて覚えていないよ」

「あたしは、覚えているよ【王女サマと従者ごっこ】のキーワード……あの時は言葉の意味も知らずに、使っていたけれど」

 そう言って銀華は、意味ありな笑みを浮かべた。


  ◇◇◇◇◇◇ 


 深夜──遊馬は、横に寝ていた銀華に揺すり起こされた。

 眠そうな目をこすりながら、遊馬が言った。

「なんだよ、こんな時間に……深夜の二時じゃないか」

「【王女サマと従者ごっこ】の開始だよ」

 銀華が、ごっこのキーワードを口にする。


「そ、その言葉は」

「これを聞いたら、王女サマが解除するまで、ごっこが続くんだったよね……王女サマが命じます一緒に混浴の露天風呂に入りなさい」

「これから?」

「そう、これから……返事は?」

「はい、王女サマ」


  ◇◇◇◇◇◇


 露天風呂の脱衣場の窓から、夜空に浮かぶ月が見えた。

 チョロチョロとかけ流しの温泉の音が聞こえる。

 なかなか、脱衣したがらない遊馬に、浴衣を脱いで下着の縁に指を引っ掛けた銀華が言った。

「脱がないの? 風呂場に来て? 王女サマの命令よ脱いで……見せなさい」

「わかったよ、脱ぐよ……王女サマ」


 裸になった銀華と遊馬が露天風呂と仕切られた洗い場に入る。

「うわぁ、ガラス張りの仕切りで温泉に入っているところが、丸見えだね」


 銀華が洗い場の風呂イスに腰かけると、王女気分で命令する。

「では、下僕げぼく……王女サマの背中を洗いなさい、お湯をかけて泡立てたスポンジで丹念に……顔は自分で洗うから」

 遊馬は、銀華が持参したスポンジを泡立てると銀華の背中を洗いはじめた。

 泡だらけになっていく銀華の裸体。

「遊馬、こんな風に背中を洗われるのは子供の時の以来だね……ふぅ、気持ちいい腕も洗ってね、肩から指先まで……脇の下とか肘も丁寧ていねいに」


 遊馬は、王女サマに命じられるままに腕を洗う。

「次は脚を大腿から、足の指の間も丁寧に、膝の裏側も優しく洗ってね」

 言われるままに遊馬は、銀華が少し持ち上げた脚を、膝の上に乗せて泡スポンジを這わせる。

「足の裏少しくすぐったい……はふぅ、脇腹とか首筋も洗ってね」

 銀華の要求は段々とエスカレートしていく。

「じゃあ、今度は……背中側から抱きついて、胸とか腹を泡立てたスポンジで優しく撫で回すように洗いなさい」


「自分で洗えよ」

「やりなさい……王女サマの命令よ」

 遊馬は、背後から抱きつくと銀華の胸や腹をスポンジで撫で回す。

「あふッ……気持ちいぃ……じゃあ、次はねぇ」


 銀華は風呂イスから立ち上がる。

「王女のお尻を洗いなさい」

「し、尻?」

「洗いなさい……王女の命令よ」

 遊馬は、銀華のお尻の山を洗う。

「お尻を洗ってもらうのも気持ちいいわね……じゃあ、次はねぇ」

「まだ、続けるのか」


 そして、遊馬の方に向き直った銀華が、自分の股間を指差して言った。

「王女の一番恥ずかしい部分を洗いなさい」

「そんな部分も洗うのか! 自分で洗え!」

「王女の命令よ、拒否できないわよ……洗い方は説明してあげるから」


 銀華は、持参したボディソープを遊馬に手渡して言った。

「一番敏感な部分は、その弱酸性のボディソープで洗って」

「同じボディソープじゃダメなのか?」


「女性のデリケートゾーンは、体の他のパーツと同じように洗うと刺激が強すぎるから、その部分だけは違う洗浄剤を使って優しくデリケートに洗うのよ」

「知らなかった」


 遊馬は銀華から説明されながら、女性の愛の部分に温めのお湯をかける。

 デリケートゾーンを洗い終わって、遊馬が言った。

「雑菌が入らないように、基本的に前から後ろに洗うのか……勉強になった」

 下僕に体を洗わせた銀華が言った。

「気持ち良かった……全身を洗ったから、王女サマごっこは、これで終わり」


 今度は遊馬が言った。

「キーワードを思い出した、部屋にもどったら優しい【王子サマと奴隷女ごっこ】をやらないか」


 遊馬の言葉に銀華は、顔を赤らめてうなづいた。


   ~おわり~

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