第12話 新装備と初依頼
「メモリア~来たよ。私の装備出来てる?」
相変わらず廃墟のような家の扉を開けて入る。
いつ壊れてもおかしくはない見た目だが大丈夫なのだろうか。
「あれ?メモリア?」
店に入るがメモリアが見当たらない。いつも同じ場所で寝ているのだが今日は店の奥にいるのだろう。
なんて思っていたら店の奥から金属を叩くような音がしていることに今更ながら気づいた。
「奥にいるの?反応ないから入るよ」
今日は休みの日だがこれから冒険者ギルドで依頼を受けようと考えていたのであまり待っていられないのだ。
作業中に悪いけれど入らせてもらう。
「メモリ――」
中に入るとメモリアが真剣な顔で剣を打っているのが見えた。
面倒くさがりでいつも眠たそうな顔をしているメモリアがあんな顔をしているのが衝撃で見入ってしまった。
「ふぅ……うん!出来たっ!……て、ぎゃーー誰かいる!」
待っていられないとか言っておきながら最後まで見てしまった。
「ごめん、見てた」
「むぅ……あんまり仕事姿は見てほしくなかったなぁ」
「凄かったよ?」
「そう?まあ、ありがとう……なのかな?」
照れているメモリアも初めて見た気がする。
「はっ!そんなことより見てよ!マヤの剣が完成したんだよ」
「さっき作ってたやつ?」
「うん、過去最高の傑作になったかも」
「おおっ!」
これはかなり期待するね。
今までは魔力剣の練習が出来なかったけれどこれで出来るようになるかな。
「ほら!これだよ」
渡された剣は若干赤みのある綺麗な剣だ。
手に持つとかなりしっくりとくる。
「なんかまるで私の一部みたいにしっくりくるね」
「当然だよ。持ち主に合わせて作っているんだもん」
「え、私の手のサイズって測ったっけ?」
「私の観察眼は完璧だから」
前にも言っていたけれどその観察眼というのはスキルなのだろうか。
「この剣、魔力を込めても大丈夫?」
「大丈夫!……と言いたいところなんだけどマヤほどの魔力量だと全力は危ういかも」
「ほどほどなら大丈夫なんだね!」
私は借りていた長剣をメモリアに返してから新しい剣を装備する。
防具も出来ているらしく、しっかりと装備した。
「……ねえ、マヤ」
「なに?」
「もう我慢できないから聞いちゃうんだけど……なにその凄そうな剣!それあるなら私の剣なんていらないじゃん」
どうやら聖剣が気になっていたらしい。
「これは聖剣、お兄ちゃんに貰った」
「聖剣!?貰った!?詳しく教えて」
「えっと……」
事細かに今までの事を話した。
「おお~これが聖剣。あ~触ってみたい」
「なんか選ばれし者じゃないと触れる事すら出来ないみたい」
「マヤは持つだけなら許されているんでしょ?いいなぁ」
しばらくの間、メモリアの為に聖剣を持ち上げたりして見せていたんだけれど聖剣ってかなり重いから腕がきつかった。
「じゃあ、冒険者ギルド行くから」
「また聖剣見せてね~」
メモリアと別れて冒険者ギルドへと向かう。
今の時間はお昼、かなりの時間を使ってしまった。
「さて、なにか依頼はあるかな?」
冒険者ギルドについてすぐに掲示板へと向かう。
初めて来たときは人が多すぎて見る事すら出来なかったのに今はポツポツといるだけ。あれは何だったんだろうか。
「さて、討伐系……討伐系……」
掲示板に貼ってある依頼書は殆どが絵で出来ている。文字は報酬金額くらいだ。
つい最近の私みたいに字が読めない人でも安心だね。
「レッサーウルフ、カラフルラビット……」
なんか物足りなさそうな魔物しかいない。普通の動物と変わりないくらいの強さだよね。
一番強そうな魔物でゴブリンだし早めに冒険者ランク上げたいね。
「すいません。このレッサーウルフの討伐依頼を受けたいんですけど」
早速、受付に依頼書を持っていく。
「レッサーウルフ1体の討伐ですね。とても弱い魔物ですが群れで現れる可能性があるのでお気をつけてください」
レッサーウルフがいる場所も聞いてから私は討伐へと向かった。
どうやら近くの森にいるらしい。群れを見つけたらすぐに逃げろとも言われた。
「よし、ついた」
特に何もなく森に到着した。
森は視界が悪いから不意打ちに気をつけないと――
「あ、また木の実発見」
不意打ちに気をつけないとなんて思って警戒していたのに魔物どころか動物も見当たらない。とても平和な森だった。
暇すぎてお腹が空いてきたので絶賛木の実を探し回っている最中である。
「んー、これ甘くて美味しいんだよね」
ムシャムシャと木の実を食べていると戦闘音が聞こえてきた。
興味本位で近づいてみると男女の二人組がゴブリンの群れと戦っているのが見えた。
「ナツメ!残り魔力は?」
「ごめん、もう限界に近い」
「く、囲まれてて逃げる事も出来ねぇ」
見るからに危険そうだが魔物の横取りはダメと言われている為、助けて良いのか分からない。
どうしようかと迷っていたら古びた剣を持っていたゴブリンの攻撃が女の背中に当たりズバッと血が飛び散る。
「う、そ……」
「ナツメ!」
男の方が助けに近寄ろうする……がその隙をつかれて横に迫っていたゴブリンに気づくのが遅れた。
「しまっ……」
ゴブリンの棍棒が当たる寸前になんとか私の蹴りが間に合って助けることが出来た。
「ごめん、迷ってる場合じゃ無かったね」
メモリアお手製の頑丈な靴で蹴られたゴブリンはそれだけで絶命していた。
《身体強化》をしていたおかげという可能性もある。
「このゴブリン倒しちゃって良い?横取りとか後で言わない?」
男に近づいて話をする。
周りのゴブリンは様子を見ているのか動かない。
「あ、ああ……頼む、助けてくれ」
「了解!」
倒して良いと許可を貰ったので倒してしまおう。
今まで暇で暇で仕方がなかった。この二人には悪いけどちょっとワクワクしてる。
「さて、まずは……」
団長の動きを試してみようか。
素早く、しなやかに見惚れるような剣技を――
「《剣の舞》」
団長のクラス……剣姫、そのスキルである《剣の舞》の動きを真似してみる。
ゴブリンの攻撃を避け、切る。流れ作業のように動きが途切れる事なくまるで踊るように攻撃をする。
「うーん、これじゃあ団長に笑われちゃうね」
やはり真似は真似、私の実力では素人丸出しの剣技になってしまった。
所々で攻撃を避けるのではなく受け止めちゃって動きが途切れる。素早くないしなんかダサい。
「ってゴブリンいないし!」
実戦で新しい魔法が出来るかも試したかったのにゴブリンは殆どが倒されて、残りは逃げてしまっていた。
そういえばあの二人は大丈夫だろうか。
「うう……」
「ナツメ!しっかりしろ!」
バッサリと切られた背中が痛々しく血を流し続けている。これは重症だ。
男がポーションをかけて治そうとしているが傷が深いからかポーションが安物なのか治りそうもない。
このままでは失血死してしまうだろう。
こうなったのも私の責任……ではないけど助けるか迷ってたお詫びになんとかしてあげたい。
「師匠の回復魔法……出来るかな?」
この数日、何度も間近で見てきた回復魔法。何回か試した時は失敗した、出来るか可能性は低い。
「ここで成功しなきゃ師匠の弟子とは言えないね」
私は女の方に近づいて背中に手を向ける。
「あ、の……」
「痛いだろうけど我慢してリラックスしてね〜」
声にならないような掠れた声をあげている。今にも死にそうだ。
「魔力を込める……ぐぬぬぬ」
光魔法とは勝手が違う。身体の傷を癒すイメージ。
魔力を込めて魔法を唱える。
「成功しろー!《フルヒール》」
ピカーっと手元が光り、痛々しい背中の傷が徐々に塞がっていく。
その光は傷が塞がる前に途中で終わってしまったが血は止まったしこれで命の危機は無くなっただろう。
魔法としては失敗、でも命は助けられた。
「あれ……?痛みが」
「ナツメー!」
男が女に抱きついて泣きあっている。
「魔力の込め方が違った?イメージが弱かった?」
その間、私は先程の魔法についての反省をしているのであった。
次の更新予定
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勇者の妹は待ちきれない 千矢 @Kaochihosi
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