第6話(幕間)
翌日、教室に入るとすぐに、三月がとてつもなく注目を浴びているのが目に入った。三月は美人なので、何もせずとも人目を引くところがあるのだが、今日は昨日の告白の話が既に学校中に出回っていることもある。今日の人だかりはいつもの比ではなかった。
しかし、三月は今朝も相変わらずのクールさで、クラスメイトが話しかけてきても特に表情を変えることもないようだ。彼らからの不躾とも思える問いかけも、淡々と受け流している。
人だかりから少し離れて、彼女のそっけない態度にがっかりしたような男子たちの声がかすかに聞こえる。
「さすが三月さん、つれないな」
「でも、そこがいいんだよな」
どうやらそっけない彼女の態度も「三月らしい」と受け取られているらしい。三月が人気を獲得している理由も、ここにきて改めて分かる気がする。普段ほとんど誰にも心を許さないからこそ、たまに見える仕草や表情に誰もが惹かれてしまうのだろう……そして俺も、その一人になりつつあることを自覚しているのだが。
そんな中で面倒なことに、俺の席は三月の隣だった。いつも通り自分の席に座ろうとすると、クラスメイトがチラチラとこちらを見ては、冷やかすような表情を浮かべてくる。
「おい、下鶴、三月さんとどうやって付き合えたんだよ」
「まさか、無理矢理告白でもしたんじゃないよな……?」
からかうように聞いてくる男子たちに、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「いや、そんなことはないって。俺も詳しいことはよく分からないんだけどさ……」
本人の目の前で言うのもなんだが、なんとなく始まった関係であることが事実なのは、三月自身も認めるところだ。しかしそのことを正直に答えると、彼らはさらにうらやましそうな表情をして俺を見つめる。
「そうは言っても、結局三月さんが自分で選んだわけだろ?」
「やっぱりお前、何か隠れた魅力があるんじゃないの?」
「いや、ないない……」
「そんなことはないの」
適当に笑ってごまかそうとしたのもつかの間、なんと三月が会話に割り込んできた。
しまった、唐突に始まった関係だとはいえ、三月は彼女なのだ。彼氏が自分で魅力を否定することを言うなんて、そのまま彼女を否定することに……
「蛍と私の愛情は深まっているわ。まず昨日は体を密着させたし、手も繋いだし、それに次のデートの約束まで綿密に決めたの。今日は手を繋いで歩くのはもちろん、道順は」
「いやちょっと待て!!!!!」
先ほどのそっけない三月の姿から放たれたとは思えない言葉の数々に、集まっていた人々は全員ぽかんと口を開けている。
呆気にとられるのも無理はないだろう。これはますます面倒なことになりそうだ……。
突然告白してきたクール美少女、その恋愛観が終わっている。 ねむいきなこもち @nemui_nemnem
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