エッセイを書きましょう2024『南賞』の発表

南 コウ

講評

『うさぎ暮らし』 川中島ケイ様

https://kakuyomu.jp/works/16818093085573318803


 こんにちは、南 コウです。この度は、エッセイを書きましょう2024の自主企画に参加させていただきありがとうございました。


 非常に悩みましたが、南賞には川中島ケイ様の『うさぎ暮らし』を選出させていただきました。


 こちらのエッセイでは、作者の川中島様が初代うさ様をお迎えした経緯や、可愛らしくもあり、時に残念なうさぎエピソード、さらには別れと出会いなどがユーモア溢れる文章で綴られております。


 私自身、うさぎと暮らした経験はありませんが、親戚のうさぎを数日預かっていた幼馴染から「アレは極悪な生き物だよ」と言われたことを思い出しました。初代うさ様の悪の所業は、実際にやられたら頭を抱えてしまいますね。充電コードを噛み千切るのはやめていただきたい。


 しかし、どんな嫌がらせを受けても許せてしまう可愛さがあるから憎めない! 文章からもその愛らしさが存分に伝わってきました。川中島様が良くも悪くもうさ様に振り回されている姿が想像できます。


 そして生き物を飼う上では避けて通れない寿命の問題。別れが近付いた頃になって「ああしておけば良かった」と後悔する気持ちは痛いほど伝わってきました。明日も明後日も、今日と同じように過ぎていくと信じている間は、大切に扱うことを忘れがちになってしまうのかもしれませんね。初代うさ様が月に帰ってしまった描写では、私まで涙が込み上げてきました。


 先代への後悔が残っていたからこそ、二代目との時間は大切にする。そう決意された気持ちも共感できました。これからも『うさぎ暮らし』を大切に大切に過ごしていただけたらと願っております。


 さらに本作ではうさぎとのエピソードだけでなく、『永遠とは何か』という哲学的なテーマにも踏み込んでいます。以下、本文から抜粋させていただきました。


>例えば数カ月先に今の相棒が老いと衰えで月に帰ってしまったとしても、私が不慮の事故で命を落としたとしても。


 眠る前に彼が私の枕元に来て、顔を近づけて気持ちよさそうに撫でられているのを眺める時の充足感、お互いが幸せだと思っているのを実感できる瞬間は誰に伝わることが無くても、まさしく『永遠』なのだと思っている。



 この言葉に出会えたことに感謝しております。素敵なエッセイをありがとうございました。



……と、ここまでは感想となりますが、犀川よう様からは『講評』を依頼されたので、僭越ながら構成面についても触れさせていただきます。


 こちらのエッセイは、角川の求めているであろうコミカライズを見据えたストーリー型の構成を満たしていると感じました。


 物語の基本構成である起承転結に分解すると、


【起】

お父様が亡くなり、お母様と二人暮らしになったことがきっかけでうさぎを飼う。


【承】

飼いやすいと思っていたうさぎのお世話は思いのほか大変。だけど可愛いから憎めない。


【転】

うさぎの寿命が近付いた頃に後悔が生じる。別れがやって来る。


【結】

先代とそっくりなうさぎと出会い、今度こそ一緒にいられる時間を大切に過ごそうと決意する。


 起→結の間で気付きと成長があるからこそ、前向きになれるようなすっきりとした読後感がありました。個人的にはコミカライズしやすそうなエッセイだと感じました。


 カクヨムコン10のエッセイ部門では、漫画として発表することを目指す「コミックエッセイ賞」が設けられているため、これまで以上に構成力が求められると予想できます。


「こんな体験をした」というエピソードだけでなく、漫画として読者に楽しんでもらえる構成になっているかを意識することで、受賞に近付けるのではないでしょうか。


 筆の赴くままに書くのも良いですが、一度プロットに起こして話を整理してみるとより面白さを引き出せると思います。



 この度はエッセイ企画に参加させていただきありがとうございました。たくさんの作品に触れることができて、とても勉強になりました。


 最後にちょこっとだけ宣伝させてください<(*_ _)>


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 宣伝失礼いたしました。

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