第3話 みかんの果皮に包まれて

夜が更け、海辺を離れた二人は、ある古い民家へと足を運んだ。そこは彼女たちだけの秘密の場所だった。誰もいないその家の中、二人だけの静寂が広がり、壁には小さなランプが柔らかい光を放っていた。


部屋の中央に座ると、彼女たちは持ち寄ったみかんの皮を一つひとつ丁寧に剥き、果皮を小さな器に集め始めた。薄いオレンジ色の皮が山のように積み重なり、その芳醇な香りが部屋中に漂い、二人の心を落ち着かせ、そしてどこか甘い酩酊感を生み出していく。


彼女たちは互いの手を取り、みかんの皮を少しずつ編み込み、まるで二人を包むための織物を作るかのように手を動かしていた。その果皮で作り上げた即席の小さな囲いが、二人だけの秘密の空間を象徴するものとなった。


囲いの中で、彼女はそっと相手の指先にみかんの果汁を少し垂らし、それをやわらかくなぞるように指先を伝わせた。果汁が彼女の肌に触れるたびに、みかんの香りがますます濃密に感じられ、二人の間に張り詰めた空気が甘く溶けていく。


「こんなふうに、誰かとみかんを分け合ったことなんてなかった。」


囁くように言う彼女の声に、隣の女性もそっと微笑んだ。そして、二人はみかんのオイルを抽出した小瓶を取り出し、お互いの肌にそっと塗り始めた。オイルが肌を滑り、ほんのりとした暖かさが広がる中、彼女たちはただその瞬間に浸っていた。


みかんの香りが一層強くなり、二人はその芳香に包まれて、現実から切り離されたかのように感じていた。みかんの果皮に囲まれたその空間は、まるで夢の中の一部のようで、他の誰にも知られない、二人だけの小さな異世界だった。


二人は互いの目を見つめ、何も言わずに微笑みを交わす。みかんに誘われ、みかんに包まれた彼女たちは、もう現実に戻ることができないかのように感じていた。その夜、二人はみかんを通じて深く結ばれ、誰も入り込めない二人だけの世界が完成したのだった。


みかんの香りと果皮に満たされたその空間で、彼女たちは永遠にも思えるような一瞬を共有した。

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みかんに狂う美女たち 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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