第7話 青天の霹靂
お題:「風船」「地下室」「手帳」
「この国の真実をここに記す。この手記を読んだ者はこのことを国中に広めてほしい。オレは今日この国を空から撮影した。知っての通り、乗り物などで上空を飛行することやドローンなどを飛ばすことは政府の一部の人間以外禁止されている。だがオレは風船に360°球体カメラを取り付け空撮することに成功した。これだけだと信じてもらえないだろうが、オレはこのために10年間密かに準備をしたんだ。それに手記の近くにメモリーカードを残しておくからそれを見てほしい。見たら分かると思うが、上空100m辺りで風船が何かに引っかかったように止まった。だがカメラの周りには何もなく、空にぶつかったとしか思えない。オレ達が今まで空だと思っていたのは巨大なモニターだったんだ。
それにこの国を囲むようにそびえ立つ巨大な城壁、あれの外側も見えた。そこでは人が急に倒れ(おそらく薬か何か)、さらにその外側に広がる壁に作られた扉の奥へ運ばれていった。アングルから確認しにくかったが上向きの階段があったように見えた。ちなみに外側の壁は城壁よりも高く、空の天井と繋がっていた。つまり、この国は天井と壁に囲まれた地下空間だ。運ばれた行った人がどうなったかはわからない。この国では成人した人の何割かは外に行って帰ってこないが、それと何か関係が」
私が左手に開いている手記の内容ははここで途切れている。書き手は途中で私に撃たれてうずくまっているからだ。
「お前⋯政府の人間か?」
書き手ははかすれ声で問うが私は答えない。
「俺達を家畜だと思っているのか?そんなに自分たちが...」
書き手が言い終える前に私は銃の引き金を再び引き、眩しい閃光が一瞬走る。その後はひたすらに沈黙が空間を支配する。
「そんな中途半端な証拠では政府にかすり傷も負わせられない。それに市民に秘密が露見したことが分かれば政府も警戒を強めるだろう。そうすれば私達が動きにくくなる」
私はカメラと手記を暖炉に投げ込む。
「10年だと?私達は100年以上準備し続けている。邪魔をしないでいただきたい」
私は無線を口に近づける。
「ボス。空撮未遂者を特定しました。我が国の防衛システムは完璧に機能し、奴のカメラは何も捉えること無く撃墜されたようです。しかし、危険思想の持ち主として処理しました」
通信を終え、私は家を後にする。
「あなたの意思は私達が必ず成就させる。見ていてくれ」
私の背後では家が燃え、何もかもを灰に変えていく。
三題噺保管庫 でんの @dennno
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