Aria
碧人
Prologue
「君とはお別れかな」
一緒に逃げてきた女の子は立ち上がる。
震えている。声も、体も。なのに。
「どうして」
「ずっと逃げてきた。でも何も変わらなかった。どこにも行けないのなら、せめて」
爆発と激しい炎。風が強く吹いて、煙が吹き飛んで――空の向こうから巨大な何かが現れる。
竜。物語でしか見たことのないような……。
「ば、ばけもの……」
「こわいでしょう? わたしもあれと――同じなの」
「そんなの」
うそ、じゃなかった。
二人で隠れていた周りの瓦礫はとっくに溶けてなくなっている。それでもぼくが無事なのは、小さな天使がその大きな翼で庇ってくれていたから。
「わたしはこの翼が嫌い。でもこの翼のせいで他の誰かが傷つくのはもっと嫌い」
「まって。いかないで」
「ありがとう。手を引いてくれて」
小さな天使は翼を広げて空高く翔んでいく。
舞うたびに散っていく光の羽は燃える赤と空の青と混じって玉虫色に輝いて――その景色は残酷なほど綺麗だった。
Aria 碧人 @aoya-sss
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