第2話室隅死す!(というかいっぺん死ね)
前回までのあらすじィ!
この主人公ホンマクソだと思いますわ(作者談)。
1:「罰ゲームですよね?」
私・
普段の彼女からは想像もつかないその反応に私は少々驚きながらもう一度聞く。
「えーと、つまり、これ罰ゲームとかですよね?」
「え、な、なんで?」彼女は、黒金さんは目にうっすらと、涙すら浮かべながらそう言った。
「えっと?」どういうことだろう、もしかして罰ゲームじゃないとか?
・・・いや、それはないだろう。
今まで私と黒金さんにはほとんど接点なんてなかったし、私は美形でもないし、彼女の周りには常に美形の男子がいる。
今朝告白されたことからも明らかだ。
彼女が私のような人間を好きになるはずはない。
「ひどい、ひどすぎるよ。こんなのって、ないよ」
そんなことを考えていると、黒金さんは今にも消え入りそうな声でそう言った。
それから先にあったことは、よく覚えていない。
気が付いたら部室にいて馬飼君や遊び来ていた、今は引退した先輩と少し話した後、気分が優れないと言って家に帰って来た。
そのまま晩御飯まで眠った。しばらく何も考えたくない。
2:「ごめんきょう気分良くないから先帰るね」そう言って室隅は家に帰った。
その姿を心配そうに見送ったのは
今朝彼の友人はラブレターをもらったといってはしゃいでいた。
それは室隅の幼なじみである
というかあの二人いい加減にくっつけよと馬飼は思うが。
傍から見れば火鳥さんが室隅にどんな感情を抱いているかなど一目瞭然である。
・・・まぁとにかく、今朝あれだけはしゃいでいた室隅君はさっきは驚くほど落ち込んでいた。
「ありゃあ罰ゲームにでも引っかかったかねぇ」
そう言ったのは既にこの部活を引退したはずの先輩だった。
名前は
女子高生がそれでいいのかとも思うが(スカート的な意味で)口に出すと面倒なことになりそうだと経験で知っているので賢明な男、馬飼は黙っておく。
「罰ゲーム?」それはさておき馬飼は気になったことを聞く。
「そ、罰ゲーム。聞いたことない?陽キャ連中がなんかのゲームしてビリの奴が地味なクラスメートに告白するって話」
「それって動画投稿サイトの広告ですよね?」
「そうでもあり、私の友達が実際に体験したことでもある」
すると唐突に学校の火災報知器が鳴り響いた。
それを聞いた北口は机の上にガムをおいて言う。
「五十嵐の煙草にガム1」どうやら賭け事をしたいようだ。
対する馬飼は机に先ほど購買で買った一口チョコをおいて言う。
「科学部のやらかしにチョコ1です」
こいつら仮に本当の火事だったらこんなことをせずさっさと避難するべきだが、それをしないあたり、この学校の異常さが現れている。
ちなみにその後の放送によれば火災の原因は映画研究会の部室で蠟燭の火がタイヤに引火したとのことである。
賭けは不戦勝であったことは、言うまでもない。
3:翌日、私が教室に入ると騒がしかった教室が急に静かになった。
?何かあったのだろうか。
気にはなったが自分に関係があるかは分からないのでまずは席に着こうとすると、
そこには昨日見た時よりも人の手で汚され傷つけられた自分の机と椅子があった。
そのときくすくすとまるで嘲るかのような笑い声が聞こえてきた。
その声が気になり周りを見て気が付いた。
もう自分の居場所はどこにも無いのだと。
ある者は嫌悪を、ある者は怒りを、ある者は嘲笑を、
さまざまな感情が私を見る目に向けられていた。
「あいつだろう、黒金さんをフったのって」
「オタクのくせに何様だよ」
「英利ちゃん今朝からずっと泣いてるんだけど」
そんな声がどこからか聞こえてきた。
恐くなり、馬飼君の方を向いたら、彼と一瞬目が合い、そしてそらされた。
その目に映っていたのは恐怖と同情。
おそらく関わったらどうなるかわからないからだろう。
寂しくもあるが、私達のような日陰者はそれが正解である。
楓のほうを向いたら、困惑したような顔をしていた。
彼女も彼女で状況を把握しかねている様子だった。
そのとき大きな音を立てて体育会系のクラスメイトが掴みかかってきた。
そこから先は地獄だった。
ある時は先生のいないトイレで腹を蹴られ、
ある時は下駄箱を汚され、
ある時は、ある時は、ある時は、
もうツライ、たえられない
タスケテ、タスケテ タスケテタスケテ
タスケテ
「ごめん室隅氏。教室で無視して。あぁしないと私も同じ目に合わせるって、一人も二人も同じだって」
馬飼君は部室でそう言ってきた。確かにアイツラならソウするのかもしれない。
タスケテ
「えぇ、いじめ?分かった誰がやったとかは言えるか?そうかありがとう教えてくれて、辛かったよな。あとはこっちで何とかする」
五十嵐先生はそういってくれた、しかし状況は好転しなかった。
むしろ先生にチクったことでよりいじめはエスカレートしていった。
「たすけて、火鳥さん」すがるような声で私は幼なじみにそう乞うた。
しかし「ふざけないで私達ってそういう関係じゃないよね」
そんなどこか憤りの混じった声が返ってきただけだった。
タスケテタスケテタスケテ
もうたえられない
4:気がつけば自分は何処かの歩道橋の上にいた。
今が何時かもわからない。
もうどうでもイい。ゼンブゼンブどうでもいい。
ラクになりたい。もう終ロう。
そう思っていたのに「ちょぉっとまっっったぁぁぁぁ!!!!!」
そういわれて自分が立っていた歩道橋の手すりの上からおろされた。すごい力だった。
「てめぇ、なぁにやってんだぁ。あぁ!?」
・・・もうオワリたい
「はぁ?なんで?」
・・・ゼンブツライ
「あぁもう、わっかんねぇなぁ!ちょっと来い!」
・・・シラナい人にはついていくなって
「そりゃあ生きたい奴らの話だろ!今のお前はそうなのか?!」
そう言って男に連れてこられたのは歩道橋の近くの喫茶店だった。
十人中九人ぐらいが喫茶店と言われて思い浮かべるであろう、そういう内装の喫茶店だった。
「適当なところに座んな。ミルクでいいか?」
・・・あなたは?
「ここの店主。あんたがあそこで自殺されたらたぶん誰も寄り付かなくなる喫茶店のって注釈が今となっては着いちまうがね」
・・ゴメンナサイ
「それよりなんであんなことを?見たとこ高校生みたいだけど?最近の子って何考えてるかわかんないっていうけど、あれマジだね」
ミルクを飲みながら私は学校でのことを話した。
知らない人だからむしろ話しやすかった。
店員さん(性別?)は私が話している間一言も口を挟まなかった。
「なんていうかあれだな。そんなにつらいなら学校やめちまえば?」
・・・え?
「だってそうだろ?そんなにつらいなら無理して行く必要ねぇって。今どき学校に通っていないのは珍しくねぇしよ。何ならうちではたらくか?」
・・・イイの?
「死ぬよかいいだろ。いいか?お前の人生だ、死ぬのはお前の勝手だがそれは最後の手段としてとっとけ、生きて生きて本当に辛くてどこにも居場所がなくなったときまでな、それまでは生きろ。辛い時はな、逃げたって良いんだぜ」
その言葉を聞いたとき、心がすこし軽くなった気がした。
「それで、いいの?」
「あぁいいだろ」即答だった。
それからしばらく、店員さんと二人で話した。
「ミルクはサービスだ。また来なよ。今度は金を持ってな」
そしてお礼を言って店を出た。
最後に店主さんはこういった気がした。「これでよかったんだな。五十嵐」
5:そこはある少女の部屋だった。
少女の名は
とある少年の幼なじみである。
少女は苛立っていた。
「くっっっそ!」
その怒りは今日学校を欠席した彼女の幼なじみに向いていた。
いや、あるいはそう言う選択を選ばせた自分やその他大勢に、かもしれない。
「そもそもなんで私を一番最初に頼らなかった?三番目ってなんだよ!あとなんなんだよ『火鳥さん』って『楓』だろ!普通はよぉ!!」
そう言って彼女は壁を殴り僅かにへこませた後、その少し横にある、少年の写真に話しかけた。
いや、それは言葉足らずかもしれない。
その部屋の壁はある少年の写真で埋め尽くされていた。
あるものは小学生のときのツーショット写真。
あるものは中学生のときの海に行った時に二人で撮った写真。
あるものは高校生のときの盗撮写真。
壁だけではない、机の上の写真立てには保育園の時の写真が。
布団の上には少年の写真をプリントした抱き枕が。
その部屋は彼女の幼なじみで埋め尽くされていた。
「なぁ渡ぅ。つらいならもっと頼れよぉ。私をよぉ」
彼女からすれば程度の低いいじめを止めることなど造作もなかった。
しかしそうしなかったのには理由がある。
それは彼が本当につらくなり正常な思考力を失ったであろうというときに助け好感度を爆上げしてやろうと考えたためである。
彼女は今の関係性に納得していなかった。
彼女は、火鳥は室隅のことが好きである。
彼を自分だけのものにしたい。
自分だけを見てほしい。
だから黒金 英利が室隅に告白したと知った時には腸が煮えくり返ったし、今でも思い出すだけで同じことが起きる。
ほぼ同時刻:
一台の帰宅途中のリムジンの中で、ある少女は静かにそして確実に怒りを燃やしていた。
その理由を運転手であり同時に彼女の母親の執事でもある女性、内藤(ないとう)は推測する。
「室隅少年が学校を欠席したことがそんなにショックですか?『英利お嬢様』」
話しかけられた後部座席の少女は一瞬殺意すらその表情に浮かべ、しかしすぐに真顔に戻ると「べぇっつにぃ~、ぜんっぜん気にしてませんけどぉ~?」そう返した。
その態度から、嘘であると明治の頃から先祖代々黒金家に仕えている家系である執事の内藤は見抜く。
「そうでしたか、それは失礼を、明日から連休なので『進学する高校を突き止めそこにわざわざ入学するくらい大好きな』室隅少年と会えなかったことに胸を痛めているのかと思ってしまいました。ご無礼をお許しください」
「あ?」
少女はそれこそそこに凶器があれば〇しかねない程の殺意を向けドスの聞いた声でそういった。
そのことに気づいたのか少女は落ち着くために携帯ケースを開くと中に入っていた一枚の写真を見て数秒前とは別人のように愛情に満ちた表情を浮かべる。
それは彼女の宝物の一つであるである幼い頃の室隅 渡と自分との写真であった(まぁ一人余計なのは混じっているが)。
自分の父と室隅の父は仲が良く必然的にその子供である自分たちもかつてはよく遊んだ。(まぁ一人余計なのもいたが)
当時周りは父の会社の関係者の子供ばかりだった黒金 英利にとってそういったしがらみのない室隅 渡と遊ぶのはとても楽しかった(まぁ一人明らかに余計なのもいたが)。
しかし家が離れていたため小・中学校時代は離れてしまった。
けれども高校になって(意図的に)再会した。
だがその少年は自分のことをわすれおまけにあの火鳥とよろしくやっているではないか。その事実を考えるだけで今でも腸が煮えくり返る。
幼いころから自分と室隅との蜜月に割り込む憎い女。それが出会った時から変わらないあの女の印象だった。
だからあの女のものになる前に自分から告白した。その結果があれだ。
それにしても。
「周りもずいぶん加熱したわよね」問題なのはその後だ。
ショックを受けた自分を見て周りが(特に自分の家の関係者たちが)室隅をいじめだした。
はじめは少しは痛い目に会えばいいと思って見ていたが(今にしてみればどうかしていた)あれはやりすぎだ。
あれのせいで今日彼は学校を欠席してしまった。
あれのせいで、彼は少女に対して嫌悪感を抱いてしまっただろう。
きっとこれからの挽回は厳しいだろう。
しかし彼女はあきらめない。
彼女達は改めて、誰に向けるでもなくある言葉を宣言する。
誰にも聞かれていないことは理解している。
これは本人達にとっての一種の儀式のようなものである。
「渡は」「室隅君は」「「ぜっっっっったいに手に入れる!あの女には渡さない!」」
そして少女達の暗躍が開始する。
二人の少女が宣言したのとほぼ同時刻・とある家のベランダ
「さぁて、そろそろかな?」
ある男は自分の家のベランダで空を見上げながらタバコをふかして言う。
男はこれまでのことを振り返り、そしてこれからのことを予測して、それでなお不敵に笑う。
男の名は
とある少年少女の担任にしてこれまでの事件の調整者である。
「叔父さん。ご飯できたよ」
甥からの言葉で男は思考を切り替える。
男は自分の姉と自分の親友の子・室隅 渡に微笑みかける。
「お、そうか。じゃ、冷めないうちに食べよう」
少年の両親は今二人とも海外にいて家にはいない。だから二人の代わりに男が面倒を見ている。
男は甥の様子を会話や表情から観察する。
どうやら喫茶店の一件でどうにかなったようだ。あとであいつにはお礼を言っておこう。
先ほど『調整者』と言ったがすべてをコントロールしているわけではない。
出来ているのならあんなことにはなっていない。
だが男からすれば自分の計画に不測の事態が起きるのは初めから織り込み済み。
「叔父さん連休明けからまた学校に行きたいんだけど、どう思う?」
「ん?あぁ~イイと思うよとしか言えないね。立場上」
男はそこで思考を切り替え甥との時間に集中する。
男からすれば二人の少女の恋心や、その結果に起こるであろう事件などその程度の価値しかない。
ならばなぜ男は首を突っ込むのか?
それは単純。ただのいたずら、叔父が甥に恋人はいるか?とからかうことの延長でしかない。
まぁそれで、彼らの高校のクラス分けにまで影響を及ぼすのは世界を見渡してもこいつだけだろうが。
(連休明けにはとびっきりのイベントもあるしねぇ~楽しませてよ。少年少女、渡に被害の出ない範囲でね)
さぁこれで役者はそろった。陰謀渦巻く第2幕をはじめよう
あとがき:今回は閑話休題のような話だと思っていただけると幸いです。
次回こそは面白くしていきます!
ハッピーエンドは迎えない 目玉焼き @yuderuna
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