エピローグ
みるみる迫ってくる地面。それを大きな
(あれ……?)
次に目を覚ますと、かなめは白いマクラに顔を
そこは病院の個室だった。
「お。やっと目を
彼女が横たわるベッドの
「ここは……?」
「東京の病院よ。いまは五月一日、一七三五時。あなたはまるまる二日半の間眠ってたわけね。『
「あの、あなたは?」
「はは。やっぱり看護婦には見えない?
「ソースケ?
「まあね。……で、とにかく起きたから
「つまりその……〈ミスリル〉のことは
「それは自由よ。名前くらいなら、日本の軍関係者でも知ってるだろうから。でもあたしたちのことや、あなた自身のことが明るみに出たら、
看護婦は立ち上がった。
「それと……あなたにお礼を言いたいの」
「お礼?」
「そう、千鳥かなめさん。あなたは、わたしの部下二人を救ってくれた。命の
いきなり
「あ、あたしは別に……」
「いいえ、話はクルツから聞いてるわ。あなたがいなかったら、彼もソースケも助からなかったと思う。あなたはもしかしたら、あたしたちよりも強い人間かもしれない」
「そ、そんな。
かなめはおずおずと相手の手を
「じゃあ、あたしはこれで」
「あの……」
「ん、なに?」
「彼は……相良くんは……?」
「ソースケはもう、別の任務に
「その……伝言とかは?」
「あなたに? うーん。特にないわね」
「そう……」
「じゃ、さようなら」
〈ミスリル〉の女は部屋を出ていった。
外はまだ雨だ。
いまも宗介は、任務に就いているのだろうか? こんな雨の中で、じっと
(せめて別れの言葉くらい、残してくれてもいいのに……)
そう思うと、自然と
それから五分ほどして、本物の医者と看護婦がやってきた。彼らはかなめがすこぶる
医者たちが去ってから五分ほどすると、
「カナちゃん!」
「ほんと、心配したんだよ!?」
「あたしたち、福岡の空港であの
「あの
「これは
「でね、でね! だからね! カナちゃんの
「ああ……ごめんなさいね、
「うう……カナちゃ~~~んっ!!」
「ちょ、ちょっと……。いちおう、あたし病人なんだよ、もう!」
恭子たちの重みに
「そうだ。軽い
「そうそう、大切にしてよ。まあ、明日には退院していいみたいだけどね」
「なによりだ。あの救出部隊に
「そうね。修学旅行は
「命あってのものだねだ。問題ない」
「そうそう、命あっての……へ?」
かなめはその見舞い客に目を向けた。涙ぐむ神楽坂教諭の後ろに、ひとりの男子生徒が立っていた。むっつり顔にへの字口。ざんばら黒髪で──
「さ……相良くんっ!?」
一同は相良宗介に注目してから、『彼がどうかしたのか?』と問いたげな顔をした。
「なんだ? 千鳥」
「あ……あんた……どうしてここに!?」
「失礼な。俺は見舞いにきたんだぞ。
彼は
「いったい、どーいう……」
「保険だ。俺は」
宗介は小声でささやいた。
「ホケン?」
「そうだ。当分の間な」
「……って、よくも、まあ……」
『ありがとう』とも、『
その腹立たしさが、彼女にはとても
かなめは大きく息を
「やい、ソースケっ! あんたにはいろいろ
一気に
外の雨は、夜にはあがりそうだった。
〔了〕
フルメタル・パニック! @ShoujiGatou
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