1-44.山賊退治

 山賊退治の前日、周囲に人がいないことを確認したうえで、アーシェを庭の東屋に呼び出した。俺はアーシェに関係の清算を持ち掛けた。


「コバタ、あなたは不思議なことを言うのね。


 あんなに毎日愛し合ったというのに?


 二人が帰ってきたとなったら私は嫌がるのね。やっぱり私って欲しいものが手に入らない運命なのかしら」


 アーシェの言葉には以前のような悲壮感がない。かなり穏やかになってしまった感がある。理由は分かっている。なんだかんだ満たされてしまったからだ。


 以前のアーシェは切実だった。しかし今やフィエの寵愛を受け、ララさんともなんか仲直りしている。クィーセさんとも仲良くやっているようで周囲の雰囲気は良い。欲しいものを手に入れて彼女は弱くなった。


 以前のアーシェは強すぎてどうにもならなかったが、今なら何とかなる気がする。


「なかったことにとは言うつもりはないです。俺は何より、隠した関係を続けたいというのをやめたい。俺は後ろめたい気持ちでフィエに接したくない。


 まだ復讐とか言い続けるつもりですか。その意味はもう消えているようにしか俺には思えない。今の関係は惰性、惰性でしょう」


 アーシェは少し考えるふりをして言った。


「わかりました。譲歩しましょう。


 でもこの妥協案が受け入れられないのなら交渉は決裂。次はないわ。


 まず私の愚痴については一切口外しないこと」


 この様子だと、最初から答えを用意していた感がある。また俺はアーシェに嵌められているのではないか。


「アーシェの愚痴の内容を漏らす気なんて元からありません」


「そうね。それと私との秘密はコバタ、あなたからは言っちゃダメ。いいわね」


「……分かっています。守ります」


 これは予想できたことだ。アーシェは俺をコントロールしたがる節がある。


「自然にバレるか、私が打ち明ける気持ちを準備するまで待って。


 もちろん、バレた場合にコバタを悪者にするつもりなんてない。


 私が強引な手段を使ったことはしっかり説明します」


 ……あれ。これって現状維持では? なにも譲歩しているように思えない。


「何も変わっていないのでは……?」


「前向きに検討する方向に変わったわ」


 ……政治家用語使いやがって、のらりくらりと先延ばしするつもりだ。しかしこういった交渉が俺に出来る時点でアーシェはやはり弱くなっている。




 山賊退治前日の夜、アーシェ宅にて最終確認が行なわれた。


 作戦はこうだ。まず気付かれないように相手を発見する。移動力や単独戦闘力の高いララさん、クィーセさんがそれぞれ回り込んで敵が逃げやすい地形を抑える。そして俺たち初心者組が主体となって山賊団を潰す。


 巻き狩りだ。この少人数で30人ほどを狩るというのは魔法あってこそのことだろう。俺とフィエ、アーシェは最初は組みになって行動する。状況によってはアーシェは他への対応に回る。


「いいか、コバタくん。キミの役目はフィエの護衛だ。


 これは一般的な魔法使いの運用と同じだ。フィエに魔法を使わせて、キミは即応性の有る武術で敵を近付けさせない。


 このペア方式は古典的戦法ではあるが、ずーっと使われている。最小単位で構成出来てシンプルゆえの強さ、意思疎通と連携のしやすさがあるから。


 私や舎弟、アーシェは自衛できちゃうからそっちは守らんでいい」


 ララさんが頼もしさを前面に出した口調で話す。緊張気味な俺やフィエを勇気づけているのだろう。クィーセさんもそれを補強するかのように、余裕を持った表情で話してくれる。


「それでですね。ボクら殲滅は一生懸命にはしません。包囲して逃さないこと重点で追い込みます。ボクら訓練は足りているので、今回の主役はお二人です」


「私はフィエエルタ、コバタのサポート。主に初期の偶発的な遭遇に対処します。


 人数把握は十分に行ないますがどのような物事も完璧はない。後悔してからでは遅い。経験の薄いあなたたち二人を不意打ちや流れ矢ひとつで失いたくない。


 何らかの傷を負った場合、私がすぐに治療を行ない安全な場所に退かせます」


 アーシェは真面目な顔でキリッとしながら言った。……俺に不貞関係を強要してくる人間とは思えない清廉とした表情だ。


 何も知らないフィエはアーシェの言葉に感激して答える。


「アーシェ様……! 有難うございます。


 ……そうですね、今回のわたしの役割は牽制が主になります。


 わたしはまだ殲滅に向くほどの力を持っていません。集中して鍛えたのは『癒しの帯』と『風の扇』、そして『地の閉塞』です。


 後ろふたつは磨き上げれば強力な攻撃ですけど、今はまだ牽制程度にしか」


 つまり、今回はフィエもサポート寄りになる。殲滅は担当できない。


「今回、殲滅役は俺が担当します。基本は棒術……今回は槍で行ないますが『地鞘の剣』や『太陽の矢』も危険を感じたら惜しみません。


 目的が殲滅であるなら使わない意味もないですし、何より実地ではまだ使っていないから検証が必要です」


 ララさんが俺の言葉を受け、次の内容へと移す。


「ウム。じゃあ役割確認が終わったから次は山賊情報な。


 これは以前、私たちがメリンソルボグズへの道中で襲われ撃退した山賊集団と同一と思われる。以前は流れ者を中心に構成されていたが、地元のゴロツキ人材を集めて再構成したようだな。


 キィエルタイザラの不調、療養の情報を得ているようだ。でなきゃ行動を活性化したりなんかしない。


 敵の特徴として挙げられるのが、脚が速い点だ。グズグズしないで移動や転居をマメに行なっている。そのための移動阻害になるから貯蓄は多くない。賊は方針がはっきりしている。リーダーシップがある奴がいる。


 相手の今までの行動は基本的に路上襲撃だが、各農村の収穫時期は近い。山賊側もこれからの冬に備えた貯蓄を得るための行動を開始しているものと考えられる。つまり今までの遊撃スタイルから行動方針が変わっている可能性がある。


 すでに山賊出没の情報は回っているから、各村落は防衛の意識がある。輸送の際も同様だ。山賊にとっては通常より襲撃の難度が高くなっている。


 彼ら集団の性格によるが、取る行動は三つだ。防備意識の薄い集落・輸送隊を襲う、リスク覚悟で豊かな集落・荷を満載した輸送隊を襲う、あきらめて他へ移動する」


 ララさんの言葉にはクィーセさんが答えた。


「目撃情報などから推定された敵の現在位置周辺を見ますと、1番2番を合わせた選択肢を取ろうとしているようです。欲張りですね。


 しかも度重なる捕捉失敗からか、街からの警邏をナメてますねぇ。こんなに街から近いところを狙っている。大胆というより無謀……意外性のつもりですかね?


 ボクならこんな露骨な作戦は却下だなぁ。狙いがくっきりしすぎですよ」


 クィーセさんは山賊に対し呆れた様子だ。フィエが沈痛な表情で口を開く。


「……つまり地図で言うと、この村ですね。


 ……こちらの村は村長の代替わりがあったばかりで統制が弱い。


 防備はしているでしょうが、まだ村民との信頼が充分に構築されていない。混乱が起きるとまとめ切れないかも。内部情報まで調査済……あるいは手引する者がいそうですね。


 ……今のタイミングで被害を出してしまうと、村が本当にバラバラになるかも。そんな気の毒なことにはさせたくない」


「フィエエルタ、大丈夫ですよ。村の方々が山賊の影を見る前に殲滅すればよいのですから」


「俺も頑張ります。……ところで、昼間に行動するので本当にいいんですか?


 こういう時って夜襲とかするんじゃ……?」


「夜襲と簡単に言うがねキミ。


 キミもフィエもそんな訓練受けてないのにやれはしないだろ。夜の山中だぞ? むしろ夜目が利く歩哨がいたのなら山賊側を利するまであるんだよ。なら昼の方がいい。


 それに今は満月が近いから闇に乗じるにしても中途半端だからなぁ」


 ……確かにそうか。どうも頭でっかちになってしまっていたようだ。そーだな、俺が夜襲とか言われてもできないもんな。




 そして山賊退治当日の朝。


 俺とフィエ、アーシェは野外行動に合わせ、服装装備を大きく変えているがララさんとクィーセさんは軽く防具を増してマイナーチェンジしただけだ。普段の仕事の延長線上でしかないのだからそれはそうだろう。


 でもクィーセさんは相変わらず魅惑の生足だ。山中に入るのにいいんだろうか。


 アーシェは体型に合わせた特注の鎖帷子、髪の毛をまとめ保護する帽子、木枝や草の引っかかりを抑え、身を隠しやすい外套を着ている。そして輝きを消した大振り肉厚で重そうなナイフ、使用感があるメイスを持っている。なんて言うか、聖職の人にしては宗教的な飾り気がないというか、ガッチガチの武骨な戦士や暗殺者みたいな装備だ。


 フィエと俺は、ララさんに見立てをお願いし装備を揃えている。基本は革の軽装で動きやすさを重視された。頭部と首回りや心臓付近だけは金属のプレートが入った兜を被り、帷子を垂らした。即死を防ぐためだろう。『癒しの帯』は効果が出るまで多少の時間がかかる。即死は回復に大きなリスクとなる。傷が癒えても心臓が再度鼓動しなかったり、脳死の可能性がある。


 こうして行動が開始された。目撃情報などからおおまかな位置や敵の現状を推定し、地形を見て相手の目的に適うであろう場所を推定する。




 昼頃、俺たちは山賊の位置を捕捉した。


 山賊は休憩中なのか歩哨を置いて停留している。偵察行動を得意とするクィーセさんとララさんが先行して確認した。一度集合し、襲撃に有利な位置まで近づく。


 距離が近まり、ララさんの『鉱脈探知の魔法』が射程圏に入ったので更に特定する。


 『鉱脈探知』は名前通りの目的で使われることが多い。特定の物質を手に触れて魔法を使用し、同様の波長を感じ取る。つまりは武器に対しても使える。


 成分を多く含んだ石ころと、武器を判別するのは人が持って動くかどうかだ。鉱物を持っていなければ察知は出来ない。


 ララさんは装備の鉄素材、銅貨、銀貨、鋼の剣、黒曜石のアクセサリなど、さまざまな素材を触りながら探知を行ない、まずは歩哨の位置を特定した。


 そしてララさんは、参ったなと呟いた。


「バレたわ。本隊に魔法使いいる。『鉱脈探知』の魔力流動を察知されてなんかの魔法で相殺行動された。なんで山賊稼業なんてやってるんだ。割に合わんだろ。


 あー、あと感じた範囲で見落とした歩哨は多分いない」


 それにクィーセさんが応える。いつものおちゃらけた感じがない真面目な口調。


「歩哨だけ速攻しに行っていいですか。


 本隊はこちらをまだ魔法でしか知れていない。歩哨にはボクらが見えていない以上、潜伏少人数ともうバレてます。方針決定や位置特定される前に消しましょう」


「承知。敵魔法使いは好機あっても殺すな。まずは素性の確認だ。尋問する。


 んじゃ舎弟、『早駆け』で速攻頼むわ。左回りでお願い。右からは私が行く。


 アーシェ、後ろの指示頼む」


「承知。クィーセ、ララトゥリアはそのまま囲うように。


 コバタ、フィエエルタ。我々はこのまま前に出ます。数分で魔法や矢の射程に入ります。すぐは当ててこれないでしょうが、まぐれ当りは常にあると考えなさい。


 ライラトゥリアが言った通り、敵魔法使いは確保です。確認、復唱」


「敵魔法使い確保、了解です」


 戦端は開かれた。


 現状は山の中。先ほどクィーセさんがやや見晴らしからの索敵を行ない、既に本隊位置は突き止めている。アーシェと俺たちは敵攻撃に備えつつゆっくり進行する。


 慌ただしく戦闘準備を行なう音が聞こえてくる。この先には野営地として木が密集していない広場を確認している。


「相手は陣を敷き迎撃体制です。


 コバタを殲滅役とした場合、このままでは守りが固くやりづらい。フィエエルタ、当たる距離まで出たら陣へ牽制の魔法攻撃を。


 それに乗じて私が固まりをばらけさせます。敵魔法使いも確保してみましょう。向かって来た者にはコバタと協力し対処なさい。


 コバタ、接敵中にもパートナーを意識すること。私が戻るまでフィエエルタは死守なさい」


 アーシェは敵が陣を固めたことを察し、先陣を切る。木陰に消えてからはもう見えない。横合いから襲撃するつもりだろう。


 俺とフィエも敵方に距離を詰める。前方には急ごしらえしたであろう陣地が見えた。戸板のようなものや荷物、荷車を盾としている。


 接近充分、フィエはこちらに気付いた相手が陣地から矢を放つのを目視して、準備していた『風の扇』を地面に叩きつける。


 『風の扇』は名前の通り、前方広範囲に突風を巻き起こす。極めれば人間すら吹き飛ばすと言うが、今のフィエの魔法は矢避けと砂塵や小さな飛来物を相手にぶつける程度の効果だ。


 敵魔法使いの相殺行動。『水の壁』だ。こちらに向けて大きな水壁が現れる。フィエが放った風が、相手の水壁を消費しつつもそこで抑えられる。砂埃や飛来物が水壁に受け止められる。


 俺はフィエが魔法を発動したあと、体で盾に入る。こちらペアは発見された。今は囮の状態だ。俺はフィエに声掛けし、歩調を合わせながらじりじりと前に出ていく。


 水の壁が消え、敵が継ぐ矢を放とうという気配の時、アーシェが突如敵陣の横に湧いて出た。どこから忍び寄ったんだ……。アーシェは同時に『光の大爪』を展開し、目星をつけていたであろう敵魔法使いを潰しにかかる。


 素早く重いメイスによる打撃音。骨の割れる音、血を叩く音。アーシェは数人を潰して素早く退く。ぐったりとした山賊一人を素早く引きずり出している。あれが敵魔法使いだろう。追う矢も仲間を盾にされては射れないようだ。


 仲間を取り戻そうとしてか、陣の中から誰か飛び出す気配がある。


 俺はフィエに合図した。アーシェを追おうと飛び出した山賊が数秒後、勢いよくつんのめり、痛みに叫ぶ。『地の閉塞』で脚を挟まれ、おそらくは骨を折った。


 俺たち二人がなおも近づいてくることへの対処、迎撃が二人でる。小剣持ち。連携が取れているとは言えない、粗末な装備で動きも良くない、捨て駒だ。槍で一人の喉下を突く。深く刺さったので槍を引いて蹴り飛ばす。


 二人目を槍で打ち据えながら奥に焦点を合わせる。いま遮蔽となっているコイツが倒れたら射かけるつもりだ。フィエに声掛けをする。


 フィエが再度『風の扇』を使いにかかる。発動までは数秒かかる。その間に二人目の喉を突く。アーシェが戻ってきた気配がする。


「アーシェ、後ろを。フィエを頼む。俺は一度前に出る。剣を試す」


「承知。やってきなさい」


 俺は槍を捨てて身軽になり前に走り出る。『地鞘の剣』のお披露目か。モノ以外を切るのは初めてだな。風を背に受けながら前傾に走り込みながら剣を手元に、柄を握ってそのまま振る。幾度となく練習した動作だが、実戦という状況下だと初めての動作のように感じる。


 陣地の衝立の上から斬り伏せる。3人。剣は軽い。なのに相手は地に顔を擦り付けながら吹っ飛ぶ。感覚が狂うくらいによく斬れる。


 敵の動揺を見て更に隣の遮蔽ごと切り伏せる。2人。あと15くらいか?


 勇ましくも、あるいは恐怖してかこちらに斬りかかってくる。相手の剣に当たらないことが肝要だ。それだけ気を付けて斬る。更に4人。


 一度退く。敵は陣の内部で体制を建て直してしまった。さらに陣内に入ると出すぎ、孤立する気がした。陣から出たところでクィーセさんの合図の笛の音。歩哨は排除完了して包囲抜けもないとの確認の音。


「降参する! 投降を認められよ!」


「認めない、賊は死ね。力なき者が、持ち去らぬよう乞うた荷や命を奪ってきたお前たちに容赦はない!」


 アーシェの声は、今まで聞いたことがないドスの利き方だ。軍の人みたい。まぁ教団における軍の人でもあるか。


 俺はアーシェとフィエがいる位置まで下がる。アーシェが訊いてくる。


「コバタ、もういいならクィーセリアに命じて一網打尽にします。どうです?」


「頼みます。内部でまとまってます」


 アーシェが片手を上げる。数秒でやや遠方の樹上からクィーセさんの『大火球』が勢いよく敵陣に飛び入る。数人を残し、敵は壊滅した。




 尋問が始まる。俺もさっきまで山賊を戦い殺していたのだが、正直尋問って見ていてイヤなものだなぁ、と感じた。


 相手が受け答えをするからだ。戦っている間は相手は『意思疎通出来ない何か』だが、拘束して話を聞くというのはそれと違う。


 ララさんは冷たく相手を見下ろして言った。


「頭目には見えんが、下っ端か」


「オッ、オレは下っ端だよぅ。何も知らねぇ。だから逃が」


 脚の折れた男は死んだ。残り3人。うち一人はアーシェが気絶させ、引っ張り出しておいた魔法使いだ。まだ目覚めていない。


「頭目はそっちにいるか? その魔法使いはどうだ?」


「さっさとやれ。頭目はもう死んでいる。魔法使いは流れの者だ。詳しく知らん」


 覚悟が決まった奴がいる。そりゃ交渉できない相手だって分かるよな。


「わかった。次はのんびり生きられるようにな。……隣の奴は?」


「言うことなんかねぇよ」


 二人死んだ。サクサク進むな。……残った魔法使いをララさんが強引に起こす。


「起きたか。お前たちは負けた。諦めて質問に答えるか死ね」


 魔法使いは少し辺りを見て、自分の手が拘束されていると知ると舌を噛んだ。数瞬待ってからアーシェが相手の顎を固定しながら舌の位置を戻し『癒しの帯』を使う。千切れかけた舌が魔法で固定、密閉され血が閉じ込められる。そして治っていく。


「死ねと言ったがもっと何回もやらないと血が出切らなくて死ねないぞ。どうする?」


 ララさんが怖い。アーシェはつまらないものを見る目をしており、クィーセさんは慣れた感じで周辺を警戒している。


 フィエは……多分俺と同じだ。取り乱しなどはしないが、イヤな状況にいる時の顔をしている。こんなん見ていたくないが、これにも慣れなくちゃいかんのか。


 せめてものことと思い、フィエを手を取って握る。フィエはちょっと苦い笑い、口元だけ歪めて俺に応えた。……そうだねぇ、いやだねぇ、俺も同じ。


「最初に聞きたい。吐いたら楽に殺してくれるか」


 敵魔法使いの問い。これにはアーシェが答えた。


「誠実に情報を渡すなら速やかで穏やかな死を。利用価値まで出せるなら生かしもしましょう。……これは甘言と捉えて頂いても結構ですが、十分信用を置けるだけの働きがあるなら、以後は私の名にかけて庇護します。


 私はメリンソルボグズ光教団・上等祭司、アーシェルティと申します」


 相手魔法使いはビクリと身体を震わす。


「……名は知っているのですね? ですが私の顔は知らない。ふぅん」


 ララさんがちょっとツッコミを入れたそうな顔をしている。……ああ、尋問中だからララさん自重したけど、アーシェのおっぱいのこと言いたかったんだな。

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