1-21.実験は続く、真面目に続く

 俺は、下弓張月の能力が汚いことに使えると言うのに嫌悪感を覚えたので、テンションが落ちていた。エッチ機能としてなら楽しい気持ちになれるのに……。


「さて、以上を踏まえた上で試したいことがある。私を使っての実験だ」


 ギクリとする。……俺は今まで現実逃避していたのかも知れない。楽しい時間からシリアスな方向に引き戻されてしまった。


「最初に、どういった目的でどういうことを行なうか説明する。フィエの気持ちも鑑みて、せめて納得できる内容にのみ絞るつもりだ。


 ひとつは『私と、コバタくんの分身との交合でも契りは成立するのか』


 これは下弓張月の力を戦略的に利用する場合に、コバタくん本人の安全を保障できるかどうかにつながる。あとは精神的な負担軽減だな。


 次に『下弓張月で分身の複数作成は可能なのか』


 これは複数人に対し契らない限りは分からないことだ。加えてえっち機能に興味津々なコバタくん本人も気になっているところではあるだろう。


 次に『そもそも契りとはどういう条件なのか定義する』だな。


 これをぼんやりとでも定義していかないとヤリ損になる恐れがある」


 真面目な内容……なんだろうな多分。ララさんの言葉が一部ふざけているので不真面目に聞こえるが、確かに知っておきたい部分ではある。


「あ、ララさん。まずはわたしの分身が複数できないか実験を」


「そういえばそうだな。コバタくん、まずはフィエ分身を二人想定でやってくれ」


 分身フィエを一度消して、再度念じる。……もしフィエが二人出てくるのなら夢が広がりまくる。だが、結果として現れたのは一人だけだった。


「無理みたいですね」


 まぁ、両脇にフィエ本体と分身を抱えられるというシチュエーションが実現できるかもしれないだけでも、夢があるのだが。それはフィエにしっかりお願いして、納得した上でやって貰おう……。


「さて、それではヤってみるか。コバタくん、キミの分身を出してくれ」


 再度、俺の分身が現れる。慣れたもので今度は最初から股間を隠したポーズだ。しかし無情にも、ララさんは分身に対して身を隠す布を与えてくれない。


 これから自分が目撃する光景は、自分の分身とララさんの交合だ。しかもそれを横からフィエと見る形になる。凄い特殊な状況で頭が混乱する。


「わたし達は、外に出ていようか」


 フィエがそう提案する。先ほどに比べ少し表情が沈んでいる。やはりフィエとしても割り切れない部分は残っているのだろう。


 やはり、俺が止めるべきなのか。そう思った時にララさんが口を開いた。


「いろいろ確認したい。キミたちもこの実験の観察に協力してくれ。遠慮や気遣いはありがたいが、それで何か見逃しては馬鹿らしい」


 ララさんが淡々と言う。何てこと頼んでくるんだ。


 俺も分身もフィエも微妙な顔になる。実験の内容は確認済みだ。とはいえ、いざコトに及ぶことになると心の準備が出来ていなかったことに気付かされる。


 すると俺の分身が、口から絞り出すように言った。


「俺、こんな状況でちゃんとできる自信がないです。


 女性には分からないところもあるでしょうけど、ここって精神状態の影響がとても出やすい部分なんです……」


「コバタくん、命令で何とかならないか」


 ララさんは冷徹に言った。実験者の目だ。……いずれ消える存在とは言えさすがに分身が可哀そうだ。


「俺の分身が言ってることがよく分かるので、心情的に命令はしたくないです」


「どの部分が一番ネックだ? 妥協しよう」


「フィエに見せたくありません。


 このことに納得していると言ってはいますが、実際に目にして気持ちが動揺しないとは思えません。それによって、フィエの信頼を損なうのが何より怖いです。


 分身も、それが一番嫌なんでしょう」


 フィエがこちらを見た。何を思っているのかはよく分からない。


「ふーむ。まぁ非常事態とは言え、そうか。そうだよな。


 キミにとって一番の目的であるところの『フィエを守る』に抵触するか」


 ララさんはしばらく考えたあと、こう言った。


「フィエと一緒に夜の散歩でもして来い。杖に灯虫を付けるから持って行ってくれ。終わった頃にこちらへ戻すようにする」






---------------


室内。コバタの分身とララの会話。




「……ララさん、最初から二人には見せる気ありませんでしたね」


「ほう? わかるのか」


「ドアインザフェイスですよね、あれ」


「すまない、向こうの世界の言葉か? 何を言っているかが分からん」


「過大な要求をして、それより小さな要求を呑ませる、という奴です」


「ほう、キミの世界では手法として名前が付いているんだな。土壇場になってからゴネられそうな雰囲気を感じたから、ついあんなことを言ってみた。


 もしかして本体も気付いているのか」


「多分気付いていません。二人きりになってからの雰囲気で察しました」


「そうか……さて、フィエとキミ本体はもう遠くにいる。


 分身くん、ひとつ聞きたい。私からのお願いだ」


「……なんですか」


「キミにとって、まだネックがあるのは感じている。


 キミに、分身のキミに聞きたい。本体やフィエには誓って言わない。


 ……今、私とするのに、何が問題だ?


 キミは本体じゃない。私との行為をフィエへの裏切りと感じているとしても、それはいろんな意味で軽減されているはずだ」


「…………俺の、変なプライドです。つまらないこだわりかも知れません。


 俺は……『俺のことを好きな人』がいいんです。相手から冷めた目で見られながら、と思うとそれが怖いんです」


「あー、……言いたいことは分かったが、キミは随分とその……鈍感じゃないか。フィエくらい積極的にアピールがないと分からない感じか。


 はっきり言おう。私はキミが好きだ」


「…………ちょっと待って下さい。じゃあ何で分身の俺なんですか」


「キミがいずれ消えるから全部話そう。短時間ながら信頼を得るためにも。


 まず私はフィエが大事だ。長く慕ってくれている妹分だ。今はキミにベッタリだが、ちょっと前までは私に着いて回る子だったんだぞ。


 あいつはな……割と人見知りで気に入った相手に一点集中するタイプなんだよ。村長の娘として愛想はいいけど、完全に仕事モードなんだよな」


「なんか分かります。


 ベッタリされてて『フィエは他の付き合いはいいのか』って思っていました。フィエって結構人見知りするんですね……」


「肉親の村長を除けば、初めて対象が男だったからそうなると思ってた。


 フィエは露骨というか、分かりやすいから横からちょっかい出せなくなった。妹分から男盗るとか、さすがにできんだろ」


「……ララさんはなんで俺を好きなんですか」


「なんとなくに決まってるだろ。大体が後付けで理由を見出しているだけだ。


 よし、理由が欲しいんだな?


 まずはキミの露出の高い格好を見たからかな。ドキッとした。次に年齢が近いと感じた。それからは何度かすれ違った程度だが、キミの態度が良かった。フィエがキミを気に入ってるからいい奴なんだろうと思った。


 それと魔法に興味を示してくれた……あれって意外と人気ないんだ。あとは声が好きだ。近くに来た時の匂いも良かった。それと特に横顔が好きだな。正面も斜めもいい。なんか背丈も近いし相性良いんじゃないかと思った。キミと魔法のこともっと話したいと思った。ふとしたときにキミのことを考えているのに気付いた。


 ……フィエを大切にしているのを見て『私もああされたい』と思った。フィエが『実り』のケープを着て幸せそうで羨ましかった。キミがいつも隣にいるのが羨ましかった。キミがフィエにちゃんと目配りしてるくせに言い出せない照れ屋なのが可愛かった。キミと踊っているフィエが羨ましかった。


 相談事に私の家を訪ねてくれて嬉しかった。フィエを守ろうと必死なのが格好良かった。キミの大切なことで私を頼ってくれたのが嬉しかった。二人でいるときにドキドキした。魔法の指輪のことで一番に相談してくれたのが嬉しかった。動揺した私を気遣ってくれた。正気に戻そうと目を見つめてくれた。私に触れてくれた。


 ……ああ、神が怖かったのは事実だ、そういうフリじゃないぞ。怖いと同時にキミと関係を持てないまま自分が消えるかもしれないのは嫌だった。私を見捨てないで一緒にいてくれた。私の長話を真面目に聞いてくれた。私がバカ話をしても付き合ってくれた。そしてこの期に及んでフィエに義理立てているところも好きだ」


「……」


「これで全部じゃない、パッと出てこなかった理由もある。好きだと感じた瞬間はもっともっとあった。通じてくれと念じたが、やはり言わないままではダメだな。キミは……気付かなかった。フィエを見てたからな。


 もっと必要だって言うなら、あとは行動でしか示せない。


 キミのことを嫌っていたり何とも思っていないなら、絶対にできないことを全部するしかない。……そうしたい。それだけだ」


「……俺の本体ともし、することがあるのならそれを言ってあげて下さい」


「……それ、私を見てそうなってるんだよな。良かった。ちょっと自分に自信が持てたよ。さっきまで全然だったから、告白の間も不安だったんだぞ」


「ララさんが俺のこと好きでいてくれるなら、そりゃこうなりますよ」


「初めてなんでキミがリードしてくれ。……好きな人で良かった。委ねるよ」


「…………それなら、なんで本体の方じゃないんです?」


「しょうもないかも知れんが、見栄くらい張らせてくれよ。妹分のフィエに先越されてるんだぞ? 余裕面で経験豊富ぶっていた奴が遅れを取っていたとか、私の立場も考えてくれ」






---------------




 分身とララさんを家に残し、俺とフィエは連れ立って外に出た。ララさんの家から離れてしばらくしても、無言が続いた。


 灯虫を付けた杖を見ながら、呼び出し機能としても使えるんだなぁ、とぼんやり考えていた。何か、話す気になれなかった。


「……わたしも、納得したようなこと言ってたけど、複雑だった」


 フィエは悲しそうに言った。


「……それはそうだよね」


「でもね、ララさんとは今までいろいろ話してきて、とても信頼しているの。


 そうだね。思えばコバタが来る前は結構ララさんにべったりだったかも。お姉さんであり、お母さんの代わりだったのかな」


「……でも、今の状況が特殊過ぎる。信頼とかで割り切れるのか」


 フィエは無言で肯定した。


「ララさん、えっちなことばかり言ってたでしょ。


 あれっていつものララさんじゃなくて、緊張していたり、余裕がないときのララさんなんだよ。緊張を誤魔化そうとしてるんだろうね。


 特に恋愛関連の話を聞いてみたときとかは、あんな感じ」


「そうなのか。単にそういうコミュニケーション方法の人かと思っていた」


「ふざけているように見えるよね。でもそういうわけじゃないんだよ」


 ……そういえば確かに最初から下ネタの人というわけでもなかった。気付いていなかったが意外と俺の前では緊張していたんだな。


「……だから、ちょっととんでもない言葉で要求をしてきたとしても、ふざけているわけではないんだよ」


「……そう、だな」


 また、なんとなく二人とも次の言葉を失ってしまっていた。


 ララさんの言動はともかく、身を挺して指輪の力について検証してくれているのは確かだった。弓張月や下弓張月の力は、一見するとエッチ機能のようではあるが思いのほか使い様がありそうだ。


 逆に、『太陽の矢』や『地鞘の剣』といった分かりやすい攻撃手段がこの社会で悪目立ちする。目立つことを恐れずに使えば、かえって危険を呼ぶかもしれない。


 つまりはララさんには、預けられた力の内で着実に使えそうな部分を使えるように努力して貰っているわけだ。感謝こそすれ、あまり邪険に扱うのは良くない。フィエも、ララさんを信じているのだから。


「フィエ。……俺は弱いから、強くなるよう色々やってみる。


 指輪の力は『俺が死ぬまで使える』らしいが保証は怪しい。いつ使えなくなるか分からないし、そもそも神様の尺度で用意された力のせいか迂闊に使えない。


 今の俺では戦うのはおろか、フィエを連れて逃げる事すら満足に出来ないかもしれないんだ」


「ふふ、コバタに連れられて遠くに逃げる、かぁ。……なんかロマンチックかも。


 ……そうだよね。わたしも逃げてもいいのかもしれない」


 フィエの言葉は俺の無力に対してのものでなく、フィエ自身が感じている無力感を逃避という形で解決出来たら、という願望の表れに見えた。


 逃げるという選択肢を最初から考えようとはしていなかったのかもしれない。


「俺はこの世界で役に立つ力をあまり持っていない。あの神様に出会う前は、強い力なんて一つも持っていなかったよ。


 ……まずはフィエを連れて逃げるだけでも出来るようにしてみる。その後は敵を追い払ったり、フィエを守れるよう力を付けていく」


「期待してる。イザというとき、わたしを、ちゃんと連れ去ってね?」


 その後は無言のままフィエと手をつなぎ、月を見ていた。やや欠けた月はまだ強く夜闇を照らしている。


 問題は山積みだ。フィエへの求婚者への対処、神様がくれたとんでもない力をどう使っていくか。そしてララさんとの関係に、フィエの気持ち。


 気が重くなるが、それでも先に進まなくてはならない。このままでいたらきっと俺はフィエを失うことになる。


 フィエが俺に寄りかかって体を預けてくる。先ほどよりだいぶ落ち着いた表情をしている。やはり、フィエを守るのが大事だ。そのために気持ちを切り替えよう。


 やがて、灯虫が杖から離れて戻り始めた。……実験は終わったのか。




 ララさんの家に着き、中に入る。ダイニング兼リビングの奥にある個室、ララさんの寝室まで入っていく。


 ララさんはベッドの上で布一枚をまとい、相変わらずの無造作ヘアーだったが、それが更に乱れていて色っぽく見えてしまう。指先を見つめながら物思う表情だ。


 俺の分身は申し訳なさそうに部屋の隅にいた。ララさんと一緒にベッドの上にいなかったのは、フィエに動揺を与えたくなかったからだろう。


「終わった。キミは取り合えず分身くんを消して、下弓張月を確認してくれ」


 俺の分身もこの状況で長くはいたくないだろう。早々に消してやる。


「じゃあ、ララさんの分身が作れるか、試してみます」


 俺はララさんをイメージして念じる。


「あっ……」


 フィエが小さく声をあげる。周囲に分身は現れなかった。ララさんは気だるげに周囲を確認した後、言った。


「分身では効果なし。やはりそういう感じか」


 何がそういう感じなのかは分からない。だが実験は失敗、あるいは無効であることが確認できた。


「あまり聞きたくないかも知れんが、報告する」


 ララさんは俺とフィエの顔を見て確認する。


「交合自体は分身を説得して行なうことができた。相手も気を使ってくれたよ」


 何とも言えない気持ちになる。フィエもきっとそうだろう。


「それで先ほどキミに分身を消して貰う前に、なんというか体液のようなものを指先につけて観察していたんだが、分身の消滅と同時に消えた」


 アレを指に付けて観察してたの……? でもそれが消えたってことは……。


「まぁ、心配事が一つ減ったなということでもあるし、加えて言うならこれでは多分無理だろうなと感じた部分でもある」


 どういうことだと聞きたいが、内容的に急かしては聞きづらい。ララさんの言葉を待つ。


「月の力は同時に二つは使えない。つまり『弓張月』で出したキミの分身とヤった要素が『下弓張月』を使うときに残っていない。


 まだ未検証ではあるが、直接でないと下弓張月は機能しないのかも知れない」


 ギクッとする。さきほどララさんに対して認識を改めたのだが、それでも次に行なわれるであろう実験に抵抗がないわけではない。


「わたしは二人を信じています。二人がそういうことをしても、二人とも好きな人だから……納得できます」


 フィエは落ち着いた声で言う。先ほど二人で散歩して来てから、フィエは随分落ち着いたように思える。


「キミはどうだ」


 俺なんかに言えることはあるのか。俺に確認なんか……いや、そういう考え方はやめて、はっきり言おう。


「俺には使える力が必要です。ララさんも信頼しています。お願いします」


「うん、じゃあ確認してみようか」




(詳細は略す)




 夜もかなり更けてきている。こちらに来てからの生活リズムからは大きく外れた時間帯。俺は自然な眠気と疲れの両方を感じていたが、まだ眠れない。


 結果として、下弓張月は機能した。


「やはり、直接でないとダメなんだな。キミ本人が持っている力である以上、そうなるのは筋が通っている」


 今、この部屋には俺以外に4人いる。フィエとララさんと、その分身二人。先ほどララさんの分身に命じて、分身でも魔法も使えることは確認済みだ。


「複数の分身を出すことができる点は、とてもありがたいことだね。様々な状況で対応の幅が広がる。


 コバタくん、すまないが確認がある。一度分身を消してくれ」


 ララさんは分身が消えたのを確認すると、戸棚からナイフを取り出し自分の前髪の一部を切った。いきなりの奇行に驚いたが、理由はすぐに分かった。


「なるほど、即時に反映されるものではないんだな」


 再びララさんの分身を出すよう言われ、指輪が作り出したララさんは、前の髪型のままだった。ややアシンメトリーな前髪になった本体と見比べると違いがはっきり分かる。


「時間をおいて試さないと何とも言えない部分もあるが、推論としては交合時点での情報が記録されていると思われる」


「……ちょっとびっくりしましたけど、そういうところも確認するんですね」


 俺は感心した。いろんな角度から検証していくんだな。


「ハハハ。いつまでも今のままの私を保存しておけるとかなかなか面白い。


 ああ、フィエに頼みがある。次回コバタくんとする前に体に何か小さな傷をつけてみてくれ。あ、分身にどの時点まで記憶があるかの確認もだ。交合ごとに情報が更新されるかの確認だ」


「……は、はい。分かりました」


 フィエも、実験者として振舞うララさんに少し気圧されている感がある。


「コバタくん、まずキミには『いつでも私を呼び出して相談できる』という利点が出来た。出てくるときは裸だがな。場所は考えて使ってくれ。


 次に、必要な時には『私の分身を如何ように使ってくれても構わない、キミが気後れする内容なら私の分身に判断を聞け』ばいい。私本体にいちいち確認を取る必要なんてない」


 随分と覚悟が決まった言葉だ。俺ではこうは言えない。


「それは……助かります。ありがとうございます」


「言っておくが、私は灯虫なんてハズレを引いたが、相手を制圧する戦闘ならかなり強い方なんだぞ。誰かを追い払いたいときには役に立つ自信はある。


 あとは魔法杖を利用した棒術も使えるから、キミが近接戦闘を習いたいなら私自身からでも、分身から習ってもいい。教団にいた頃に優等の評価を貰っているし、ちゃんと実務経験もある」


 敵の撃退に、俺の自己鍛錬の補助にも使える。使い道は多いようだ。


「キミが強くなるためにも必要だ。キミに棒術を教えたとして、どーせ遠慮して私に傷を付けまいとするだろう?


 分身なら消してまた出せる。私本体に傷は残らない。遠慮無用というわけだ」


 ……俺はララさんの分身であっても傷付けたくはない。でも躊躇ってばかりで強くなれないとしたら、そっちの方がまずい。覚悟を決めよう。


「……まぁ、最初にこの能力の内容を聞いたときに使いやすい力であることは察せたからな。何より先に内容を検証したかったんだ」


「先にそれ、言ってくださいよ……」


 頼りになるお姉さんモードのララさんから、こう説明されれば、俺も納得しやすかった。緊張して下ネタモードにならなきゃいいのに。


「えっち機能として使っても文句は言わんぞ。ヌハハ」


「……もうちょっと格好いい方のララさんでいてくださいよ」

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