メカクレ女子のアソコが見たい!

烏の人

第1話 メカクレ女子

 隣の席の花崎はなさき 美紀みのりさん。前髪が長くてなかなか目が見えない…と、言うか目があったことがない。クラスでは目立った立ち位置にはいない花崎さん。だけど僕から言わせれば、それは彼女の魅力に気づいていないのだ。

 メカクレ女子。ちょっとおどおどしたところも可愛くて…素直に僕は彼女に惹かれている。

 1度でいいから彼女の瞳を拝んでみたいと思っているのだけれど…どうやってアプローチすればいいかもわからないのでここ最近はガン見している。


「あ、あの…桐谷きりやくん?」


 おどおどと僕を呼び掛ける。


「なんでしょう?」


「なんで、そんなにこっちみてるの?授業中だよ…?」


「花崎さんの目がみてみたいから。」


「え、えと…いや、恥ずかしいからむり…。」


 なんて言われて断られてしまった。だけどそんなことでへこたれているようでは、たぶんこの先ずっと花崎さんの瞳を拝めないままだ。メカクレ好きとしてはこれはゆゆしき問題である。

 メカクレキャラの魅力と言えばやっぱりその瞳がチラ見えしたその瞬間である。花崎さんの瞳をだからこそ、見てみたいと思えるのだ。瞳を隠すとはつまり、見られたくないということ。だからこそチラリと瞳が見えたあの瞬間、それは、破壊力で言えばパンチラと一緒だ。こちらを完全に刺しに来ている。


 だけどこの人…こと、花崎さんに限ってはガードが堅い。あまりにも堅すぎる。1度も目が合わないって…それ本当に前見えているの?と聞きたくなるレベルだ。


「頑なだよね。それ前とかって見えてるの?」


「まあ、一応。」


「一応か。切ろうとかはやっぱり思わない?」


「思わないかな…やっぱり恥ずかしくて…。」


 目を合わせられないっていうのが最高にクる。


「可愛いと思うんだけどなぁ。」


「か、かわっ…。」


 そんな感じであわてて彼女は前に向き直る。やっぱりそう言うところも含めて可愛いんだよ。だからこそその目を見たいっていうのに。


 ―――――チャンスは中々やってこず…そんな悶々とした日々を送っていたある日のこと。

 偶然、その日は掃除の当番が重なった。僕と花崎さん。2人で教室を掃除する放課後。

 2人の間にあるのは静寂。僕は特に話す話題もないから。だけど花崎さんからしてみれば気まずいだろうな。


「なんかさ、ごめんね毎日毎日見つめて。」


「い、いえ…その…こっちこそ…。」


「いやいや、僕の方が一方的に見たいって思ってるだけだし。花崎さんが謝ることなんてなにもないって。」


「…え、えと…その…私………ちょっとバケツ取ってくるね!!」


 そう言って花崎さんは急いでその場を去ろうとして―――――。


「あ、危な―――――!」


 躓いた彼女の体を支えようととっさに体が動いた。ゆっくりに感じられる世界。ふわりと彼女の髪が舞う。


 綺麗な瞳と目があった。


 刹那にも、延々にも思えたその瞬間、僕は彼女の体を抱き抱えていた。


「あ、あぁ…!ご、ごめんなさい!!その、怪我とかは………桐谷…くん?」


「ごめ…ちょっとまともに顔見れないかも…。」


 思わず、目を逸らしてしまった。

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