第11話 虎穴に入らずんば

模擬戦をした日から1週間。

わたしは本を読んだり、魔法の練習を例の場所でやったりしながらも、ずっとどうやって"新たなる十字"ノイアークロイツの本拠地を探し出すか考えていたけど、良い案は思い付かなかった。


水麗も基本的に静かだし、1度定住ビザは取っているのか聞いてきたくらいで、余り話しかけてくる事はない。

…時々観察されている様な視線は感じるけど。

わたしに興味を持ってはいるのかな…?


「おはよう。涼音。」


「おはよう…。」


「涼音、話がある。」


「ん…どうしたの?」


「良い加減、何か行動した方が良いんじゃないかと思う。」


「……うん、分かってるよ。でも…」


「私から1つ提案がある。」


「……?」


「結社の魔術師を捕まえて尋問すれば良い。」


「わたしもそれは考えた。でも、そう簡単に本拠地を知ってる人を捕まえられるかな…?」


「私達の方から出向けば良い。」


「………ベルリンに?」


「そう。そこで涼音が自分の存在をアピールするの。そうすれば、向こうも放ってはおけないはず。ベルリンに居る結社の幹部級を誘き出せるかもしれない。」


「アピールって…。…でも、そうだね。リスクはあるけど、今更そんな事言ってられないよね。」


「うん。」


「でも、アピールってどうすれば…。」


「…前に使ってた大波の魔法。あれを街中で撃つとか。」


「い、いや…それは危ないよ…?」


「……。」


「あ…でも、威力が出ない様に加減してシュプレー川に向かって撃てば…? でも、それだけで気付いてもらえる…?」


「……取り敢えず、向こうで考えよう。ベルリンには行った事があるから。」


「え?あ、また__」





「……ブランデンブルク門前に出たんだね。」


「……ここに撃てば?」


「……え?」


「ここで物凄く大きい大波を起こせば、必ず話題になる。それに、これだけ観光客が居るなら、きっと写真や映像に残る。何かアクションを起こせば、向こうも反応するかも知れない。」


「……分かった。でも、その前に…

"仮装祭"ファッシング


「……これは?」


「姿は変えておかないと。奴らに気付かせるなら、魔法だけで充分なはず。わたし達が警察にマークされたら困る。」


「そっか。…もう準備は良い?」


「……極限まで威力を落とそう。それでも周りの人達は少し濡れちゃうけど…。」


"高波"タイダルウェーブ!」






「……どうなってる?」


「うん…、話題になってるね。SNSで結構拡散されたみたい。」


「そう…。」


「それにしても、こうやってドイツと日本を行き来出来るのは本当に便利だね…。わたしも転移魔法、覚えられないかな…。」


「…これ、そんなに難しい魔法なの。」


「うん、現代の魔術界では殆ど絶滅しかかってるって言われるくらいには。」


「詳しいんだね。」


「わたしも一応、魔術学院に通ってたから。」


「そう…。」


「……そう言えば、多分奴らはわたしがドイツに戻っていた事には気付いたはずだけど、結局どうやってコンタクトを取るの…?」


「…、恐らく、今ベルリンで向こうは警戒網を敷いているはず。もう1度出向いて歩いていれば、向こうから気付いてくれるんじゃないかな。

…ドイツ中に捜索網を敷いて、海外まで追ってくるくらいの組織力はあるんでしょう?」


「確かに、結社の内部でならわたしの顔は共有されてるとは思うけど…。そうだね、それじゃ、今からベルリンを適当に散策してみようか。」


「うん。」



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