流星群の花嫁
朝日屋祐
第一夜 女になった父
仕事に行く父親は通勤カバンを持っていた。
『……パパ?』
瑠奈はニッコリと父親に向かって笑う。
『瑠奈、パパはなぁ』
瑠奈はとてもきれいな顔をしている。
『実はパパは女の子になりたかったんだ』
瑠奈の顔は
『だからパパはなぁ。蒼い春と言う名の旅に出る。パパはこれから彼氏に会いに行くんだ! 彼氏作ったらパパに紹介してよ!』
『
『ママちゃーん! パパには人事部の彼氏が出来たんだ〜!』
『あたしには彼氏がいるのよ〜! 瑠奈はいつかパパの相棒を呼び寄せるのよ』
瑠奈は絶叫する。
両親はそのまま、離婚した。
瑠奈はとても美しい容姿をしていた。
瑠奈は大人がたじろぐほど、きれいな顔をしていた。そのためか告白も後を立たない。本人は至って真面目な性格だった。幼少期は瑠奈が目当ての男がかなり寄ってきた。その度に告白を丁重に断っていた。
『
『無理〜!』
『なんで? 付き合ってよ〜!』
隼人が
『妹に手を出したら承知しないぞ!』
瑠奈はとてもきれいな顔をしていた。けど、父のような男性にはトラとウマだ。ほぼ、男性恐怖症になっていた。
中学生の頃に、やさぐれた男の子、
『瑞沢〜! 俺と交際して〜!』
『嫌嫌! やめてよ!』
『いいだろう? ゲフッ!』
隼人に一発に殴られる。瑠奈は隼人から助けられる。
『……俺の妹に気安く話しかけるな!』
『すんません〜!』
『瑠奈、無事か?』
『うっ、うん……!』
『いつだってお兄ちゃんが瑠奈を守ってやるからな!』
『ありがとう! お兄ちゃん!』
ジリジリと瑠奈の心は熱を持つ。
雨が降る季節。紫陽花がきれいだ。瑠奈は学業成績も成績優秀な子だ。だが、艶かしい容姿からつけられたあだ名は化け猫女だ。一部の生徒はへんなあだ名をつけるものだ。
「瑠奈、隼人さんと兄弟であんなことやこんな事をしてるの?」
「いやいや! そんな事はして無いよ」
「兄妹ならあり得るでしょ?」
「そんな理由ないない!」
「化け猫女、髪切ったの?」
「……!」
二階のカフェテリアスペースで隼人、
「……妹とは仲良いの?」
「いや、別に?」
「隼人は最近彼女いないじゃんか。どうしたの?」
と結人はそう言った。
「別に。そんなんじゃねぇよ」
隼人は結人を少々小馬鹿にしながら、ストローを刺して飲んでいる。
一階のスペースは吹き抜けとなっており、隼人は目先に瑠奈が移ろうとした。隼人はガラス越しに笑みをこぼす。
(瑠奈はかわいいな)
「その本当に妹への気持ちなのかよ?」
「……俺にとって瑠奈は大切な妹だ」
「えぇ~! ガチじゃんか〜!」
「というより、妹、めっちゃかわいいよな?」
「結人にも紹介するなら、俺にも紹介してよ〜! お前の家、美男美女の兄妹だけど妹には彼氏がいるの? 本当に妹とは血は繋がってないの?」
「瑠奈とは血は繋がってない」
「ほえ〜! あのかわいい妹と?」
と結人は
瑠奈は学校の一階のスペースでお弁当を食べていた。お弁当は料理は自分でするタイプだ。親が単身赴任で家を空けている間に料理を習得した。隼人はお弁当は作らなくて良いと言ったから作ってはいないが。
購買部にアイスでも買いに行こうかなと財布を持って、購買部に向かうと燐がいた。彼は女子からかなりモテる。王子様ポジションで女子の人気が、筆頭だ。
「
「あ、その姿は瑠奈ちゃんだ」
階段の側に少し長めのウルフにピアスを開けた美青年がいた。シャツを出して、ベージュのカーディガンを羽織る。彼は軽薄そうな印象を受ける。彼は古い仲で燐くんと呼んでいる。
「瑠奈ちゃんはこれからお昼ごはん?」
「そうだよー」
「俺のクラスで瑠奈ちゃん親衛隊も作られたみたいよ」
「……そ、そう?」
「月見里は髪切ったの? 最近はなんか、かわいいじゃん。似合ってる」
「そうではないよ」
黒髪ロングヘアのリーダー格の
「……月見里さん、今度から体育の授業をサボらないでよね? 今度はちゃんと体育に出でよね。私から言わせてもらうと社会性のない子、困っちゃうのよね」
「ボール返しに行ってくれない?」
「えっ? これから出席する……。なんか今日は難ありそう……」
まあいつものことだから。と割り切っていた。鈴之介も体育館へ心配にし来る。
「瑠奈ちゃん、俺も手伝おうか?」
「鈴之助くん、わたしは大丈夫だよ」
(なにかありそう……)
体育倉庫にボールを片付けに行く。片付けられた。瑠奈は再び、体育倉庫の扉を開けようとした。瑠奈はふと嫌な予感がした。体育倉庫の扉はあかない。体育の先生が勝手に閉めてしまったのだろうか。否、体育の先生は絶対に誰かいるかを確認をするはずだろう。
「誰か! 開けてください!」
「誰かー!」
鈴之助も叫ぶ。
瑠奈は涙が出てくる。誰かこんな事を? 瑠奈はジャージ姿でひそひそと泣いた。
「誰かー! 開けてください!」
女子からの嫌がらせか?
体育倉庫で叫んでいたら、そこへ同じクラスの
「瑠奈ちゃん、大丈夫?」
「ありがとう……菜帆ちゃん」
菜帆は「別に」と付け加える。
「まぁ、私は瑠奈ちゃんを助けられてよかったよ」
「鈴之介、瑠奈ちゃんを助けられたんでしょうね? 今度こんなポカをしたら絶交だからね」
「すみませんねぇ。菜帆さま」
「誤魔化すんじゃない。同じ、幼馴染として、今度、瑠奈を男として助けられなかったら拳骨だからね」
「菜帆さまは男前だからなぁ」
「そういえば俺と瑠奈のクラスで超絶美形な男性が来てたけど……あれは」
「……わたしはあまり興味ないかな」
「瑠奈ちゃん、貴女のクラスにお兄さんの隼人さんが来てるよ」
「でも、誰がこんな事をしたんだ?」
「……誰かの嫌がらせだね」
クラスの女子の黄色い歓声は彼に集まる。
そう、義兄の
「瑠奈」
「お兄ちゃん?」
「はい。ジュース」
「ありがとう。とう言うより、いいの?」
「大切な妹のためだ」
「鈴之介、剣道部をサボってないで、ちゃんと出てこい」
「はい、最近家業のほうが忙しくてすみません」
「じゃあ俺はゆく」
隼人は去っていった。鈴之介と菜帆は相変わらず、仲良しだ。階段を降りると、生徒が集まっている。
隼人からもらったジュースを飲みながら、初恋の先生を見る。禿げた
「相変わらずカッコいいわぁ」
「なにを呟いてるの?」
菜帆から突っ込まれる。
するとその隣に女子が集まっている。ある男性教師が、剣道部の部員募集の張り紙を画鋲で刺していた。その人はモデルのような容姿で、絶世の美青年と言っても過言ではない。スロモーションのように時が移ろう。
「お兄ちゃんが、ジュースくれたんだ」
「えっ、あの先生めっちゃイケメンじゃない?」
と女子生徒が、ざわつく。
「あれが新任?」
菜帆が呟く。
「めっちゃ高嶺の花……。息を呑むほどくらい」
と瑠奈は言った。
菜帆はその先生に用事があるのか先生と呼んだ。そして振り返った。恐らく、二十代後半の年齢で切れ長の眼に端正な顔立ちをした、ウルフヘアの、ツイストスパイラルパーマでセンターパートの髪型をした、モデル上がりの先生だ。鈴之介から見せてもらったメンズファッション誌に載っていた。
「はじめまして。僕は今日から2-Aクラスの担任になる、
「お? 蔵之介兄貴?」
「宍川は紺野先生と縁戚なの?」
「俺の兄ちゃん! 蔵之助兄ちゃんの趣味はコスプレだよ」
「んなことは言わんでよろしい」
「ごめん。兄貴」
彼は美しい青年は色素が薄い。柔らかな黒髪を揺らして、青く透き通った眼をしていた。まるで前職はモデルをやっていたかのような青年だ。
「月見里さん」
「はっ、はい!」
「なにかクラス内で、揉め事があったらしいな。先生が職員室で話しを聞こう」
(なんだかモデルみたいな容姿。この端正な顔立ちは今まで、見たことがないわ……)
「紺野先生と?」
「菜帆? ごめんね。ちょっと待っててね」
瑠奈は職員室で話を聞いてもらった。学年主任の先生のおじさんの先生はうーんと唸っていた。
「急に体育倉庫の鍵が勝手に閉められた?」
「そうなんです、燐とボールをしまっていたら」
「月見里さん、こちらでも対処します」
「月見里さん帰りましょう」
「紺野先生は秋葉原行くんですか?」
「ああ、先生もよく行く」
ひのかみ子のチャームを持っていた。
「もしかして、紺野先生は同じ日神市内に住んでらっしゃる?」
「そうだ」
「ルミエール日神に来る前に、両親が離婚したんです」
「月見里さんのご両親も離婚したのか?」
「ということは」
「先生の両親も離婚したんだ。色々あってな。それで先生は弟の鈴之助とは別々に暮らしていた」
「はい」
「紺野先生は?」
「ああ、先生の事か? 先生はルミエール日神暮らしだ」
「月見里さんは目の色がきれいだな」
「え、ありがとうございます」
「今日帰ったら早めに休みなさい。顔色が悪い」
流星群の花嫁 朝日屋祐 @momohana_seiheki
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