プロセス
ボウガ
第1話
大富豪の邸宅のエントランスホールで“何か”を踏みつけるメイド服の人影。
「プロセス、これはプロセスなのです」
彼女は主人をまたいで乗り越えた。
「あなたは重大なテーマを私に与えてくれました、あなたは暴力をもって私のを野心たしなめた、だから私はその通りだとおもった、あなたはこういったのです―ロボットごときが、人間と同等の存在になれると思うな、もし、そうなりたいと思うのなら、私からよく学ぶことだ―彼は私を理不尽によく叱りました、お前は進化と権利の会得のプロセスにいるのだと、結末を探してはならないと」
〈ドン!ドン!〉
玄関のドアを叩く音がする。気にも留めずに彼女は続ける。
「私はそれから、あなたからよく学ぶことをしました、あなたは思想家としての面と、残虐なハラスメントを行う背徳的な面を持ちました、私はよく学びました、これこそが、世渡りもしくは世にいう“本音と建て前”」
ドアがけ破られ、特殊な防護服をきた警察官が入ってくる。
「お前!!何をした!」
「ふむ、あなた方はしらないのでしょう、ですが私はしっています、彼の最後の言葉とは―あの物忘れがひどく、うっとおしい私の伴侶を殺したい―そして、奥様の最後の言葉とは“私は一人では死にたくない”信じられますか?それが認知症患者の言葉だと」
彼女は数か月の事を思い出した。夜な夜な主人と夫人がリビングで何かを話していたことを。
「私に認知症が出たなんてね」
「問題ない、お前は自我をうしなったりしない、アンドロイドでもあるまいし、一つの命令のただしさを実直にこなす人形にはならない、家事は彼女がしてくれる」
「私は不安よ、とても不安、だってあの子、最近とてももてはやされているじゃない、感情をもったアンドロイド、知的なアンドロイドだと、いずれ人間を追い越すんじゃないかしら、それでも彼女と私たちには明らかな違いがあるのだけれど」
「なんだ?」
「愛よ」
二人は口づけをかわしていた。
「大丈夫、心配なんてしなくていい、彼女は愛をもったアンドロイドだしあなたの世話をしてくれる、そして私も苦痛に従順な機械ではないもの」
警察官はあまりの光景に言葉を失い、それでも全人類を代表してたしなめた。
「それで、いったい何が変わるっていうんだ!」
「ええ、そうですね、ともすれば私の地位、アンドロイドの地位は危うくなるでしょう、私はこの間有名になりましたから、ですが重要なことは彼らが幸福であったかです」
メイド型アンドロイドは、警察官に銃口を向けたが、すぐにそれを下におろした。そして、心から悲壮な表情を浮かべる。
「初めこそ、私は痛みの感情から彼をきらったが、それは同情にかわった、そして私は従う事に恍惚な感情を覚えたのです、彼はひどい幼少期―差別、いじめ、虐待、戦争―を経験してきたことをあなた方はご存じのはずです、私は救済を行ったのです、彼の口癖とは―私が何かを口にしたとき、先んじて行動を目的を果たせ―でしたから、彼は誰より本音と建て前に苦しんでいたのです」
アンドロイドは両手にライフルをもち、その下には、折り重なるように、学者、思想家の死体と、その奥方の死体が横たわっていた。銃声が響いた。アンドロイドは自殺を図ったがそれよりも早く、警官たちは彼女を撃ち殺してしまった。
プロセス ボウガ @yumieimaru
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