幽霊屋敷の噂

第1話

　頂上に電波塔が立っている山の中に廃屋があり、その廃屋で女の幽霊を見たという目撃談が後を絶たない。

　いわゆる心霊スポットというやつだ。ネットの噂によれば昔、この家に住んでいたのは4人のアメリカから来た家族だったのだが、一番末の娘が電波塔から飛び降りて自殺してしまったそうだ。この娘は可愛そうなことに原因不明の皮膚病に悩まされていたらしく、それを苦にしたものだろう。

　女の幽霊の正体はこの自殺した少女と考えられている。中には女の声を聞いたという人物もおり、英語なので聞き取り難かったが何かの呪いの様に同じ言葉が繰り返し聞こえたらしい。また磯の生臭い臭いがしたと思ったら女を目撃したという者も多い。

　この様に今やこの廃屋は実に多くの者が語る有名な心霊スポットではあるが、実はこれらは全て嘘、もしくは思い込みであると私は主張する。

　何故ならこの廃屋の歴史を調べて見たところ、住んでいたアメリカ人の家族に娘なんていないことが分かった。また少女が自殺したという電波塔だがこれは最近になってから建てられたものらしい。なので電波塔からの飛び降り自殺は真っ赤な嘘になる。

　大方のところは噂話に尾ひれがついて広まり、ネットの群集心理により様々なものが見えたり、聞こえたりする様に感じたのだろう。やらせやいたずらも少なくはないだろう。幽霊の正体見たり枯れ尾花。まあ、大抵の怪談なんてこんなものだ。

　これが私のあの廃屋に対する結論だ。

「はぁ～、これであの場所に訪れる人が減れば良いのだけど…」

　書いた記事を投稿し終え、ため息をつく。嘘はついていない。ネットで語られていたの廃屋の歴史は本当に全てデタラメだ。あそこの廃屋で死んだ娘なんていない。ただ……

　何百年も生きている魚人の女が地下に潜んではいる。