三人目
菜月 夕
第1話
『三人目』
『お姉ちゃん、お姉ちゃん。私ね、大人になったらケーキ屋さんになるのっ』
いつの間にか足下に寄ってきた女の子は瞳をキラキラさせてあれになりたい。これになるの。と子供らしい夢を次々と語り出した。
これは、そうだ私の子供時代の夢だ。あの頃はこんなにキラキラした未来を夢見ていた。
ふっと光景が変わる。そこには歳降りた穏やかな顔をした老女が孫達を暖炉の傍に置かれた椅子に座って優しく見つめていた。
クリスマスツリーが飾ってある。そうだ今日はクリスマスイブだ。
そうするとこの夢はクリスマスキャロルの様に過去の私と未来の私だろうか。
三人目は現在の私?
そして私は思い出した。クリスマスイブの朝、彼は別の恋人を造って私を捨てた事を。
そんな彼の当てつけに衝動的に自殺した私の死体がそこにあった。
期待していた未来。あり得べき未来。それを私は全て破壊してしまった。
子供の私と老女の私の夢が粉々に砕けていく。
そして私のデスマスクが私をじっと見続けていた。
私はそこから動くこともできず、いつまでも私の死体に見続けられていた。
三人目 菜月 夕 @kaicho_oba
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