第3話 親父に限ってそんなこと

 いや、俺も親父のことについてはよく知らない。と、言うのも俺はここで一人暮らしをしているのだ。親父がどこで何をしているのかについては連絡を取る手段がない。


「あの人…どこで何してるんです?」


「うーん…ナンパじゃないですか?」


「我が親父ながら最低…。」


「あの人物好きでしたからね。私にも迫ってきたくらいですよ?」


「本ッ当にッ!!申し訳ありませんでしたぁッ!!!」


「いえ、その…こちらも良かったので結構です…。」


 嘘ですやん…そんな恥じらいの表情見せんといてくださいよ…思春期の少年の心抉られますよ?これから怪異ラブコメ始まるかな?思てたのに…親父ホンマ…親父ィ…。


「ま、まあ、昔の話ですよ。ともかく、この事は当代に伝えさせていただきますね?」


「…はい…。」


「ん?なんか元気無さそうですけど…。」


「いえ…何でも…と、言うか親父もその…霊能力者なんですね…。」


「まあ、この家は代々そうですよ。寧ろ彰くんが異常だったくらいです。」


 異常て。


「いやあ…初めて見たときはほんとビックリしましたよ。私に一切目を合わせてくれないんですから。」


「ま、まあ、そうでしょうね…。」


 それが普通のはずなんですが。


「これで当代もひと安心されるかと思いますよ。」


「親父に限ってそんなこと…。」


「まあ、そうですね。あなたのもとを離れ半ば一人暮らしの状態にしてはや5年…お金は振り込めどどこにいるかはわからない。要素だけくりぬけばクズ親です。」


「すみません…あと、女癖も追加で。」


「…まあ、そうですね。でもまあ、私からしてみればあれが彼なりのけじめの付け方なんですよ。」


「それは…いったい…。」


「子供は知らなくていいことですよ。」


 なんてはぐらかされてしまった。


 さて、次の日から本格的に祠おじさんの捜索が始まった。とはいっても、範囲が広い。この町全域というのにも無茶であるだろうと思っていたが、そこはアカリさん。優秀な子を派遣してくれた。


「この子は…。」


「私の式の1人です。めちゃくちゃいい子ですのでご心配なく。」


「うーん…。」


 前足をかたっぽ上げて挨拶してくれてるみたいだ。


「よ、よろしく。」


 ただなぁ…ビジュアルめっちゃ蜘蛛なんよな…。


 そうして、俺はその日も学校へと向かう。蜘蛛を肩にのせている都合上、やっぱり気になる。それと昨日の事故でチャリがちょっとおかしい。


「やな感覚だな…あ、おまえのことじゃないぞ?」


 そう、肩の蜘蛛に語りかけるのだった。

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祠を壊しただけなのに 烏の人 @kyoutikutou

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