第2話 皆んなを連れションに誘ってみた

今日は朝からやたらと気分が良かった。俺、中山健太は女子高生の中で唯一の男子として、同級生との絆を深めようと意気込んでいた。先日、結衣と連れションに成功した手応えを感じ、次のステップに進む時が来たと思ったのだ。


教室での休み時間、俺は隣に座る結衣と、少し離れた席で本を読んでいた由奈に声をかけた。


「今日は皆んなで連れション行こうぜ?」


結衣は目を丸くし、由奈は本から顔を上げて呆然と俺を見つめる。


「ええー?」と二人は同時に声を上げたが、結衣は続けて「まあ、いいけどね」と小さくため息をついて席を立った。由奈もつられるように立ち上がり、微笑を浮かべながら「どうせ止めても無駄だし」とつぶやく。


そんな時、俺たちの前に黒川先生が姿を現した。俺の心臓が一瞬だけ跳ね上がる。


「中山くん、ちょっといいかしら?」と、いつもの冷静な口調で話しかけられる。嫌な予感がした。


「職員会議でちょっと問題になってね。やっぱり男子生徒が女子トイレを使うのは問題あるという話になったの」


先生の言葉に、俺は驚いて口を開いた。「そんな……!この学校、女子トイレしかないじゃないですか?」


結衣と由奈もそれに続いて抗議する。


「トイレ行けないなんて健太がかわいそうです!」と結衣が声を上げる。由奈も「そうですよ、先生!」と同調する。


しかし、黒川先生は落ち着いた声で説明を続けた。「うん、だから健太くんには職員用の女子トイレを使わせることになったの」


俺はその言葉に一瞬困惑する。職員用のトイレ?なんだか不安な響きだ。


「でも職員用トイレは教室から一番遠いじゃないですか?さすがに不便では?」と結衣は不満を露わにする。続けて由奈が、「それに健太くんに尿の音聞かれるなんて慣れました!」とさらっと言い放った。


「ありがとう、結衣と由奈……」俺はじんわりと感動し、感謝の気持ちを伝える。「でも先生の言うことももっともだ……。じゃあな、二人とも。愛してるぜ」


まるで別れのセリフのように俺が言うと、結衣と由奈は同時に小さな涙を流しながら叫んだ。


「健太ぁ!待ってるから!待ってるからぁ!」


俺は思わず目頭が熱くなる。俺のことをこんなにも気にかけてくれる同級生たちがいるなんて……。だが、そんな感動のシーンの最中、黒川先生が困惑したようにぼそりと言った。


「え、トイレに行くだけなんだけど?」


俺たちの一幕を見守る先生の視線を感じながら、俺は気を取り直して職員用トイレに向かった。


職員用トイレに到着すると、黒川先生が手短に説明を始めた。


「職員用トイレについて説明するわね? 基本的な設備は生徒用トイレと変わりないのだけど、一度に5人くらいが使える化粧台があるの」


俺はその言葉に目を輝かせた。「ならここで俺も化粧していいんですか?」


「うーん、肌が荒れやすいなら日焼け止めや、それを塗りやすくするための化粧水に乳液くらいは認めます。ただファンデーションや口紅みたいに色付きのものは校則でダメ」


「そっかぁ……」と少しがっかりする俺に、黒川先生は柔らかい笑顔を浮かべて続けた。


「でも学園祭とかのイベントで必要なら許可が下りやすいし、残念がらないで、ね?」


先生のその言葉に、俺は再び笑顔を取り戻す。なんて優しい先生なんだろう、と内心で感動しつつ、先生の人情深さに感謝した。


「じゃあ、せっかくなんで連れションしましょう!」


俺の提案に、黒川先生は少し驚いた様子だったが、すぐに笑って「いいわよ」と応じてくれた。


個室から用を足す音が聞こえてきて、俺は思わず口を開く。「先生は流しながらしないんですね?」


「しながら一回流して、し終わった後に残ってて更に一回流したんじゃ、水のムダになるでしょ?先生だから皆んなの見本にならないと……」と、黒川先生は真面目に答えた。


俺も負けじと、しっかりと用を足す。二人とも終わった時には、なんだか清々しい気分になっていた。


トイレを出ると、廊下の端で結衣と由奈がこっそりこちらを見守っていた。彼女たちは俺たちがトイレから出てくるのを見ると、驚いた表情で声を上げた。


「はわわっ、健太くんと先生がスッキリした顔してる! これはまさか……」


「生理現象で排泄しただけです」と、黒川先生が軽く結衣と由奈の頭を小突く。


俺は廊下の窓から見える青空を見上げ、静かに心の中でつぶやいた。


「天国の母さん、見てますか?俺、スッキリしたよ……」


その時、頭の中に母さんの困惑した声が響いた気がした。「ええ……」

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留年を繰り返してたら母校がいつのまにか女子校に‼︎ 〜30歳留年男子学生の校内ニートライフ〜 犬ティカ @inutika

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