トリック・オア・トリート

翡翠

10月31日

 私が、小学校三年生の頃にあった忘れられない出来事をお話ししますね。


 ハロウィンの日、私は心躍る気持ちを抱えながら目覚めました。


 お菓子をもらうための特別な日、ハロウィン!


 私は公園で友達と二人一組を作って、近所の家を回ることになっていました。


 待ちに待った楽しいハロウィンがやってくる!心はウキウキでした。


 午後五時、夕方のチャイムが鳴り、空が暗くなりかけた頃、私は公園に向かいました。


 そこには、学区の友達たちが沢山集まっていました。あれは二十人くらいだった気がします。


 みんな仮装をして楽しそうに笑っていました。勿論、私もカボチャのおばけの仮装をしながらその中に加わりました。


 友達と二人一組になるための準備が始まりました。ジャンケンなどで決める子も多い中、私の目に入ったのは、見た事ない女の子でした。


 少し濡れた黒い髪に白いドレスを着たその子は、一人で静かに立っていました。


「こんにちは!」


 と私は少し緊張しながら勇気を出してその子に話しかけました。


「一緒にお菓子をもらいに行かない?」


「うん、いいよ」


 その子は微笑んでくれました。


「私は篠崎伽耶!今日寒いね〜」


 私は彼女の名前を聞いて凄く素敵な名前だな〜と思いました。


 そして私たちは組むことになりました。


 公園から出発し、友達たちと一緒に近所の家を回り始めます。


 最初の家に着くと、優しそうなおばあさんが私たちを出迎えてくれました。


「トリック・オア・トリート!」


 と叫ぶと、おばあさんは笑顔でお菓子をくれました。


 私は喜んで、お菓子を受け取りました。


 だって、あの有名なカン◯リーマ◯ムですよ?お母さんはいつも買ってくれなかったので。


 そして、次の家でもお菓子を貰って、楽しさは続いたのですが私はある事に気づきました。


 伽耶ちゃんがお菓子を貰ってないんです。


 何故かボーッと遠くを見つめていて。


「伽耶ちゃん、どうしたの?お菓子嫌いなの?」


 と私が尋ねると、伽耶ちゃんは首を振りながら


「何でもないよ。ただ寒いなと思って」


 って。私は若干の不安を感じながらも、気にしないことにしました。


 家を無事回り終わった後、私たちは公園に戻り、別れることになりました。


 私は「また遊ぼうね!」と言い、伽耶ちゃんも「うん、またね」と微笑んでくれました。


 公園にはもう夜遅くだったので母も迎えに来てて、家に帰る道中、私は興奮しながら母に言ったんです。


「お母さん、今日は新しい友達ができたよ!篠崎伽耶ちゃんっていう女の子!」


 その瞬間、母の顔が変わったんです。慌てた様な血の気が引く様な、そんな表情で少しの間黙った後、言ったんです。







「篠崎伽耶ちゃん?それは……」



「その伽耶ちゃんって子とその家族は、一年前にに皆んなで死んだんだよ」




 って、震えました。私が見た女の子は誰だったんでしょうね。


 それだけなら良かったんですけどね、あの日、雨降ってないのに、伽耶ちゃん少し髪濡れてて、やけにあの時寒いって言ってたんですよ。


 後々高校生になって思い出して妙に気になって調べたら、無理心中だったらしくて


 お父さんは首を吊って亡くなって、お母さんも首を吊って亡くなって、伽耶ちゃんは








 冷たい水風呂の中で溺れて亡くなったんだって。

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トリック・オア・トリート 翡翠 @hisui_may5

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