第5話 罪




「たぶんさぁ、まだバレてはないって思うんよ。

 アレからさぁ、ここらで死体が見つかったなんて、ネットでも、テレビでも、見たことないし、ケーサツがうちに来たこともねぇし」

「…………………………………………………………………」


「でもさぁ。

 これからも、バレること、ないって思うか?」

「………………………………………………………知らねぇよ」


「ユーシューなんだろ? 日本のケーサツってのはさ。

 カガクソーケン、とか言うん?

 七年前の骨とかでも、いったん見つかったらさ。

 ……俺らのとこまで、たどりつくとか、ないと思うか?」

「……………………………………………………………………」


「……あのさぁ、俺さぁ。もうガマンできんのよ。

 ここんこと、あん時のこと、アイツのこと、思い出したらさぁ。

 あん時の、体、ぎゅぅっ、ってなるみたいな、あの怖さがそのまま来んのよ」

「………………………………………………………………………」


「中学んときは、まだマシだったよ。

 高校のころからさぁ、ときどき、夢に見るようにまでなってさぁ。

 この頃は、もう毎晩なんよ」

「………………………………………………………………………」


「……自首、ってやつ……したほうが、いいんかな?」

「………………はぁ?」


「いちおうさ、俺らが殺したわけじゃねぇだろ?

 いやさ、俺らがなげたボールおっかけて、おぼれて死んだわけだけど。

 でもさぁ、ヒト殺し……にはなんねーよな」

「………………いや、待てよ」


「ちょっと調べたんだけどさ。

 事故で死んでも、カシツチシ、とかでさぁ、五年くらいは刑務所に入るんかも知れん。

 時効、っつって、時間がたったら犯罪にならなくなるらしいけどさぁ。まだ三年はかかるんだ。

 死体イキ、ってのもあってさ、それも三年くらい刑務所いくかも知れなくて……そっちはたぶん時効になってるんじゃ、ないかって、思うけど」

「…………待てって」


「こんなことなんて誰にも相談できんじゃん。

 バレてヤベぇことになるのと、自首、すんのと、どっちがマシになるんかな、って。

 それをさぁ、おまえと二人で、相談して、それで」


「…………待てっつってんだろが!!」






「………………………………」


「おまえ、頭ダイジョーブか!?

 だまって聞いてりゃ、ヒト殺しとか、死体ナントカだとか、刑務所だとか、ワケわからんこと言いやがって!!」

「…………で、でもよ!」


「よく考えろバカ!

 あんなヤツ、わざと殺しても、そんなコトにはなんねぇよ!!」

「あ、あんなヤツ、って!

 そりゃ、たしかにアイツ、すげぇバカで、汚くて、たぶんまともな家庭、とかなくて。

 だからまだバレてないんだと思うけど、でも、殺してもいいって、お前!」


「……あのな。思ってたけどな。

 おまえ、ちょっと記憶、おかしくなってないか?」

「…………へ?」


「おまえ、アイツのこと、人間だって思ってないか?」

「だ、だからそりゃ、いくらなんでもヒデぇだろ!

 人間じゃねぇ、って……!」


「だから!

 あいつは犬だ! 犬なんだよ!!」

「いや、だから!!」




「わかんねぇんか!?

 生物学的……か、とにかく、あいつは動物の犬だっただろが!!」

「………………………………………………………………………へ?」





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