第22話 モテない男の選択肢


 届いた、本...。


 タイトル名『男の自信のつけかた』


 恥ずかしい。配達してくれた人が中年のおっさんでよかった...。


 そう。頭が混乱している中、この本を電子書籍で購入したつもりが紙の方で俺は注文してしまっていた。


 そう。今の俺は何にせよ、無理だ。


 まあ、こんな本読んでも意味はないことはわかっているが、気休めというか何というか。


 正直、サブスクなら無料なのに、ボタン間違いでお金を払うことになったから実際読もうとは思う。


 思うけど...。

 

 とりあえず、変わりたい。


 筋トレで身体は昔に比べて変わったとは思っているが、さらに変わりたい。


 自分を変えたい...。


 でも、次に何をすればいいか、わからない。


 ただ、もし隣に彼女が引越してきたのが運命なのだとしたら...


 これも運命なのだろうか。


 今、俺の手には一枚のチラシ。


 さっき、そこの本が配達されてきた時にポストにこれが入っていることに気がついた...


 『ボクシングジム 新規会員募集! 社会人の運動不足やストレス発散にも最適です!!!』


 そうチラシには大きく書いてあり、そこに載っている写真に写る人達も一般のそこら辺にいるサラリーマンみたいな方が多い。俺みたいな30代ぐらいの人もいる。


 『今なら入会金も1カ月無料。とりあえず体験に!!!』


 俺はバカだからよくわからないけど、シンプルに強くなればそれが自分の自信に繋がる。今よりもひとつ上の人間になれる。そう思ってしまったりもする。


 プロを目指すとかでは全くないし、無理だから考えてもいないが、とにかく自信が欲しい。


 『受付がものすごく美人です!!!』


 まあ、これはどうでもいい...。


 でも、本当に、 月会費もそこまで高いものではないし...。


 こういうのは思い立ったが吉日ともいう。


 実際、筋トレを始める際にも衝動的にダンベルなどの器具を通販で注文するところから始まった。


 ちょうど、明日は日曜日でまだ休日。


 自分の中の何かを変えないと、本当に頭がおかしくなりそうだ。


 そう。脈がもしあったとしても、なかったとしてもだ。勘違いだったとしても、そうでなかったとしてもだ。


 まず、俺が変わらなければ何も変わらない。


 某芸能人も言っていた。幸運はチャンスと準備が一致したときに掴むことができるのだと。


 まだ、今の俺が彼女にそういう感情を抱くにはあまりにも準備不足すぎる。


 もし、その間に彼女が別のいい人と一緒になったとすれば、それはもう、そういう運命なのだと、チャンスと準備が一致しなかったのだと情けないが受け入れる。


 とにかく、選択肢はもう一つしかない。


 さらに自分を変える一歩として...。


 早速、明日。行ってみよう...。


 ボクシングジム

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モテなさすぎて『女性の脈ありサイン』なる恋愛啓発本を手に取ってしまった卑屈な30歳独身男、地味に今日も美女から話しかけられている。 卑屈な社会人 @jetton

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