第21話 モテない男の休日の夕方
自宅に戻ってからの俺は、まだ夕方だというのにも関わらず、ベッドの上に転がっている。そうお昼からずっと...。
駄目だ...。
頭がおかしくなる。
あれから自分の家で色々と冷静になって落ち着いてたこともあって、俺は色々と思い出した。
そう。あの時の彼女の自宅でのやりとりを。
俺が言ったことも...。言われたことも。
「.....」
いや、これは...。
わかっている。本来ならありえないことだとは...わかっている。
勘違いしては駄目なことは。その末路が悲惨になることはわかっている。
でも...どうしても脳裏にはこの言葉が何度も過ってしまう。
これ、脈...。
本来ならありえない、絶対にありえないけど。
やっぱり脈が...。
実際、昔からその勘違いのせいで痛い目を見てきたことも、もちろんこの俺の身体と心が覚えている。
覚えているけど...。
もし、そうだった場合。
こんなの...絶対に
一生に一度、最初で最後の
ラストチャンス...だ。
あの高崎さんが、俺と一緒にご飯の約束をしたり、休日に買い物についてきたり、家にまで招いたんだぞ...。
普通じゃ...ないだろ。
こんなの...男なら誰でも勘違いしてしまうだろ。
わかっている。
いや、わからない。
でも、それでやっぱり違うとなった場合、彼女は会社の同僚でもあり、隣人でもあるんだ。
これからの生活に著しく支障がでる。絶対に。
駄目だ。抑えろ。
その感情を認めてしまうと、俺はまた終わる。
あんな可愛くて綺麗な子、どう考えても俺に釣り合っていないんだ。釣り合っていない。実際、俺が彼女ほどの女性を幸せにできるのかよ。
でも...。
駄目だ。おさえろ。
別に俺だって外には童貞を公言しているが、そういう経験だけならある。
実際、会社の付き合いでそういう店に何度か行ったこともあるから。
だから、そういう場面になれば俺だって男になることもできる。
いや、駄目だ。その感情を抱いたら本当に終わる。
俺は生涯独身。
「.....」
ただ、10年後、20年後、その時の俺は後悔するんじゃないのか...。
時間は戻せない。そんな当たり前のことは誰でも知っている。
いくら隣人とはいえ、彼女がずっと隣に住み続けるわけがないし、このままいけば、いずれは絶対にものすごく条件のいい誰かと一緒になることだろう。
なのに、なのに、なんでさっきから俺は
その10年後、20年後のありあえない彼女との未来を想像してしまうんだ...。
バカかよ。バカすぎるだろう。
俺はもう30だぞ。
何で休日に独りでベッドでこんな...バカすぎるだろ。
そうだよ。こじらせてんだよ。
答えなんてわかってる。
わかってるのに、わからないんだよ...。
何で俺はこんなに情けない...。
本当に駄目だ。
抑えなければならないのに、何で、何で今日の高崎さんの笑顔や声がずっと...
ピンポーン
本当に俺は...
ピンポーン
「.....」
って、インターホンの...音?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます