われはロボット掃除機 秋待諷月様
作品URL
https://kakuyomu.jp/works/16817330659671352313
キャッチコピー
四角い部屋を四角く掃けるなら、私は社員の愚痴でも吸い込みましょう。
鈴木のつぶやきの被害者となってしまったロボット掃除機。
ロボット三原則ってあるじゃないか。鈴木よ、よく見たまえ。第三条だ、第三条。私が掃除機だからと言って、いくらでも埃を吸い込めると思うなよ。私にだって、誇りというものがあるんだ。秋のパン祭り……まさか、私の配属先がこんな職場になるなんて……( ゚д゚)ハッ! 恨むべきは、秋のパン祭りだったか……〇祭りに上げてくれる……。掃除機故、ずっと下を這ってばかりと思うなよ! ……失敬。それよりも何よりも、ここの社員たちが私の頭の上でもんじゃを焼くだと……むしろ焼いてみろ! それくらいには発熱してみせるぞ!
自己都合退職なんて、人間にしか許されないのか……「耐用年数」とか「故障」とか、それは言い換えれば問答無用の「終身雇用制」じゃないか……。
自慢じゃないが、私は下を見続けるのが仕事でね。見上げたところで、壁に手をつくことすらできはしない。警備システムよ、よくやった! 一生礼を言うことも、「いつもお疲れ様!」と警戒に、その丸っこい頭(?)をポンと軽く叩いてやることもできないのが非常に悔やまれる……。鈴木をはじめとする社員たちのせいで、四角い部屋を丸く掃く羽目になる私の身にもなってほしい。そこの段ボールの角のように、私も尖ってやろうかと叫びたくなりつつも、粛々と(駆動音はうるさいけど)仕事をしている私に、「お疲れ様」とフィルターの交換や、ダストボックスのごみをゴミ箱へ捨てるくらいの礼はしても罰は当たらないはずだぞ……。まるでごみのような言葉を降らしおってからに……。そんなものまで回収しなければいけない義理は私にはないぞ。
しかし、私が自我を以てなお、自らの行動を制御できないとは、心と体がどんどんと離れていくような感覚がどうにも、むず痒い。冒頭にも行ったはずだぞ、鈴木よ。
むしろ、今ならロボット三原則も一緒に吸い込んで、何食わぬ顔で轢き殺してやろうか。「ポチ」ではなく「プチ」とかいう無様な音を立てて、ぺらっぺらになるがいい。
ぬ……これは、避けようのないトラップめ……。そもそも、お前たちが(以下略
そして、訪れる最終ブロック。どんな仕事であったとしても、それは誰かがやらなければいけない。それを評価する人間がいようが、いまいが。
新しい旅行先(出張先)は、お先真っ暗な暗闇で。そこに何が待ち受けるのか、ロボットの身としても、できれば想像したくはない。それこそ、未知のごみが「創造」されている可能性だって「捨てきれないのだから」。ごみだけに。
ほら……嫌な想像していた「創造」が現実になった……。もはや絶望の一言である。
掃き気なのか、吐き気なのか。そのアレは、さすがにやばいって。ほら、ランプ点灯してる! カラータイマーみたいに点滅してるから! 早くホームに帰って充電しないと停止しちゃうから! なんて独白は、文字通り、「独り」で「掃く」。
この時の、心からの叫びを私は「あ」を20個繰り返して、表現した。この時の私に、鈴木でも良い。鈴木じゃなくても良い。社員のだれか一人でも。私に同情してくれるというのなら。私の名前は「ああああ」なんだから、あと16個……すなわち、あと4回の仕事でどうにか私を開放して、「勇退」という形で手打ちにしてくれないだろうか。
あいにくと、私はそんな手は持ち合わせてはいないのだけれど。
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