ファイブ・センシズ・リベリオン 結城熊雄様

 作品URL

 https://kakuyomu.jp/works/16818023212668221423




 キャッチコピー

 失うものを数える人生よりも、得ていく感覚を大事にできる生き方を


 五感。

 人体において、重要な感覚のそれは、決して代用がきかない、文字通りの五感(互換)性。脳とも体ともリンクする感覚が、剥がれ落ちていく様は自分の一部を喪失したに等しく。虚ろで、白い。残された感覚を研ぎ澄ましたいのに、そんな感覚ばかりがどんどんと膨らむのは、まるで「箱」に入れられた風船が、どんどんと膨らんでいくようで。

 研ぎ澄まされた「五感」という針で、刺せれば良いのでしょうが一つ奪われるたび、針の先は丸くなり、反対に風船は厚みを増していく。

 白は膨張色でもありますが、どこまで行っても部屋の構造を維持しているというのは、途端に閉塞感を感じさせ、その矛盾がどこまでも自身を追い詰めていくようで。

 そんな中での謎の声によるクイズタイム。この状況を作り出したのが自分自身ということは、かつてのトラウマにより、すべてをシャットアウトしたいという願望の具現化なのかとも思ったのですが、そもそも五感から目を背けていた自分に問題が……?

 どこかで嗅いだことがある。経験はある。しかし、知識をくみ上げることができない……。嗅覚を使ったプロファイリングも失敗し、また一つ失う感覚。

 花が一枚、また一枚と花びらを散らしていくように無常にも、時は過ぎ。残されたチャンスも消費していく。

 読み進めるほどに、不安を煽られつつも、「この先一体どうなるんだ……」というわくわく感が、まさに五感を刺激してきます。……物語も展開も、非常にアツいです。

 ついに訪れた最後の問題。目の前の女性は誰なのか。残された最後の視覚で、刺客は不敵に笑い。繰り返す自問自答。まったく無関係ではないのに、記憶の庭をいくら掘り起こそうとも、タイムカプセルに届かないもどかしさ。やがて訪れる無力感は、ゲームの終了ともリンクしていて。無情にも鳴らされるゲームの終了音。……と思ったら第六感……。

 五感が必須の感覚で、それぞれが互いに作用しあって一つの数珠を成すならば、第六感は実体こそないものの、その中心にあるように感じます。

 そこに確かに存在する「自分を」俯瞰し、観察し、側を構築する。そして、出来上がる張りぼての「自分」。そこへ、無数の「記憶」や「記録」。そして、「五感」で囲って出来上がるのは、すなわち。第6問目の答え。

 ここまで読んで思ったのは、まるで「僕」を構築していくためのプロセスを歩ませるためのプログラムのようだということです。五感を次々と奪われていく中で。白い箱の中で。己の「アイデンティティ」を構築し、内なる自分を発露させる。そんな「人間製造プロセス」がここにきて日の目を見ることとなったのですね。

 現実へと戻り、初めて感じるのも五感。決して互換性があるものはないと、自然に教えられているような感覚。「痛覚」も立派な感覚で。

「そう『感』じた」ことを「『覚』えている」。記憶は確かに感覚として残り、生への実感へと変わっていく。僕の人生観もきっと変わっていくことでしょう。

 職場でのあれこれは、現実世界でも無数に存在していて。多様化が叫ばれる現代においても、変化を良しとしない人は一定数いて。勿論、そういう人たちを「悪い」と断ずることもまた、できませんしそんな権利は誰も持ち合わせていません。

 あのクイズを通して、得た経験は、間違いなく糧となり、一読者である私からも「それを糧にして勝て!」なんて、シャレめいた全力のエールを送りたいと思います。

 自己啓発なのか、事故啓発なのか。少なくともこの先の未来は約束されています。

(レビューの☆は3までしかつけれないので、)

 彼のこれからの未来を祝福する意味でも、☆☆☆とここで3つほど、付け加えさせていただきますね。(レビューの☆3つとここの☆3つ)第六感ということで。

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