第56話 パソ部


「通信自体が、設定するものなんだよ。だから親機でしか出来ない。私とマイコとトモの端末は子機だから、ただこの世界を見学するだけになったと思っていたんだ。それが、たまたま、はっちゃんの所に行ってたアバター私の背景に無いはずの海が広がってたんだよ。これは誰かが優しい世界をイジってるしかあり得ない事なんだ。それでマイコとトモに聞いたんだ。そしたらマイコが何か隠したから、ちょっと調べたんだ」


「なるほど、マイコがパソコン壊す前に自分が親機になるように設定したのか?」


「いや、それも出来るだろうけど、やってないと思う。そもそもマイコはパソコンとかゲームとか疎いんだよ。アプリについて調べたら、子機がある場合に親機がなんらかの理由で消滅した場合は自動的に親機が移動するらしい。それで、二番目に優しい世界に行ったマイコが親機になったんだと思う」


「ちょっと、待って、て事は、今リアルハルはアバターマイ視点って事か? 俺を見る視点は無くなったって事か?」


「そうだよ。マイコ視点は今ずっとアバターカズの胸の中で、ドキドキしっぱなしだ。まあ、アバター私視点もだけどな」


「ちょっとー、リアルハルちゃんそう言うのは言っちゃダメなやつでしょ」


「おい、アバターカズよ、なんだか嬉しそうだな」


「だってねー、監視が外れたんだぜ。もう主人公じゃないじゃん。それにハルまで俺に今告ったぜ」


「バ、バカ、アバターハルは、って事だよ」


「もう、そう言うのはいいよ、ハル。大丈夫だ妹はちゃんと守る男だよ俺は、マイシスター」


「だからー、話し戻すよ。マイコは隠したんだよ。それに、リアルマイコは今、陸上部の推薦決まったやつと美術部の進路決まったやつと、パソコン部のやつで何かしようとしてる。アプリの説明にあったんだけど、親機変更の通知がマイコにも来てるはずなんだ。マイコはそれを承認したんだよ。マイコはリアルで実はモテモテなんだぞ。あの、ぶりっ子を使えば、陸上部もパソコン部も自由に操れる。美術部の女子とも仲良いからな」


「リアルハルちゃん、酷い言い方だよ、それ」


「魔性の妹、マイか。悪くない」


「アバターカズ、言っとくけど、私も結構モテるんだよ」


「そうだねー、ハルはモテるよねー」


「信じてないだろそれ」


「リアル私、それで、あの通り抜けれない壁はいつか通れるようになるのか?」


「流石、私、良い質問だよ。あれはおそらくパソコン部がブロックしてる。と言うかまだ開通させてないんだ」


「んー、結局、リアルマイは何がしたいんだ? どうせバレたなら、自分が主人公でアニメになりたいとかか?」


「それが、わからないんだよ。もう少し探ろうと思ってるけど、このログがバレたらやばいし、ログ消すとなんていうか、結構ラグみたいのが出るんだよ完全には消せないんだよ。これがパソコン部にバレなきゃいいんだけど……」


「おい、リアルハルよ。フラグにしか聞こえないぞ」


「今、リアルトモから、連絡きた。そろそろマイが戻るかもって言ってるから切るぞ」


「リアルハルカ先輩、リアル私に、リアルお兄様と結婚するようにお伝え下さい」

 

 通信は切れた。


「なあ、マイー、リアル俺は、たぶんリアルマイの事、好きだぞ。理由はわかったけど、俺らあの壁消えるまで何すりゃいいの? あっ、ハルもトモエもグエナちゃんも好きだよ」


「もう一人忘れてるよ、カズキー」


「も、もちろん、グミエも、す、好きだよ」


「マイコー、マイコならリアルマイコの立場だったらどうするの? カズに復讐的な事考えたりするの?」


「えーっ、わからないよー」


「よし、みんな離れて、仕事に戻ろう。トモエ、何で、リアルトモエは、全体にじゃなく、マイだけに初め通信したのかなぁ?」


「うーん……、確かマイコ先輩の携帯って結構古い機種だったんですよね? それで使い方が分からなかったとかですかね? お兄様」


 それから十日後。


「おーい! これ聞こえてるのー?」


「聞こえてるぞー。誰だー」


 返事がない……。

 そうか、マイの端末からだから、俺が喋っても分からないのか。マイの所にいかねば。

 しかし、今日マイは騎士団へ行っている。


「これ、姫にしか聞こえてなくない? 最上氏は?」

「そうだよ。パソコン部だよ。日本の姫に頼まれてね」


 マイと会話してるのか?


「それはいくらアンダー姫でもまだ言えないよ。早くアンダー最上氏と合流してねー」


 てか、マイはパソ部に姫って呼ばれてるのか……。

 アバター全体放送を聞いていたのだろう。程なくして、まずハルとトモエが駆けつけた。


「カズくーん。なんか、パソコン部の人から通信が来てー」


 騎士団から、慌てて帰ってきたのだろうマイは息を切らしていた。


「うん。みんなにパソ部の声は聞こえてたよ」


「さて、皆さんお集まりですね? リアル姫からの司令を実行しちゃいますね」


 マイが帰って来たタイミングでアバター全員に声が流れた。


「まずは、アバター姫をどこか安全な場所に寝かせて下さい。とりあえず、アバターの皆さんはそこについて行って下さい。おそらくこれが最後のリアル日本との会話になりますから」


 俺達はそれに従いマイの部屋へみんなで向かった。マイをベッドへ寝かせ、


「パソ部、これでいいか?」


「はい。では姫からの司令一つ目起動します」


 その直後、アバターマイの意識が無くなった。


「パソ部!! 何をした!?」


「リアル姫からの司令通りです。最上氏達はこれから、我らパソコン部と美術部で創り上げた妹の居ない産まれない街でアバター姫の意識を取り戻す為の薬を手に入れて来てもらいます。もちろんそれでないと聖女であろうがアバター姫の意識を取り戻す事が出来ません」


「……なぜこんな事を?」


「リアル姫からの司令ですので。姫は自分がアニメに出ない事を考え、自らアバター姫の意識を断つように命令したのですよ。最上氏」


「妹が居ない街ってのは?」


「そのままの意味ですよ。妹は存在しているだけで、犯罪者です。そうリアル姫が決めた法律です。なので、これはただの忠告ですが、トモエさん、中村氏、グエナさんは注意して下さいね。姫の街では入るだけで犯罪者です。そう設定してあります」


「なぜパソ部はリアルマイの言う事を聞いているんだ?」


「卒業アルバムですよ。やってくれたらパソコン部に仮入部して、一緒に写真に写ってくれると約束しました」


 それでいいのか? パソコン部……。


「では、二つ目の司令を実行します。ポチっとな」


 そう言うと、専用の指輪がアバター全員から外れた。


「称号を確認してみると良いですよ。アバターの皆さん」


 確認してみると、称号、【堕勇者】、に変わっていた。

 他の二人にも、堕の文字が付け加えられていて、専用の指輪が装備出来なくなってきた。

 闇に堕ちたのは、リアルマイでは……?


「では、最後の司令も、ポチっとな。コレで今まで果てとされて来た場所が繋がった。健闘を祈るよ、諸君」


 通信は途絶えた……。






 


 

 

 

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