第55話 リアル問題
「誰か、リアル日本から、声届いた人いるー?」
「みんな届いて無いみたいですね、お兄様」
「カズキさーん、指名依頼の浴衣の注文が止まらないです。手伝って下さーい」
「うん。今行くー」
それから、約一ヶ月後。
「アバターのみんな聞こえるかー? 時間が無いから簡単に説明するよ。マイコが壊れた」
「えっ!? 何? 私?」
「いや、リアルマイコだ。お前達がダサロボ倒す前にいた場所の奥見てくれ、私にも分からないけど、何かやったるんだ」
「ハル、温泉回ごめんなー。使えないだろ?」
「今はそんな事はいいから、本当に時間が無いんだ。もうすぐリアルマイコが戻って来ちゃうから、とにかく、あそこの先を見てみろ! このログも消さないとだからもう切るよ。ログ消したのはすぐにはバレないと思うけど、また隙を見つけて連絡する」
そう言うと、リアル日本と連絡が途絶えてしまった。
「グミエ、今日みんなは?」
「ハルカとグエナで、温泉に浴衣届けに行ってる。マイコは騎士団の装備がどうとかで、騎士団だな。どうかしたのか?」
「今、俺達、日本人全員にリアルハルから連絡あってさ、よく分からなくて通信切れちゃったんだよね。マイは反応してたから、聴いてたと思うけど」
「お兄様? おはようございます。どうかしましたか?」
「トモエ、よく頭の声で起きないな……。今、リアルハルから」
「カズくん、私がどう言う事?」
「あ、マイ、帰ってきたのか。その反応だとマイは何も知らないんだな?」
「うん。リアルの私が壊れたって言われても……」
「えと、果ての先だったね。とりあえず、透視、ズーム――何あれ……?」
「マイ、ちと一緒に行こうか? トモエとグミエは妹ショップお願い」
「お兄様、私も行きます」
「トモエは、いい子だからお留守してて、お仕事溜まってるでしょ?」
「ぶーぶー」
前に居座っていた果てに着いたが、海が繋がっている。そこにハルが合流した。
「カズ、マイ」
「ハル、ここに来たって事は通信聴いていたんだな?」
「うん。マイコ、お前何した?」
「本当に、私は何も知らないの」
「この先に、進め無いんだ。世界が繋がっている様で繋がっていない」
「カズ、何言ってんだ?」
「ハル、進んでみて。見えない壁がある。魔法撃っても殴っても意味がないんだ」
ハルは、魔法を放ち、パンチもした。
「どうなってんだよ?」
「そうなんだよ。全く手応えがない。なんて言うか繋がってないって感じだろ? でも、ズームで見るとこのずっと先に街がある。ここの王都とは全く異なる文明で発展したような街」
「うん。ハルちゃんズーム使えないんだよね?」
「どんな何だ? 私にも見せろよー」
「とりあえず、みんなの所に戻ろう。リアルハルからの連絡を待つしか無い」
妹ショップへ、戻った。
「ただいまー」
「おかえり、どうだった?」
「それがさあ……」
「えっ? 何? 私だけにしか聴こえてないの?」
「どうした? マイ?」
「カズくん、聴こえてないの? ちょっと待って今、リアルトモちゃんから通信で、みんなに聴こえるように出来ないって」
「じゃあ、マイが聴いて」
「リアルトモちゃんなんでしょ?」
しばらく、マイがリアルトモの通信を聴いている。
「わかった。けど、それを私がみんなに伝えるの? えーっ、やだよー、トモちゃーん」
マイは、黙ってしまった。
「マイコ、リアルトモは、何だって?」
「えーっ、恥ずかしい。言いたくない」
「マイ、イイ子だから、話して」
「もー、やだ」
「マイコ先輩、リアルな私は何て言ってたんですか? まさか、お兄様と結婚したとかですか?」
「全然違うよー」
「早く言え。クソ勇者」
「あー、それもう言わない約束したのに、酷いよグミちゃん」
「マイコさん、みんな待ってますよ」
「もー、わかったよー。……えとね、リアル私が、リアルカズくんに、振られて、部室のパソコン壊しちゃったんだって。それでね、親機がリアル私の携帯になって、えーと……」
「みんな聴こえるかー?」
「お、リアルハルだな。通信出来るのか? アンダーマイがぐだぐだして、よくわからないんだけど、説明して」
「カズくん、ぐだぐたって酷いよー。ガンバって説明したのにー」
「今は、リアルトモが、リアルマイコを引きつけてるというか、陸上部に行かせた。だから、しばらくは大丈夫だと思う。でも、ずっと時間ある訳じゃないから、アバターカズ、邪魔が入らない様にアバターマイコを黙らせといてくれ」
「わかった」
俺はマイを抱きしめて慰めた。
「あー、お兄様のギューは、私の物です。ダメですよー」
トモも後ろから抱きついてきた。
「アバターカズなんだか凄いな。そっちの世界ではかなりのイケメンムーブじゃないか? アバター私もガンバれよ。ほらカズに抱きつけー」
ハルも抱きついてきた。
何だコレ……?
「よし、アバターカズ、勘違いするなよ。リアル私はお前の事は好きじゃないからな」
「まだ、それ言ってるのか? 素直になれよ。リアルハル。てか、時間ないんじゃないの?」
「あ、そうだった。どこまで聞いた?」
「リアルマイが部室のパソコン壊したまでかな?」
「全然じゃないか。初めから説明するぞ。まず文化祭で優しい世界がアニメ化する事が広まって、マイコの親御さんもアプリを見てマイコの気持ちを知ってしまったんだよ。それで、家族ぐるみの付き合いがある。カズとマイコの両親が結託して、二人をくっつけようと冬休みに両家族で旅行に行ったんだよ。そこで、周りに全部バレてる事を認めたマイコはカズに告ったんだ」
「マイと俺はマジで幼馴染みだったんだな? 家族ぐるみの付き合いがあったとは……」
「話し続けるぞー。そこで、カズはマイコを振ったんだ。その理由が、マイの事は好きだけど、妹としか見れないだそうだ。ちなみに、誕生日はマイコのが早いぞ」
「なんという妹愛だ。俺は」
「その告った所を、お前らの両親が全部覗いてたそうだ。お前らの親はなんて言うか、お茶目だな。カズの親なんて今から妹作るかとか、言ってたそうだ」
「俺の親が、すいません」
「それを聞いて、流石に私もマイコに同情したよ。今まで全力で隠してきて、本気で告ったら、両親に見られてとんでもない理由で振られたんだからな。それで、壊れたんだ」
「マイ、リアル俺が、ごめんなさい」
俺はアンダーマイの頭をそっと撫でた。
「それで、全部バラしてしまった、優しい世界を恨んだんだろうな。部室のパソコンを粉々に壊した。修理不可能だ。それで、優しい世界は諦めたんだ」
「なるほど、で、何でさっきは、アバターマイにだけ通信が届いたんだ?」
「今もそうなんだが、この通信は、リアルマイコの携帯からしている。えーと、部室のパソコンから通信してた時は主人公全員かカズのみに通信が出来たんだ。と言うか、通信自体が親機からしか出来ないんだ。このアプリの注意書にもあってな、中の人と接触したり、直接関わる設定変更すると、世界が壊れる的な事が書いてあるんだよ」
「思いっきり接触してるけど……」
「だから、初めは返事もしなかったし、少しだけにしたたんだ。今はもう全部バレてるだろ? だから開き直った。そもそも、このアプリの記憶が消えるのは、私の初期設定じゃない。アプリ自体の初期設定なんだよ」
「お兄様、私がこちらに来た時、全てを知っていたのはアプリの初期設定を変えたからなのです。そこをハルカ先輩に見つかって揉めたんです」
「なるほど」
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